カミングアウトってなに?|連載第3回

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カミングアウトってなに?|連載第3回

連載:リハビリとLGBTQ+
May 14, 2022

今回はカミングアウトを取り上げます。

 

カミングアウトとよく似た言葉でアウティングがありますが、別のコラムで取り上げていきます。友人や家族、臨床場面、職場のスタッフからカミングアウトを受けることがあるかもしれません。そんな時、あなたはどんな対応をするでしょうか?

 

今回のコラムでは、単に「カミングアウトとは?」を取り上げるのではなく、カミングアウトをする側が置かれている心理的状況や今までの経験も取り上げます。カミングアウトについて「知る」ということは、背景を知ることだと考えています。

 

カミングアウトを受けた際の対応や心構えについては、別のコラムで取り上げていきます。また、カミングアウトについてより知るためにはアウティングを理解することがとても重要ですので、合わせて読んでみてください。

 

 

 

カミングアウトとは?

 

 

性的指向や性自認(SOGI)を隠して生きることをクローゼットと言い、クローゼットの状態から自身のセクシュアリティを公表することをカミングアウトと言います。

 

カミングアウトはたいていの場合、信頼している人や自分自身のことをもっと知って欲しいという思いで行うことが多いようです。

 

カミングアウトはグラデーションです。誰に、どの範囲、どの程度をカミングアウトするかは人によって異なります。カミングアウトをする目的や相手、関係性、環境によっても内容は変わってきます。

 

私の場合を示してみましょう。友人に対しては、私自身のことをもっと知って欲しいという思いでトランスジェンダー男性であることやそれに伴う生きづらさ、困りごとなどを話します。一方、就活や転職活動では、カミングアウトの目的を話した後にセクシュアリティを話し、明確に行って欲しい対応と病院・企業側ができることとできないことの確認、人事や組織内での情報共有の範囲を確認します。

 

このように私の例だけでもカミングアウトの目的が対極的です。セクシュアリティは多様ですが、カミングアウトもセクシュアリティや人間関係に伴って1つとして同じではありません。

 

同じカミングアウトはないため当事者にとって緊張していることが多いかと思います。人によっては、カミングアウトの回数を重ねれば慣れてくる場合もありますが、アウティングのリスクや人間関係が壊れたり今まで通り接してもらえない経験をしている人も少なくありません。

 

 

アウティングは、本人を尊重していないだけでなく、本人の意思を無視している行為と言えます。どのようなことがアウティングにあたるのか、何に気を付けたら良いのかはアウティングに関するコラムで詳しく取り上げます。

 

カミングアウトのメリットとリスク/デメリット

 

カミングアウトによるメリットとデメリットを理解することは、読者の家族や友人・対象者・対象者の家族・職場のスタッフがカミングアウトをしてくれた時に適切な対応をする一助になります。

 

 

 

メリットとリスク/デメリットを単純に比較はできませんが、数だけを見るとリスクの方が多いことがわかります。こうした現状から、LGBTQ当事者のすべてがカミングアウトをしたいと思っているわけではないことは容易に想像がつくかと思います。

 

カミングアウトをするかしないかは、当事者の自由であり、基本的に強制されることではありません。

 

ただし、自傷・他害の危険性があるとき、熟慮の上、退院支援などで必要不可欠な情報であると判断したときなどはセクシュアリティに関する事柄を尋ねることは必要だと思います。その際には、丁寧にセクシュアリティを尋ねる理由を説明し、心理的安全性を担保することが重要です。

 

 

まとめ

 

カミングアウトとは今まで誰にも言ってこなかった自分自身の秘密を誰かに話すことです。

 

カミングアウトすることによって自分を隠さなくても良く、隠していることによるストレスが軽減します。他者との緊密性も増すと言われています。

 

同時にカミングアウトすることにはリスクも伴います。敵意が向けられたり差別や排除されることがあり、時に人間関係が崩れてしまう危険性もあります。

 

LGBTQは見えない存在のため、カミングアウトされないと存在を認知できません。しかし、今回のコラムで述べた様にリスクやデメリットが付きまといます。認知してから配慮をするのではなく、カミングアウトをしてもしなくても生きやすく、医療・福祉やリハビリを受けやすいことが大切だと考えています。そのためには、セラピストがカミングアウトに伴うメリットとデメリットを理解しておくことが重要です。

 

 


 

 

引用・参考文献≫

●松岡宗嗣『あいつゲイだって―アウティングはなぜ問題なのか?』(2021)柏書房

●石田仁『はじめて学ぶLGBT 基礎からトレンドまで』(2019)ナツメ社

●Human Rights Campaign2014”A Recourse Guide to Coming Out”

PROFILE
中西純

中西純

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理学療法士。トランスジェンダー男性。現在、ウィル訪問看護ステーション江戸川勤務。大学等で性的マイノリティに関する出張講師を勤める。リハビリテーション業界における性的マイノリティの環境について問題提起を行っている。
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