LGBTQ+ 医療現場での対応を考える

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LGBTQ+ 医療現場での対応を考える

連載:編集部インタビュー
Sep 13, 2024

ゲスト:中西 純(なかにし じゅん)さん

理学療法士。都内の総合病院に勤務後、現在はウィル訪問看護ステーション江戸川に勤務。 筑波大学の大学院の修士課程で理学療法士のLGBTQ+の 意識調査というテーマで調査研究をしている。

 

(以下、インタビューの抜粋です。Youtubeはこちら

 

Cマガジン編集長 重國(以下重國)

2024年の10月27日の日曜日、に開催予定の、 東京都理学療法士協会の主催でセミナーを開催します。タイトルは「臨床・教育現場におけるLGBTQ+の基礎知識に関する研修」。この研修会の責任者の中西さんとLGBTQ+に対する医療現場での対応を考えていきたいと思います。

簡単に研修会の概要を教えて下さい。

 

中西さん)
2024年の10月27日の日曜日、午後1時から4時半まで行われる研修会です。
LGBTQ+に関する基礎知識、SOGIつまり、セクシャルオリエンテーション(性的指向)とジェンダーアイデンティティ(性自認)に関する基礎知識からお伝えしていきます。
さらに、医療場面ですとかリハビリテーション場面にLGBTQ+の方に対する接し方の実践的なこと、また、マジョリティ特権に関することなどを知ってもらう研修会です。

 

LGBTQ+の方は医療機関にかかりにくい

 重國)

まずLGBTQ+の方が医療現場において実際にどのような困り事があるのでしょうか?

 

中西さん)
例えば、性的指向のマイノリティの方ですと、 患者さんのキーパーソンが同性であることをカミングアウトしなければならない場面があったり、さらに実際に同性のパートナーの方に対して、キーパーソンとして扱ってほしいのに扱ってもらえないような医療場面があったりします。 看取りの時に立ち会いができないこともあります。

 

トランスジェンダー、つまり性自認と出生時の性別が異なるという方に関しては、ホルモン治療をしている方ですと、 医療場面でどのようにそれを伝えて良いのかわからないことや、見た目の性別と保険証の性別が異なることによって、 受付で本当にあなた本人ですか?と確認されてしまって、なかなか医療にかかりづらい。そういった問題が考えられます。

医療機関にかかりづらい事実があることを医療者は知っていくことが重要だと思います。

 

日本人の左利きと同じ割合くらいいるLGBTQ+

重國)

医療従事者の中にはLGBTQ+の方々に 遭遇したことないという実感をお持ちの方も多いのかなと思うのですが、今の日本にはLGBTQ+の方はどのくらいいるのでしょうか?

 

中西さん)

調査によっても異なりますが、3~8%というデータもあれば、 最近、電通が実施した調査では9.7%いるという結果も出ています。
約10%というのは、日本の左利きの人と同じくらい、血液型ですとAB型の人と同じぐらいの割合がいるということになります。

重國)

今まで生きてきて、左利きの人やAB型の人と出会ったことのない人はいないと思いますので、自分が認識はしていないけども、LGBTQ+の方に必ず携わっていることになりますね。

しかし、なぜ出会ったことがないという実感になるのでしょう?

 

中西さん)
やっぱりその存在が見えづらいっていうことが1番大きいと思います。社会的に認知されていない、不可視化されているという現状。性的指向と性自認のマイノリティの人、LGBTQ+の方が無視されているような社会構造や日常生活があるのかなと思っています。

例えば、男性に対してだったら

「彼女いるの?」みたいな言葉をかける場面がありますが、それは、

異性愛が前提となるような 言葉で、同性愛の人が不可視化されているわけです。

さらにトランスジェンダーの人に対するバッシングがSNSで広がることや、ヘイトが散見されることも、 LGBTQ+の人々がなかなか世の中で 見えづらくなっているような原因なのかなって思います。

 

書籍紹介『LGBTQ+医療現場での実践 Q&A』

重國)

LGBTQ+医療現場での実践 Q& A』という書籍が今年の6月に発売されております。医療現場に着目した画期的な本だと思って、私も読ませて頂いております。

中西さんも執筆されていますので、簡単な紹介をお願いします。

 

中西さん)

はい。今まで医療、医療職向けのLGBTQ+の本ってないかと思います。Q&Aで具体的な事例への対応が書かれています。

例えば、そのトランスジェンダーの方が入院する際、病室はどう決めたらいいですか。という質問や健康診断の際にどのような配慮ができるでしょうか。など、様々な病院とか 医療場面、医療福祉場面で想定されるような質問に対して医療の専門家や当事者の方がそれぞれの立場、 経験から答えている本です。

 

リハビリスタッフとして配慮する点は?

