前回のコラムでは自分の理学療法士としての17年間の歩みを紹介させて頂きました。そして、自分に雷が落ちたような衝撃を受ける出来事があり、他業界への転職を決断したわけですが、その出来事とは何だったのかこの回では綴っていきたいと思います。
「政治家の秘書への異動」
これが私に向けられた上司からの話でした。みなさん、自分にこんな話が来たら雷が落ちた感じしませんか?
2018年12月某日、上司から「話があるから時間を空けておいてほしい」と言われました。この瞬間「いい話だ」と思う人は少ないのではないかと思います。私もそのうちの一人であり、少なくても院内の異動、場合によってはグループ病院への出向など想像しておりました。
当時、自分の社会人の理想像は生え抜きでキャリアを積み、周囲の方々に認めてもらう状態が理想であり、その結果リハビリテーション科の科長になりたいという目標を抱いておりました。
それを叶える為には、どんな苦難も乗り越えるという覚悟を持つ事、多少の犠牲は払う必要があると認識し、年々歩んできました。
時にはリハビリテーション業務と関係ない仕事も請け負ったこともあります。そのせいで、私の同僚の方には良い影響をもたらす事もあれば、迷惑をお掛けした事もあったかと思います。
ですが、自分が足踏みをしてしまうと、後輩たちのキャリアアップも足踏みしてしまうのではないか。それだけは避けたい。と自分の認識の中で上司から舞い込む話や仕事は引き受けていくということは間違えではないと正当化してしまっていたと思います。
上司との面談の前に、どんな話であるか、様々な想像を廻らせ、基本的にはどんな話も引き受け、乗り越え、自分の成長に繋げようという心の準備で臨みました。
ところが、面談内容は自分の想像を遥かに超え、「政治家の秘書への異動」という話でした。いまでもその当時の雷が落ちたような衝撃だけは鮮明に覚えています。詳細はお伝えできませんが概要は以下の通りです。
・勤務先は参議院議員会館。
・給料は現状より下がるが、頑張ればすぐ上がるらしい。
・公費で給料が支給されるため出向という形式は取れないため、一旦退職となる。
・期限は決まっていないができれば任期期間中は継続して欲しい。
・片道切符ではなく戻ってくることはできる。
政治家の秘書への異動というワードだけでもインパクトがありすぎて上記の内容は辛うじて記憶したものの、理解には到底至らなかった状態でした。
秘書の仕事は何も分からないし、やりたいと1秒も考えたことのない政治の世界、
「そんなのやりたい訳がない」
「自分は理学療法士だ」
という思いと
「自分が断ったとしたら誰かに皺寄せがいくかもしれない」
「やりたくない気持ちだけで人事異動は断るものではない」
「どんな話も引き受ける覚悟で臨んだよな」
など、この葛藤にどのくらいの時間を要したかわかりませんが、自分の信念に基づき、何とか搾り出した言葉は「わかりました」でした。
上司との面談後、程なく参議院議員との面談がセッティングされました。
こちらの内容も詳細はお伝え出来ませんが、面談後一週間の検討をさせて頂く猶予を頂戴しました。結論から言うと、一週間後の答えは秘書の仕事は断るという決断でした。
その結果、年末に別の異動の通達が来て、年始に退職を決断致しました。私にとって2018年の年末年始は社会人生活において最大の転機となりました。このタイミングで理学療法士の業界自体を見つめる時間も多くとるようになりました。そして自分の進路として業種の異なる世界への転職を選択しました。
このコラムをご覧の方は、セラピストの方が多いと思います。みなさんでしたらどんな決断をされましたか?もちろん私と年齢、職場環境、家庭環境、社会人としての理想像など背景が異なりますし、稀な異動話だと思いますので、想像つきにくいと思います。
「滅多にないチャンスなのだから引き受ければよかったのに」
「わざわざ退職しなくても辛抱して次の異動先で頑張ればいいのでは」
「せっかく国家資格とったのに理学療法士は辞めなくてもいいのでは」
というお声が寄せられそうですね。
次回は理学療法士の業界をどのように見つめたか、何故、異なる業種を選択したか、そんな内容を触れていきたいと思います。
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