昨年、マイナーの試合中に脳出血を起こして倒れ、左半身麻痺の重症を負った24歳の選手が復帰への道を歩んでいる。フィリーズの有望株だったベネズエラ出身のダニエル・ブリトー内野手は昨年7月31日(日本時間8月1日)の試合で昏倒。59日間の入院、2度の手術、1か月の昏睡状態、左半身麻痺という苦難を経て、大学の施設で練習を再開させた。米スポーツ専門メディア「ジ・アスレチック」がここまでの道のりを伝えている。
ブリトーは2014年、16歳の時にフィリーズと65万ドル(約7500万円)でマイナー契約。昨年2Aで打率.296(247打数73安打)、出塁率.363、長打率.458を記録し、フィリーズは9月のメジャー昇格を検討していた。悲劇は3Aに昇格して10日が過ぎた日に起きた。先天性の脳動静脈奇形(AVM)により脳出血を起こしてグラウンド内で昏睡状態になった。
目を覚ましたのは8月20日(同21日)のこと。ICUにいる時に急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を発症したため治療に時間がかかったが、9月20日(同21日)に歩行器を使って歩き始め、9月22日(同23日)には立てるようになり、理学療法士が投げた軽いボールを左手でキャッチ、スムーズな動きで投げ返せるようになった。9月23日(同24日)には看護師の支えだけで歩けるようになった。
10月に理学療法を受け始めた時、目標はベッドから出たり、階段を使ったり、左手でグラスを持ったりといった日常生活を送れるようにすることだった。しかし、12月に入る頃にはバットを振り始め、ゴロを処理し、ウエートを持ち上げ、ランニングを始めた。入院中に50ポンド(約22.7キロ)落ちた体重も回復。現在は大学の施設で練習を行う。
脳出血を起こす前の最後の記憶は7月21日(同22日)に3A昇格を伝えられた時のことで、その後の10日間の記憶、3Aでプレーした記憶は残っていないという。ブリトーは「まだここにいることができて本当に感謝しています。私は自分がプレーを続けることを分かっています」と競技復帰に意欲を見せている。
命を繋ぐことができた背景には幸運もあった。ブリトーが倒れたニューヨーク州ロチェスターのフロンティア・フィールドは、米国で最も評価が高い脳神経外科の病院から約3マイルの距離にあった。ブリトーの婚約者であるアニェリス・ペティットさんは「ベネズエラではなく、ここで起きたことに感謝しています。そうでなければ正直言って、彼は今ここにいないと思います」と語っている。
フィリーズも復帰を後押しする。ブリトーが昏睡状態だった時にマイナー契約を結び直した。入院中は婚約者やベネズエラに住む母親らが一緒にいられるように様々な手配をし、リハビリ施設にいる時にはジョー・ジラルディ監督が訪問。「君を待っているよ」と直接伝えた。
とはいえ、競技復帰には様々なハードルが立ちはだかる。治療した神経科医によると、最も大きなダメージを受けた右前頭葉は高レベルの機能を司る。打席で球種を瞬時に見極めたり、守備でどこに投げるべきか判断したりといった「瞬時の判断を下すことが難しくなるだろう」と同医師は指摘する。練習を再開させた当初は左足で2秒間バランスを取ることもできなかったそうで、俊敏性も取り戻せていない。
記事は、ブリトーが数年前にサイン入りカードに録音した、自身の大事な言葉を紹介した。「『根気強さ』が私の座右の銘。困難な時も私は決して諦めない」。ブリトーが今後どんな復活ロードを歩んでいくか、注目される。
出典:Full-Count
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