重國)

私たちも理学療法士ですので理学療法士、 作業療法士、言語聴覚士がどの辺りに配慮した方が良いのでしょうか。もちろん研修会でも詳しく説明はするとは思いますが、簡単に使えるすぐ使えるような知識があれば、紹介して頂きたいです。

中西さん)

まず、問診する際に、例えば患者が男性だからと言って、パートナー、キーパーソン が女性であると決めつけた聞き方は避けて頂きたいと思います。また、女性だから家事をする必要があるというような、先入観を持たないことも大切です。

 

普段の診療ですとかリハビリの中で常に性的マイノリティの方がいるっていうことを 意識して頂きたいです。

家族構成などを伺う際は、「ご結婚されていますか?」ではなく「パートナーさんはいらっしゃいますか。」と聞く、

介護者の有無を聞きたいのであれば、「旦那様はいますか?」「奥様はいますか?」

ではなく、「退院した後に日中介護してくれる方はいらっしゃいますか。」とか「身の回りのお世話をしてくれる方はいらっしゃいますか。」というような表現を使うのが適切です。

 

重國)

実際の治療場面では身体に触れたりすることも多い仕事ですが、その際に気を付けることなどはありますか?

 

中西さん)

理学療法士の中、多くの方は体に触れることに対して結構気を付けてらっしゃる方が多いと思いますが、

特にLGBTQ+の方の中には、体に触れられること、見られることに対して嫌悪感を抱いている方とか、抵抗感を持ってらっしゃる方がいると思います。

特にトランスジェンダーの方はそれが強いと思います。

自分と同性の患者だと思っても身体を見ること対しても配慮すること、 触ることに対しても、 すぐに触れるわけではなくって、どういった意図でその部分に触れるかを事前に説明することが必要です。

 

 

マジョリティ特権

重國)

マイノリティ、少数派の問題を考える際、一方で、 マジョリティのことについてもちょっと考えようというところも、今回の主催する、実施するセミナーの1つの内容となっています。

マジョリティ特権という言葉がありますが、簡単にどのようなことを指すのでしょうか?

 

中西さん)
前提として誰しもが、マイノリティの要素とマジョリティの要素があります。

性的マイノリティ対して例えば、シスジェンダー男性(生まれ持った性別と自認する性別が一致している男性)が性的マジョリティです。

多くの性的マジョリティの方々は、性的マイノリティの方が、日常生活の中で直面しているような、社会の中での困難さに気づくことなく過ごすことができている。これがマジョリティの持っている特権なのかなという風に思います。

 

 

重國)
これは透明な自動ドアというような例えもされますが、マジョリティの人たちはその自動ドアが意識せずに開いていく。(例えば、病院の受付で見た目の性別と保険証の性別が異なるような心配がない。)
だけど、マイノリティの方は、毎回毎回、透明な自動ドアがしまっていて、その先に進むのが困難になったりするわけですね。

 

中西さん)

今回のセミナーは性的マイノリティの方を考えるにあたって、全然そういったところにストレスを感じて生きてこなかったマジョリティ側の人も、少し自分の特権性に気づいてもらったり、どういうふうにマイノリティの方と一緒にその問題を考えることができるか、自分がどういうふうな職場とかで立ち振る舞いをすべきかみたいなところも紹介していきます。

 

 

カミングアウトされた場合の対応は?

 

重國)

信頼関係が結ばれて、この人は配慮してくれる人だなと思ってもらえたとしたら、

患者や身近な人からカミングアウトされる場合もあるかと思います。そのよう時の対応方法を教えて下さい。

 

中西さん)

例えば、医療現場だとすると、それは医療情報として必要なのかも知れません。しかし、その場合には、「カルテに書いてもいいですか?」ということを本人に許可を取る必要があるかなと思います。

本人の許可を得ずに勝手にその情報を他職種ですとか同じ部署の人に対して話をしてしまうことは、アウティングとなります。それだけはやめて頂きたいです。

 

どうしても情報共有が必要な場合には、 対象者にその理由を丁寧に説明する説明をする必要があります。それでも「情報共有をするのをやめて欲しい。」と言われた際には、 「私からは情報共有はしないですが、可能な限りご自身で お話をしてみて下さい。」と伝えると良いと思います。

重國)
ありがとうございます。非常に実践的な情報だと思いました。我々は診療中に知り得た情報をカルテに書くというのが日常的になっています。どこまでそれを共有するかなど、しっかり許可を得るというところがまず第1歩なのですね。

中西さん)
そうですね。その性的指向と性自認に関する情報というのは、とても機微な情報で、 個人情報の中でも特に配慮するべき情報である。ということを認識することが大切だと思います。

重國)

中西さん、ありがとうございました。
10月27日、日曜日に開催予定の東京都理学療法士協会主催のセミナー、「 理学療法士の臨床教育現場におけるLGBTQ+基礎知識に関する研修会」では、当事者の方にもお話を頂きます。ストレスを感じた実際のエピソードなどから、LGBTQ+への医療現場での対応を一緒に考え、伝えていきたいと思います。

 

 

【理学療法士の臨床・教育現場におけるLGBTQ+基礎知識に関する研修会」】

日時:2024年10月27日(日) 13時〜16時30分

場所:日本リハビリテーション専門学校 タイムプラザイセ2F@高田馬場

公社)東京都理学療法士協会 主催

セミナー番号:129107

▼詳細はこちら 

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PROFILE
重國宏次

重國宏次

1980年生まれ。理学療法士。早稲田大学スポーツ科学研究科 スポーツ科学修士課程 修了。東京保健医療専門職大学 専任教員。十条かねたか整形外科で非常勤勤務。2021年外出や旅行を楽しむための身体づくりをサポートするトレーニング・コンディショニング事業「グッドレッグ」を起業。臨床・教育・研究・個人事業に携わりながらセラピストの新たな可能性を模索している。webマガジン「C」編集長。

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