ホイスコーレ12月の生活編

C magazine for the PT OT ST

ホイスコーレ12月の生活編〜23年目PTの海外留学物語Vol.5

連載:23年目PTの海外留学物語
Feb 1, 2024

12月の生活

12月になるとダイニングテーブルにはクリスマスモチーフのライトが置かれ、みんなの衣服もなんとなくクリスマス柄になり、何人かのキッチンスタッフやお友達は頭のてっぺんが長い赤いニット帽を被っていたりウキウキした雰囲気となりました。

結構リアルな等身大のサンタさん人形が外のベンチに座っていたり、すてきなプレゼントを擁したアドヴェントカレンダーやら(私もデンマーク語クラスで作りました!マッサージチケット!)、ゲームデザインクラスのお友達が人狼ゲームみたいなやつを企画してくれました。こんなふんわりした一体感が嬉しかったです。

 

ホイスコーレでユールフロコスト

第1金曜日はホイスコーレでユールフロコスト(ユール=クリスマス、フロコスト=ランチパーティ)がありました。午前中はみんなでパーティの準備という贅沢な時間。

マジパンのデザートやグロッグ(フルーツやスパイスで煮込んだホットワイン)を作るお料理チーム、編み物などでクリスマスツリーのデコレーションを作るチーム、ネイチャー&カヤッククラスのお友達が事前に収穫した切り株や苔や木の実を使ってキャンドルホルダーを作るチームなどがあり、それらに自由に参加しました。

校長のババックも引っ張り込まれて、一緒に編み物をしていました。お喋りしながら手間をかけて丁寧に作るとか、手作りの温かみを感じました。これもHyggeですね。

パーティではみんなで歌ったり、ゆっくり時間をかけてクリスマスのご馳走を頂き、至福でした。デンマークのクリスマスパーティではシュナップスというアルコール度数がかなり高いお酒を飲むのが定番だそうです。それも、在りまして。頂きまして。ハーブの香りが効いていて個人的には好きなお酒でした。

お友達は『うぇ〜』とか言っていましたが(よくマズいと言われるリコリスみたいな味です。私は食べられますが…)。機会あらば是非お試しあれ。

 

ホイスコーレ最後の授業

印象的なことは授業でもそれ以外でも本当にたくさんあれど、Practical Sustainabilityの最後の授業でお点前させてもらったこともそのひとつでした。担当教師のマティアスに事前に相談したら時間を確保して頂けました。ありがたしです。

そして、陶芸の先生の了承を得て陶芸室やフリーショップ(先輩方が置いて行った古着や雑貨のある部屋。この部屋にあるものは自由に持っていって使って良い)にある抹茶茶碗をかき集め、いつかこんな日がくるんじゃないかと日本から持参した抹茶と茶筅をトートバッグに入れて簡易お点前セットの出来上がり、当日に臨みました。

『お道具を丁寧に扱い破損しても修繕して長く大切に使う精神、季節の草木や気候を楽しんで自然に感謝する精神、人への思いやりを大切にする精神など、茶道も実用的で持続可能性のあるものだと思う』という私見を説明して、クラスのみんなに出会えて一緒に学べた事に感謝している事を伝えました。

点前は緊張してひどいものではありましたが、みんなには喜んでもらえたようで。動いてみるものですね。Practical Sustainabilityのクラスでは過酷な作業もありましたが、農作業の実践、土壌環境、緑肥、地球環境に良くて持続可能なこと、心豊かになること等々多くの学びがあり、この学びは特に父とシェアしようと思いました。

 

ホイスコーレの卒業式

卒業式を翌週に控えたある日、ダイニングホールの壁一面に学生・先生・スタッフの名前が書かれた封筒がびっしり貼り付けられました。それは個人に宛ててメッセージを書き入れてもいいよ、というものでした。

その封筒にアドレスを貼り付けているお友達もいました。書きたかったので、私は日本語・英語・デンマーク語でみんなにラブレターを書きました(外国語は翻訳アプリを使って!)。数日かかりましたが、執筆中はホイスコーレ生活で最も長く起きていた期間でした。久しぶりにペン胼胝ができました。

