私は先天性の視覚障害があります。
白内障、小眼球、斜視、眼球振盪など合併していて、全盲は免れない状況でした。しかし、度重なる手術のおかげで、何とか弱視ながらも見えるようにはなりました。
その後は弱視特有の「牛乳瓶の底」と称される厚い眼鏡を愛用していました。
子供だから仕方ありませんが、それをからかう者がたくさんいることも生きづらさの一つでした。斜視もあった私は、そのからかわれる度は倍だった様に思います。
4歳でコンタクトにしてもらえ「牛乳瓶の底」からは打破できましたが、斜視は健在でした。
その後、幼稚園からの学生時代は、健常者と同じ環境で学ぶ訳ですが、健常者と同じように生活できる訳はありません。
例えば、運動に関しては、視覚障害特有のバランス感覚が無いので、遊具の一本橋を渡れませんでした。
そもそも弱視で遠近感も乏しいので、跳び箱や走り高跳びも躊躇してしまい、結果が出せない。球技なんてもってのほかです。
体育のリレーでは、バトンを渡す人の顔が認識できず、うまく渡せません。
プールの授業では、当時はゴーグルが禁止でしたので、コンタクトの私は目を開けて泳ぐ事ができず、真っ直ぐ泳ぐ事ができませんでした。
学校生活においても、廊下では友達に気が付かず「無視した」と言われ、授業では、一番前のど真ん中の席を君臨し続けました。
国語等の「前の人に続いて長文を読み上げる」授業では、教科書の字が読みづらい為、前の人の内容など頭に入らず、次に自分に回ってくるであろう文書の下調べに夢中になっていたものです。
前日にテスト範囲の文書を丸暗記した事もありました。細い文字が見えづらいと言うことは、学業の成績としては、漢字は苦手と言うことにもなります。これも予習しか補う方法はありませんでした。
一番前の席とはいえ、黒板の字を見るのもやっとでしたから、いつもノートはぐちゃぐちゃでした。
どこを取っても「ドジキャラ」を演じ続けていたのが忘れられません。
一番忘れられないのは、小学校に入学したての時、目を机に近付けて文字を書いていた私に対し、教員が「目が近い」と言って、私の髪の毛を掴み、頭を引き上げた事でした。
なぜ、「ドジキャラ」を演じなければならなかったのか、なぜ、こんな教員から酷い仕打ちを受けたのか、
それは、娘が障害者であることを隠したい母が、学校側に、私が視覚障害者だと言う事を告知していなかったからでした。
当時は障害者に対する世間の認識が乏しく、視覚障害そのものだけでなく、偏見や差別による生きづらさも今よりも多かったのだと思います。
現在は、見えづらいながらも、訪問のマッサージを行っています。
本来なら、移動という負担を避け、「箱もの」と言われる治療院や整形外科、マッサージ店で働くのが得策と思われますが、そういった「待ち」の現場は殆どが固定ではなく、その都度新規の方と向き合うことが多いのです。
ですが、訪問は、固定的にお伺いできるので、長期の治療方針や、信頼関係、ご年配の方から人生のお話などをじっくり伺うことできとてもやりがいがあります。
視覚障害のある私に、公共交通機関の移動は不便です。しかし、皆さんと同じように喜びもあります。
自分では行かない地域の景色や、美味しいお店などを知ることができたり、この時期は桜を見ながら歩けたりします。
今まで、足元が不安でしたばかり向いていた私が、桜を見るために、顔を上げることがあります。
この開放感、場所に縛られない自由な感覚は私にとって、とても大切なのです。
またこの仕事は、常に自分自身を向上させられます。いわば私にとって「仕事は趣味」になっています。
視覚障害者は、とかく指先手先の感覚が繊細と言われています。やはりこのジャンルは私にとっても天職の様に思え、やりがいを感じているのです。
感謝のお言葉を頂ける事も多く、ドジキャラを演じてきた私が救われた、素晴らしい資格に出会えたと思っています。
逆に言うと、視覚障害だったからこそたどり着いた天職ではなかったかとも思っています。
最後まで読んで頂いてありがとうございます。
このコラムでは、視覚障害者としてどのような困り事、生きづらさがあるのか、そして、居合わせた人に、このようにサポートしてくれると助かるな、といったことをお伝えできればと思っています。
このコラムを読んできただき、少しでも視覚障害への理解が広がれば幸いです。
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