はじめまして!理学療法士でトランスジェンダー男性の中西純です。
私のコラムでは、リハビリテーション業界における性的マイノリティやセクシュアリティに関する課題について扱います。
これらの課題については、今までリハビリテーション業界で取り上げられ議論されることが殆どありませんでした。
そこで、本コラムを通じてリハビリテーション業界に問題提起をしていきたいと思います。
最初のコラムなので自己紹介させていただきます。
一般大学を経て理学療法士養成校を卒業し、都内の総合病院に勤務しました。一般大学では、日本史や哲学(現象学・身体論)を主に勉強していました。
前職場では回復期病棟と訪問リハビリを経験しました。現在は、重度の医療的ケアが必要な方の多い訪問看護ステーションに勤務しています。
私のセクシュアリティは、生まれた時の性別(身体の性)は女性で自認する性は男性の“トランスジェンダー男性”です。
小学校入学前より女の子として扱われることに“なんとなくの違和感”を抱いていました。そのまま女の子として長い事育てられましたが、大学卒業しリハビリ業界に進むとともに男性として生活を始めました。
私自身がリハビリ業界に身を置く中で、トランスジェンダー当事者として様々な違和感や困難を経験してきました。
例えば、養成校や職場外で参加した触診を伴う授業やセミナーで「男性は上半身裸になるように」といった指示があり拒否できずに服を脱がざるを得なかったことがありました。
多くのセラピストが同じような経験をしたことがあるのではないでしょうか。
このような経験が“当たり前”になっている原因の1つとして、リハビリ業界で性的マイノリティへの対応が不足していることがあると考えています。
現在はリハビリテーション業界で性的マイノリティという立場で過ごす中で感じてきたこうした違和感や困難さから、業界に対して性的マイノリティやセクシュアリティに関するトピックスを立てるために、学会発表や大学等での講義、コラムの執筆を行っています。
私が考える療法士の性的マイノリティに対する理想像、リハビリテーション業界の動きは以下の4点です。
1を達成する為には、2~4の取り組みが行われると同時に、療法士の性的マイノリティに対する理解を深めることが重要だと考えています。
全ての療法士の性のあり方、全ての対象者の性のあり方が尊重されるリハビリテーションが実践されることが大切です。
次のコラムで詳しく述べますが、性のあり方は性的マイノリティだけでなく“性的マジョリティ”にも関係のある話です。性的マイノリティについて考えることをきっかけとして、全ての人の性のあり方が尊重されるリハビリテーションが実践される業界となって欲しいと思っています。
性的マイノリティやセクシュアリティに関するトピックスが立ってないことが問題であると述べてきましたが、なぜ問題なのでしょうか?「なぜ問題なのか?」ということについても本コラムでは取り上げていきますが、まずは性的マイノリティとされる人々の割合について取り上げます。
性的マイノリティやLGBTQ+という言葉を聞いたことがある人は多いと思いますが、「実際には会ったことないし今までリハビリテーション場面で出会ったこともない」という人が多いのではないでしょうか?
しかし、今までに出会ったことがないのではなく “見えないだけ”なのかもしれません。
現在、国内には性的マイノリティの人々は3~10%いると言われています。左利きの人と同じ割合であるとされています。
もう少し別の数字で見てみましょう。
現在、日本理学療法士協会の会員は129,875人ですが、その10%は12,988人であり、神経理学療法領域の登録会員数は9,875人1)(2019年7月現在)です。
日本作業療法士協会の会員数は62,294人で、10%になると6,229人で介護保険関連施設に勤務している作業療法士は6,147人2)(2020年3月)です。
日本言語聴覚士協会会員数は36,255人で3,626人が10%にあたり、小児言語・認知に関わる会員数は4,480人3)です。
周辺のセラピストで上記の項目に携わっている人と同じような割合で性的マイノリティはいるとされています。
想像していたよりも身近に感じていただけたでしょうか?
日本医師会は『医の倫理の基礎知識2018年版』の「LGBTの患者に対する医師の対応」において2015年4月の電通ダイバーシティ・ラボの調査によってLGBTの割合が7.6%であることに触れた上で、「かなり多くのセクシュアル・マイノリティ、ジェンダー・マイノリティの人々がいることが明らかになってきた。」ことから、「医療の現場で、LGBTの人々はどのような行動をとり、医師はこれに対してどのように向き合えばよいのであろうか。」4)と疑問を投げかけつつ対応について言及しています。
一方、日本理学療法士協会の職業倫理要綱へは性的マイノリティへの記載はなく、まだまだ発展途上であることがわかります。
しかしながら、日々臨床現場では様々な対象者と接します。今まで、対象者の性別を「男」と「女」に2種類のみで扱ってきましたが、対象者の生活に関わる療法士だからこそ、多様な性について理解し性的マイノリティの人々への対応について関心を持つことが大切なのではないでしょうか?
次のコラムでは、そもそも“セクシュアリティ”とは何なのか?ということに触れながら様々な性的マイノリティや性的マジョリティの説明をします。
参考文献
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