障害者、パーソナルトレーナーになる|連載第9回

C magazine for the PT OT ST

障害者、パーソナルトレーナーになる|連載第9回

連載:麻痺と一緒に
Jun 14, 2024

2024年 春

私は、14年勤めた会社を退職し、

パーソナルトレーナーとして活動をはじめた。

 

「無理かも」

 

2014年から

麻痺を自覚しだし、

一歩踏み出せば、足は震え、

どう着地してよいか頭の中は毎回不安。

プチパニック。

 

でも歩かないといけない、

いちいち止まっていられない。

だれも急かしてなんかいなかったが、

隣の人に遅れないように、

時間に遅れないように歩かないと。

だから、当てずっぽうに、

「えいっ」と一歩を踏み出すことの連続(左足)。

自分のことで精一杯だった。

 

自分の身に障害が起こっているのだけど(目の当たりにしている)、

どこか他人事(見て見ぬふり)だったように思う。

 

職場では、人になるべく関わらないような部署に異動させてもらった。

 

とてもじゃないが、

人に関わる運動の仕事は難しいのかなと感じていた。

 

・困っていること

・改善したいこと

・自分でできるリハビリ

 

自分のことで精一杯

・躓かないこと

・左膝をぶつけないこと

・麻痺であることを人に悟られないこと など

 

見て見ぬふりを続けていたのだけど、

麻痺のために出来ることは何だろうと考えたときに、

「歩くこと」

が頭にまず浮かんだ。

 

私は歩くことに特に困っていた。

まずは出来ることからやってみよう。

 

一人でやれるから、

誰にペースを合わせることなく、

自分のペースで行う。

 

なるべく人に合わせないように、

自分のペースでゆっくり歩くことをリハビリにした。

 

最寄駅から職場まで約10分歩くところを、

倍の20分かけて歩く。

 

人に合わせず、とにかく、

左足になるべく硬直が起きないように

ゆっくりゆっくり歩くこと。

 

いつでもどこでも出来るわけではなかったが、

いつでもどこでもやれる環境さえ見つけられたら、

どこでも行った。

 

「できるかもしれない」

 

こういった自分でもできること、

小さなことでも出来ることを

日々コツコツ増やしていった。

 

小さな小さな成功体験の積み重ね。

 

躓くことが減った。

小走りができるようになった。

またサンダルが履きたいと思うようになった。

隣の友人に、もう少しゆっくり歩いてと、

お願いできるようになった。

 

一時は、出来ないことばかりに目を向けては、

自己嫌悪に陥っていたが、

出来ることに目を向け挑戦を続けていると

出来るようになっていく自信に溢れてくる。

 

これも出来るかもしれない。

やってみよう。

どうしたらできるかな。

 

出来ないことにぶつかっては、日々模索の連続。

挑戦することは楽しい。

 

「視界がひらく」

 

日々挑戦をしていると、視界がどんどんひらけてくる。

自分にばかり向けていた目が

外にも向けられるようになってきた。

 

道路で、

あれ?この人、右足を引きずって歩いてる?

こちらの人は、どすどす音を立てて階段のぼってる。

膝痛めるだろうに。

あっちの人は、ややぶんまわし歩行していないか?

でもみんな忙しいから、今はそれどころじゃない。

日々でいっぱいいっぱいのように見える。

 

自分の困っていたことが、

世の中人にもたくさん当てはまりそう。

これは、麻痺した当時の、

歩くことに精一杯だった自分と同じではないか?

 

「出来ることがあるんじゃないか」

 

人と関わることを避けてきたが、

部署の編成で、また運動に徐々に携わるようになった。

 

今度は、高齢者の運動サポート。

みなさん口にはしないが、運動することに真剣。

 

きっとどこかを痛めて、

本気で動けなくなる恐怖を感じたのではないだろうか。

 

私も一緒です。と胸の内で激しく共感した。

 

サポートをさせていただいている中で、

徐々に人と関わること、

自身の麻痺をオープンにする機会が増えてきた。

 

自分の体を何とかしようと必死に向き合ってきたことが、

人と関わること、運動に携わることで、

少しずつだが麻痺が活かされている気がする。

 

あんなに人と関わることが怖かったのに。

動けることは幸せなことだ。

そんな時、人生ではじめて、ぎっくり背中になった。

 

ぎっくり腰かと思ったが、

調べてみると腰ではなく背中だとわかった。

 

寝返りが打てない恐怖、

何気ない動作ができないストレス、

小さな段差で何度も再発。

いい経験をさせてもらった。

 

その時に出会ったのが、

背中の治療をしてもらった「たきざわ接骨院」。

 

治療でお世話になっている中で、

障害があることなどいろいろと打ち明けさせてもらった。

 

あるとき、麻痺のことや日々目にする

運動障害がありそうな方々の話をしていたら、

今までの苦い思い出、経験してきたこと、

見てきたことなど、想いが溢れてしまった。

 

「出来ることがまだあるんじゃないかと思うんです」

 

そんなこんなで、

たきざわ接骨院の2Fで運動指導を任せてもらえることになった。

こちらの院、普段は院長先生が一人で1Fで治療をしているのだが、

お昼休みに体操教室を2Fで開催していた。

 

現在は、お昼休み時間以外にも受け付けている。

「障害者だから、障害者だから、麻痺があるから、

運動を提供する者になってはいけない」

というルールはないはずである。

 

麻痺で、運動障害で困っている人の力になりたいと思っています。

ご連絡をお待ちしております。

 


 

たきざわ接骨院2F

パーソナル体操スタジオ

 

〒168-0062

東京都杉並区方南2-4-26

川畑 亮輔

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↑アットを@に置き換えてください

PROFILE
川畑亮輔

川畑亮輔

1988年生まれ。会社員。左半身麻痺者。
2005年、部活中の脳震盪から脳内に嚢胞が見つかる。2010年にスポーツトレーナーの専門学校卒業後、2014年あたりから麻痺症状を自覚。診断名がつかず、現在も経過観察中。より良い生活が送れるよう、日々模索している。
「歩くこと」が生涯テーマ。趣味は下駄散歩。
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