私は、現在、訪問リハビリテーションに従事しています。
リハビリテーションは病期の分類がよく使われますが、訪問リハビリテーションは、病期で分類すれば「生活期」にあたります。対象者のお宅を訪問して、心身機能の維持・回復や日常生活の自立に向けた支援を行うサービスです。
病期というのは、事故や病気が発症して救急車で運ばれる急性期、その治療が落ち着いて生活機能の回復を図る回復期、その後退院して在宅での生活を維持させるための生活期(維持期)で区切って考える分類です。
また、今日の医療は骨折などの整形外科疾患、心臓病などの循環器疾患、脳卒中などの脳血管疾患などの疾患の種類や治療対象の臓器別に治療やリハビリテーションが行われます。
訪問リハビリテーションでは、一人の対象者が抱えている疾患は多岐であることもあり、医学的な改善が難しい場合も多い現場です。
私はこうして単純に病期や疾患の種類、臓器別に語られるリハビリテーションに違和感を感じると同時に、理学療法士としての役割にジレンマがありました。
ソマティックリハビリテーションという言葉は、私が作った概念です。しかし、今、この世の中に足りない部分を補える考え方なのではないかと思っています。
ソマティックとはアメリカ人の哲学者であるトーマス・ハナが考案した概念です。
ハナはソマティックを「生体の一人称的な知覚」としています。
ソマとは「感覚運動機能の統合体であり、そこには学習された意識的、意志的な機能と学習されていない機能」1) (T Hanna. 1986)と考えられています。
つまり自分の存在に注意を向けて、意識されていない機能を意識的機能の一部にすることです。ここから、ヒトの問題を身体的なものと精神・心理的なものとに分けて捉えるのではなく、心身一体の問題と捉える概念と考えることができます。
リハビリテーションとは、WHO(世界保健機関)によれば、「能力低下やその状態を改善し、障害者の社会的統合を達成するための、あらゆる手段を含む」とされています。
私は、この二つを合わせてソマティックリハビリテーションというものを展開できたら良いと考えます。
私が、ソマティックリハビリテーションという概念に行き着いたのは、一人の重度のパーキンソン病の高齢の方に携わったのがきっかけでした。
パーキンソン病とは、進行性の病気で発症したら徐々に進行していきます。根本的な治療法がないので進行すると国の難病に指定されます。
パーキンソン病は
この方も、全身の筋の緊張が非常に強くて手足はもちろんあらゆる場所がガチガチに固まって動かすことできない状態で、苦しそうに常に呻き声を上げていました。
息子さんが主に介護をされていましたが、寝たきり状態なので、トイレに行くこともできません。食事も自分では摂ることができないので、介護者の負担は相当なものだったと思います。
この方は病気がかなり進行しており、顎が胸に付くほど曲がっており、両肘も90度近く曲がったまま、膝下に枕を入れた状態で足を伸ばしていましたが、そのまま固くなっていました。
通常、理学療法士は運動療法と物理療法で対象者の基本動作(寝返り、起き上がり、歩行など)を改善させる仕事ですが、この方は進行性の難病です。基本動作も徐々に難しくなり、介助者の負担は増え続けていきます。
こうした状況の中で、理学療法士の私にもっとできることがあるのか、と立ち止まったことがありました。
これが、私がソマティックリハビリテーションに行き着いたきっかけでした。
次回は、私がソマティックリハビリテーションに至った経緯をさらに詳しく、一人のケースを通してお伝えします。
参考文献
1) Hanna T: What is Somatics?.Magazine-Journal of the Bodily Arts and Sciences.1986;Ⅴ(4):4 – 8.
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