第一回のコラムでは、なぜ今のこのタイミングで起業だったのかを振り返り、第二回では起業をしようと思った経緯として、勤務先の病院が閉院する前後のエピソードを記しました。
今回は前回のエピソードから学んだ、「理学療法士として雇われる」ということを再考していきたいと思います。
就職して一年目の私が学んだ理学療法士として働くということは、診療報酬を適切に取得するということでした。
診療報酬とは、医療機関に医療行為の対価として支払われる費用のことです。
【参考】日本医師会 https://www.med.or.jp/people/what/sh/
医療行為の一つひとつが点数化されており、点数を足し合わせて算出されます。
患者さんは、そのうち自己負担分(原則3割、年齢や所得に応じて異なる)を支払い、残りは加入している医療保険者が医療機関に支払う仕組みになっています。
私が取得した理学療法士の国家資格というのは、医療機関で理学療法(医療行為)を行うこと、そしてその対価が診療報酬として所属の医療機関に支払われることが許さる者になるということです。
私達はその医療行為を行うために、どこかの医療機関、つまり組織に所属する必要があります。
私は、年数を重ねていくに連れて、組織とは経営者(使用者、事業主、資本家)がいて、職員(労働者)が存在する場であることだと理解しました。
単純化すれば、私は労働者で、経営者によって雇われている。自分の労働力の対価がまず経営者に支払われ、その一部を経営者から賃金として支払われる人材、ということです。
これは国家資格を有する者でなくとも、多くの職業で同じことだと思います。
当たり前すぎて、立ち止まって考えることでもないのかもしれませんが、
このシステムに対する若干の違和感と、大切さにも気づかされたのが、勤務先の病院の閉院でした。
現場の職員達は、日々、患者さんの対応に追われています。
私達のリハビリテーション 科は、若いスタッフが多かったが、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として情熱を持って働いていました。
さらに私は部署の主任になり、担当部署の診療報酬の取得状況を把握していました。そして、リハビリテーション科の各部署の毎月の診療報酬を確認する会議で、経営者には適切に私達の医療行為の対価である診療報酬が支払われていることを明確に把握していた訳です。
そんな中、病院の経営難が伝えられます。
不測の事態で混乱、不安、動揺が病院全体に広がりました。
自分達は適切に業務に当たっていた、なのに!と無力感を味わったことを覚えています。
経営難が伝えられるまで、自分の部署や科の事しか考えていませんでした。
私は理学療法士という労働者として、患者さんの理学療法に集中させてもらっていたいました。
診療報酬の管理、給与や税金の支払いを医事課や総務課、経営者に任せて、私達は自分の持ち場のやりがいのある仕事に集中することができていました。
なるほど、これが分業の良さなのかと。
現在、私は教員という労働者として、大学という組織に身を置いています。
そして、新型コロナウイルス感染症拡大の最中に自分を更新したいと思い立ち起業してみようと決めました。
なぜなら、今の私は、組織で働くことの、良し悪しがはっきり理解できているからです。
病院、養成校など含め組織で17年間。
今までやったことがないことに挑戦しても良いのではないかと思いました。
自分自身が経営者となり直接社会と対峙する経験をしたい。
働き方のバリエーションを増やして、そこで試行錯誤することが、変化の大きい時代を生き抜く為の知恵とたくましさを身につけることになるのではないかと考えたのです。
あくまでも兼業としてではありますが、
経営者は自分。労働者も自分。
最小単位の事業体。経営者の自分がしっかり労働者の自分をマネジメントできるのか。仕事を与えることができるのかワクワクしています。
実はこのコラムを書いている時点で、顧客の獲得ができおらず、今のところは経営者として「0点」です。
さて、次はどんな行動を取るべきか。どんな情報を収集すべきか。誰に相談して、何を他者に依頼すべきか。
まさにこれがしたかったのです。
1980年生まれ。理学療法士。早稲田大学スポーツ科学研究科 スポーツ科学修士課程 修了。東京保健医療専門職大学 専任教員。十条かねたか整形外科で非常勤勤務。2021年外出や旅行を楽しむための身体づくりをサポートするトレーニング・コンディショニング事業「グッドレッグ」を起業。臨床・教育・研究・個人事業に携わりながらセラピストの新たな可能性を模索している。webマガジン「C」編集長。
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