理学療法士であり大学教員でもある私が、なぜ今、起業したのか

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理学療法士であり大学教員でもある私が起業した理由|連載第1回

連載:理学療法士と起業
Feb 1, 2022

私は理学療法士の国家資格を取得して17年目。現在は大学教員をしながら、非常勤で臨床現場にも出でいます。

一見すると、安定しているように思われそうですが、それがなぜ今、起業だったのか?私自身もこのコラムを書きながら自己理解を深めていきたいと思います。

 

理学療法士であり大学教員でもある私が今起業した理由

 

これを読んで頂いている皆様と同様、私も2019年度後半から2020年度全般そして現在も、とにかく新型コロナウイルス感染症の対応に追われていました。

医療や介護の業界は、感染者の対応や感染予防対策に日々追われ、通常の業務ができないばかりか、通院している外来患者や新規の利用者が減少することで経営も揺らいでいます。

リハビリテーション業務は通常、1日に複数の患者や利用者を担当しますので、私たちスタッフが感染の媒介者になる危険性もあり、感染予防の観点で業務を停止した病院、施設もありました。

全国に展開している大きなグループにおいては経営状況が悪化している病院や施設のマイナス分をある程度は吸収できますが、給料の減額やボーナスを全額カットせざるを得ない病院や施設も相次ぎました。

 



私たちは、診療報酬、介護報酬から給与が発生する職種である為、一般的には安定した職業と思われています。

しかし、所属の病院、施設の経営状況に家計が左右されるという意味では一般的な会社員と変わりません。

私自身、勤務先の病院が経営破綻し、別のグループに業務が引き継がれるという経験をしています。

 



一方、私立大学も厳しい状況です。遠隔授業に使用する機器や設備へのコストが増大。対応する教職員の業務負担は膨大になったと言われています。

日本私大学協会のコロナ禍における調査によれば、在籍する学生の家計状況が悪化していると答えた大学が66.0%を占めており、コロナ禍の不況により学費が家計を圧迫しているのは間違いありません。

さらに同調査によれば、通常のオープンキャンパスや進学相談会の開催も難しく、受験者数、入学者数に関しても厳しい現状であることが示されていました。

そもそも、私立大学は、日本の18歳人口が2018年頃から減り始めることで定員割れが激増する「2018年問題」の対応だけでも四苦八苦している状況でした。

 

そこにとどめを刺さんばかりの衝撃なのです。

 

 

このように新型コロナウイルスが及ぼしたのは健康被害とその不安だけではありません。

世界中で感染予防対策の為に飲食店やエンタメ業界をはじめ、あらゆる職種において営業規制や自粛を強いられ、経済的困窮が広がっておりそれは現在も継続しています。

現状の生活が決して安泰ではなく、不測の事態に耐えうる余白がないことに気づかされ、私たち「ヒト」も地球上のあらゆる生物と等しく自然界において淘汰されうる存在だということを再認識させられました。

このような状況下で、今まで当たり前だと思ってたことをあらためて見つめ直す機会となった方も多いのではないでしょうか。

理学療法士の国家資格を取得して17年目。非常勤で現場に出ながら大学の教員をしている私がなぜ今、起業したのか?

その大きな理由の一つは、間違いなく新型コロナウイルスの感染拡大の影響がありました。

 

国家資格である理学療法士の経験が生かせる兼業としての起業

 

今回の新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けて、私自身は特に働き方について再考する機会となりました。



「理学療法士の国家資格を有していれば安心なのか?」

 

私は直感的に、既存の価値観に頼りきっていては、社会の移り変わりに対応しきれないかもしれないと思いました。

まだ自分は40代前半で引退まで先は長い。

今回のようなことが、今後も起きるかもしれないな、と思いました。

今までの経験だけでやり過ごせるほど、世の中は甘くない。

生き抜く為の知恵とたくましさを身につけたい。

考えているよりも、次の一歩をとにかく踏み出したい。

 

「よし、今やろう!」

 

そう思ったのが2020年の年末。そして年が明けてすぐに、友人のデザイナーに連絡を入れてさっそく新事業の構想を伝え、ブランディングの相談を始めました。

 



理学療法士になってからの自分を振り返ってみると、たくさんの貴重な経験をさせてもらっています。

一見関係のないさまざまなエピソードが新型コロナウイルスに対峙する中でぼんやりと一つにまとまり、自然と次の一歩を明示してくれました。

その一歩が、「起業」

私の場合は起業といっても、兼業として個人でできる範囲で「国家資格である理学療法士の経験をいかしたサービス」を開始したというものです。

私は手続きやお金の管理が苦手ですが、今回は思い立ってから行動に移すまでがとにかく早かったように思います。

 

一般的に「起業する人」のイメージは、組織で働くことを窮屈に感じ、自分の意思を貫き通す強さを持っているような人ではないでしょうか。

 

私はむしろ組織で働くことは好きだし、何かを任された時は、とにかく関係各所に相談して衝突を極力避けながら穏便に事を進めるタイプ、と思っているので、実は今回の起業に自分でも少々驚いています。


次回のコラムでは、私が「起業」に行き着いた一つのエピソードとして、過去に経験した「勤務先の病院の経営破綻による閉院」について書き記したいと思います。

 

参考文献:コロナ禍の私立大学

PROFILE
重國宏次

重國宏次

1980年生まれ。理学療法士。早稲田大学スポーツ科学研究科 スポーツ科学修士課程 修了。東京保健医療専門職大学 専任教員。十条かねたか整形外科で非常勤勤務。2021年外出や旅行を楽しむための身体づくりをサポートするトレーニング・コンディショニング事業「グッドレッグ」を起業。臨床・教育・研究・個人事業に携わりながらセラピストの新たな可能性を模索している。webマガジン「C」編集長。

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