ノーフュンスホイスコーレでの11月の暮らし

C magazine for the PT OT ST

ホイスコーレでの11月の暮らし〜23年目PTの海外留学物語Vol.4

連載:23年目PTの海外留学物語
Jan 14, 2024

前回のコラムでは、ホイスコーレの一大イベント「スタディトリップ」について紹介しました。

 

ホイスコーレの一大イベント「スタディトリップ」〜23年目PTの海外留学物語Vol.3

 

スタディトリップを終えると、ホイスコーレ生活も残りあと半分。折り返しです。

 

この頃から、週末を使って近隣国へ出掛けるお友達がちらほら現れ始めました。

 

異文化や新しい刺激を求めて活動的ですね。の反面、日照時間が日に日に短くなり、気分どんより、何となく気が滅入ってやる気が起きない、朝のアッセンブリー(みんなで集まって先生のお話を聴いたり歌を歌う)や授業に出て来れないお友達も増えていきました。

 

そんな学生達を横目に副校長のモモヨさんは『教科書通り』と笑顔。ビタミンD摂取を推奨していました。

 

モモヨさんは日本人で、SOSU担当の先生です。(日本人スタッフはもう1人、キッチン担当のヨウコさんがいらっしゃいました)

 

建物内はセントラルヒーティングシステムでどこでも温かく、至る所にあるソファはいつでも磁石のようにお友達を引っ付けていました。Hyggeですね。

 

私はお友達が灯した蝋燭の炎をみてうっとりとか、焚き火で琥珀色の炭をみてうっとりとか、そういうところにもHyggeを見出しました。

 

寮生活なので授業以外にお友達と過ごす時間はたくさんあります。勿論1人で過ごすのもありだし、何人かで過ごすのもありです。

 

『筋トレしよう』『話さない?』等呼びかけるお友達もいました。自分次第、個々を尊重する自由な環境がそこにはありました。

 

食事に来れていないお友達にはさりげなくコンタクトをとり食事を確保しておいたり、密やかなチームワークもありました。

 

 

 

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建物内外問わず対話が生まれやすい環境で、私も時々お友達と話して過ごしました。みんなの背中には『ハビトゥス』という見えないリュックサックがあって、それはそれぞれの経験で蓄積された価値観を背負っているという事をSOSUで学びました。SOSUの授業を受けているお友達はその前提で話しているのが、面白かったです。

 

→ 思っている事や感じている事を、他者の目を変に気にする事なく安心安全に言える。

 

→ そして周りは『ふーん、そうなんだね』と同意とか理解しなくてもいいから受け止める。

 

→ 違う意見を持っていたら、これまた他者の目を変に気にする事なく言える。

 

そんな雰囲気がホイスコーレにはあるように思いました。

 

私がこれまで持っていた『信頼』とか『平等』の概念の幅が、ぐーんと広がったような、別モノになったというか、そんな気付きもありました。自分自身に対して『何で?』と問いかけるベクトルも、ちょっと違うところを指すようになったような気がします。

 

日本語でこの調子なので、英語での対話は私にはもっと難しかったです。

 

正直な事を言うと、英語を聴いていると吐気を覚えることすらありました。ついていけないレベルの英語で盛り上がっている時などは、非常に疎外感がありました。

 

留学に備えて学んできた英語では全然ダメだ、実用的ではなかった、英語で会話に参加できない自分には価値がない、と思うこともしばしばありました。

 

でも私も最終日までここにいて良い学生である、堂々とここにいようと思う気持ちの方が優っていました。

 

どう過ごすかは自分次第。

 

苦しさを感じる事も日本では体験する事ができない種類のもの、自分がどうなるのかを観察してみよう、など。日本人の学生の中には、英語が理解できるし流暢に喋れるのに、授業中ほとんど喋らない人もいてすごく勿体ないと感じていました。

 

そういうところは価値観の違いなんでしょうね。

 

日々もやもやと考え事をしていても、気持ちを切り替えるべき時はやってくるのです。

 

アウトドアの授業の場は、その名の通りいつも屋外。自然の中、地球の表面で、私たちは生き物のひとつとして遊ばせてもらっている感。担当のマリアは本当にクレイジーな先生で、いつも豪快に笑いながら私たちを驚きの世界にドーン‼︎とぶち込んでくれました。

 

あるマウンテンバイクの授業では、ホイスコーレから車で30分の雨上がりの森へ私たちを連れて行ってくれました。

 

コースとはいえ、そこは太い木の根がたくさん露出している狭い獣道、凹凸の厳しい悪路でした。大汚れはもう仕方ないですが、ハンドルを握る手はもしもの転倒に備えて絶妙なちから加減で操作、集中を要する状況でした。

 

 

油断してバランスを崩したら怪我する可能性しかない環境を思い描いてください。スタートして30分以上そんな恐怖と不安で泣きそうな、でも集中が続く状態の中、ふと、景観やライディングを楽しめている自分にも気付きました。ゴールに到達した時は『よく頑張った!よく挑戦した!』と、とてつもない達成感が得られました。

 

何かがアップグレードされたようです。

 

心の底から本気で楽しんでいる自分に出会えた気がします。このような環境を与えられたからこそ出会えたんだろうと思います。

 

フォルケホイスコーレの真髄だな、これは。まだ言語化できないでいますが、いつかこの経験が何かの役に立つのではないか、と、そう思っています。

 

それにしても、日本だったらリスクマネジメントの観点でいろいろアウトなんだろうなぁ、と無粋な事を思ってしまいました。

 

そのほかの記事

 

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PROFILE
中島京子

中島京子

理学療法士。資格取得後23年間のうち急性期病院、回復期リハビリテーション病院、介護老人保健施設、診療所、訪問看護ステーションでの勤務を経験。『C』の仲間たちそれぞれの、世の中の生きづらさを低減するアクションを尊敬している。多くの人との出会いの中からデンマークに興味を持ち始め2023年デンマーク留学に挑戦。情報があり過ぎてまだふわふわしている状態。帰国後は児童発達支援教室の指導員と、ナイスなゲストハウスとのダブルワークをしている。ビール大好き。
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