メッセージを書いていてつくづく思ったのは、特に先生方や外国人のお友達の『価値観』に出会えていなかったかもしれないなぁ、という事でした。

こちらの一方的な思い込みはあれど、彼らの事を何も知らなかったなぁぁぁ。挨拶しかしていなかったなぁ。自分はどんな印象を持たれていたんだろうなぁ、など。

こちらから拙い英語で話しかける事や相手が言った言葉を理解できない事が相手に申し訳ないな申し訳ないなと思っているうちに、その場には居るけれど積極的に英語を喋らない生活にシフトしていっていたようです。

自分で言うのもおかしいけれど、もどかしさや不甲斐なさはあれど自分を守るためにはそれが最適解だったし、それを選んだ自分を肯定している自分にもそこで出会ったのです。ふんばれた、そんな私も居たんだね。

じゃあこれからどうする、自分を傷つけずに前向きにできることはあるか?前向き?前向きってなんだ?…またここから禅問答のような思案が広がっていくのでした。

泣いても笑っても刻々と時間は過ぎていくのです。

『車で高速道路を走っていて、一般道に戻るような感覚』と喩えられたりしますが、留学から帰国するとそのギャップに大変困惑すると聴きます。困惑を緩和するために近い未来を想像してみようとしても、ホイスコーレにいると日本の生活環境の感覚を再現できるはずもなく。

今はそんなことしなくていいから、ここに居られる時間をめいっぱい味わおうと、アクティビティ(筋トレ、焚き火、サウナ、物作り、ちょっとした外出等々)にはなるべく参加する事にしました。結果、やっぱり有意義でお得でした。

 

ホイスコーレ最後の夜

基本的に学生は全員12/19に寮を去ります。12/18は朝から各自、それはもうすっかり綺麗に自室をお掃除します。試験はないとはいえ、先生の厳しいチェックが入るからです。これまで安心安全に過ごさせてもらった感謝と次セメスターの学生が快適に使えるように、私も気合い入れてお掃除しました。

先生の厳しいチェックをパスしたら、この日は卒業式!それぞれがドレスアップして卒業式に臨みます。

アセンブリーホールで厳かに卒業証明書を受け取り、ダイニングホールで盛大にパーティです!みんなで歌を歌って、先生方やミュージッククラスのお友達のバンド演奏を聴いて、余興に参加して、ご馳走食べてビール飲んで。

キャンドルライトに照らされた大きなクリスマスツリーをみんなで輪になって囲んで、それぞれの国の言葉で一斉に『きよしこの夜』を歌いながら回る、を「まだやるの!」の笑いが出るまで繰り返し。

そして今度はモモヨさんを先頭にみんなでムカデ状になって屋外へ出て『カフェ』という娯楽ルームへ移動。爆音の中ノリノリで待ち構えていたのは本日のDJ、先生のヤコブとメス!今度は気分高揚クラブシーンへ突入です!先生やスタッフの方々渾身の、すてきな夜は更けて行くのでした。

 

 

翌朝はついにお別れの日。最後のアセンブリーは、みんなで輪になって一人一人順番にハグや握手、ハイタッチ、グータッチをしてお別れの挨拶をして退室していきます。会える人にはまた会えるかもしれませんが、やっぱり寂しいものですね。

 

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PROFILE
中島京子

中島京子

理学療法士。資格取得後23年間のうち急性期病院、回復期リハビリテーション病院、介護老人保健施設、診療所、訪問看護ステーションでの勤務を経験。『C』の仲間たちそれぞれの、世の中の生きづらさを低減するアクションを尊敬している。多くの人との出会いの中からデンマークに興味を持ち始め2023年デンマーク留学に挑戦。情報があり過ぎてまだふわふわしている状態。帰国後は児童発達支援教室の指導員と、ナイスなゲストハウスとのダブルワークをしている。ビール大好き。
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