前回のコラムで、PTとしての勉強を頑張れないという苦しみから抜け出せた要因は、行動変容が起こり頑張れたこと、ではなく、分かったことで気持ちが軽くなったことであるとお伝えしました。
当時の私は勉強を頑張れないという実際の行動の部分ではなく、どうやらなぜ自分は頑張れないのか、そもそも自分はどうしたいのか、がわからないことに苦しさを感じていたのだと、コーチングを受けた後で気付かされました。
AとBの状況をそれぞれ想像してみてください。
A:“来年あなたは何かに襲われます”
めちゃくちゃ怖くないですか?
分からないもの=得体の知れないもの、であり、多くの人は得体の知れないものに対して過剰とも言える恐怖心を抱きます。さらに、その正体がわからなければ備えることすらできません。
(あるとすれば、来年は四六時中周囲を気にして怯えるくらいでしょうか・・)
B:“来年あなたは猛暑に襲われます”
これだったらどうってことはないですよね?猛暑がどんなものでいつ頃やって来るのかもおおよそ分かっていますし、備えとしてやるべきこともすぐにいくつか思いつくはずです。
分かっているだけで、随分気持ちが楽になるものです。
分からなくて苦しんだ私は、自分を苦しめている相手の正体がわかっていなかったのです。そして、その正体が分かっただけでその苦しみから解放されたのです。
分かることって本当に大切なんですね。
私が初めてコーチングの体験セッションを受けて
●なぜ頑張れないのか?
●そもそも自分はこの先どうしたいのか?
が、わからない苦しみをコーチに全て打ち明けた後の会話の一部です。以下、ご覧ください。
コーチ:「自分自身が将来どうしたいのかわからないんだね・・それは辛いですよね?」
私:「はい、相当きついです・・」
コーチ:「どれだけ自分で必死に考えてもそれがわからないの?」
私:「はい・・」
コーチ:「そうなんだぁ・・それは苦しいよねぇ・・突然話を変えちゃって申し訳ないんだけどさ、気分転換に1つ質問!今月の嬉しかった出来事、5つ教えて。超些細なことで全然OKだから!」
私:「・・・・・(1分ほど考え込む)、いや、特にないですね・・」
コーチ:「無い訳ないじゃない!無いんじゃなくて、高瀬さんは日々の自分の気持ちを何も感じてないだけだよ。日々の小さな出来事に対する自分の気持ちを感じることができてない人がさぁ、将来どうしたいかという大きなことに対する自分の気持ちなんてわかる訳なくない?日々の小さな気持ちへの気づきの積み重ねが、将来に向けた大きな気持ちに繋がるんだよ」
ごもっとも!
“日々の自分の感情や想いにフォーカスする”という概念自体が私にはありませんでしたし、その必要性について全く理解できていませんでしたが、世の中の多くの人が将来の夢を持つまでの思考過程を考えてみると、容易にその必要性が理解できます。
(例)
図工の時間が好き(ものを作るのは楽しいな)
➡自分の作品をみて皆が笑顔になる
嬉しいなぁ(もっといい作品を作って多くの人を笑顔もしたいな)
➡もの作りの仕事をしたい!そして世界中の人を笑顔にしたい!
このように、小さな気持ちの積み重ねを通じて多くの人が将来の大きな夢を持つことになります。
“将来自分がやりたいこと”が降って湧いてくるのをただ待っていただけの私には、到底解決できる問題ではなかったわけです。
それでも、
●今の自分には“分かるはずがない”ということが“分かった”
●日々の小さな気持ちを感じ続ければいつか自分も“分かる”かもしれない、と思えた
たったこれだけで随分気持ちが楽になったことをはっきりと覚えています。
真面目な人ほどそう悩むのかもしれません。真面目な人ほど“セラピストである以上こんな目標を持つべき”と考えがちです。
そんな固定概念は一度全て取っ払って
◎日々の業務の中でやりがいを感じる、わくわくするタイミングは?
◎リハビリをしていて嬉しいときってどんな時?
◎生き生きしている自分ってどんな自分?
純粋に自分の感情に目を向けてみてください。何か見えてくるかもしれませんよ。
最後に、皆さんが安心して固定概念を取っ払えるように・・最もセラピストらしくない、私のその当時の想いをご紹介します。
「徒手療法を中心としたリハビリテーションを提供している時の自分、は好きではない。」
「患者様の愚痴を聞いている瞬間、ご家族様に患者様の状態をわかりやすくご説明しようと試行錯誤している瞬間、こんな時が最も生き生きしていて自分らしい。」
PTなのにおかしいですよね?
でもそれでいいんです。それが自分の正直な気持ちなんですから・・
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