幼児期に必要な1日の運動時間は60分以上ですが、それに満たない運動不足の子どもが増えています。キッズヨガや親子ヨガで、手軽に運動不足を解消しませんか? 理学療法士の堀川ゆきさんが、子どもがヨガを行う上での注意点や避けるべきポーズを解説します。
この数年コロナ禍の影響もあり、子どもの運動不足を気にしている保護者が少なくありません。
厚生労働省によると、現在の子ども達は、
・身体活動量の低下
・体力の低下
・小児肥満の増加
・テレビゲームなどの非活動的余暇時間の増加
・夜型生活と生活習慣との関連
などの問題点が報告されています。
また、子どもの身体活動量低下の原因として、
・交通手段の発達
・外遊びの減少
・テレビゲームなどの非活動的に過ごす時間の増加
が指摘されています。
また、文部科学省の『幼児期運動指針ガイドブック』によると、「幼児は様々な遊びを中心に、毎日、合計60分以上、楽しく体を動かすことが大切です!」とあります。
幼児期運動指針のポイントとして、
1.多様な動きが経験できるように様々な遊びを取り入れること
2.楽しく体を動かす時間を確保すること
3.発達の特性に応じた遊びを提供すること
の3つを掲げています。
子どもの身体活動は、心身の健全な発育のために重要です。また、身体活動を通じて社会性の発達が期待できることにも注目すべきです。特に小児期は、健康のために良い習慣を定着させる重要な時期でもあります。
「キッズヨガ」や「親子ヨガ」があるように、ヨガは大人だけでなく子どもにとってもとても気軽で良い運動になります。ヨガには筋トレ・ストレッチ・バランス能力など、子どもに必要な運動要素が充分に備わっています。ヨガを子どもの運動不足解消のためのツールの一つとして是非活用してほしいと思っています。
しかし、実は子どもにとって負担となってしまうポーズがあることを知っていますか?子どもに必要な運動と、大人に必要な運動は大きく違うことに注意しなくてはいけません。
今回は子どもがやっては行けないヨガのポーズを紹介したいと思います。私たち大人が子どもの頃、体育や部活動で当たり前に行っていた運動が実は危険なことに驚くかもしれません。子どものために安全かつ効果的にヨガを取り入れられるように、NGポーズを知っておきましょう。
腕立て伏せに似たもので、上肢や体幹の筋力強化にオススメです。しかしコアの力がうまく使えないまま行うと、腰に負担をかけたり、翼状肩甲といって肩甲骨が浮き出る障害につながる可能性があります。
腹筋の強化に欠かせない上体起こしですが、足を伸ばして行ったり、反動をつけて行うとまだ未熟な腰椎への負荷が大きくなってしまいます。また、仰向けで脚を上に上げたところから床へ下ろしていくレッグダウンという腹筋の筋トレも同様に、腰椎へ負担をかけやすいです。ヨガではナバーサナなどのアレンジで腹筋強化する場合に注意が必要です。
テニスでサーブをしたり、サッカーでボールを蹴るなどの捻り動作に有効なトレーニングですが、背骨の椎体がまだ完成していない成長段階の子どもが脊柱を捻ると、腰椎分離症のリスクがあります。ヨガではヴィーラバドラーサナやアンジャネーヤーサナで上体を捻るようなアレンジは控えましょう。
ジャンプ動作のあるスポーツのトレーニングや、下肢の筋力や瞬発力の強化になります。ヨガではジャンプ動作はほとんどないですが、まだ関節が未熟な子どもが行うと、特に膝関節に負担をかけてしまい、オスグッド・シュラッダー病という膝の疾患になるおそれがあります。私も子どものオスグッド病のリハビリをたくさん担当しました。
正座から身体を後ろに倒して大腿四頭筋を伸ばすポーズです。柔軟性が低い子どもが行うと、腰へ負担をかけたりオスグッド病の原因になりやすいです。また膝を捻るので膝の靭帯にも負担をかけます。
背中の上部がストレッチされて気持ちのいいポーズですが、首への負担が非常に大きいポーズです。成長段階の子どもには不向きだと考えられます。子どもだけでなく、大人が行う場合ですら近年注意喚起されているポーズです。
股関節の柔軟性を高める有名な開脚前屈です。反動を使わず自分でゆっくりと行う場合は大丈夫ですが、他人に背中を押してもらい無理な力で行うと危険です。反動を使ったり強い力で後ろから押されてしまうと、剥離骨折や靭帯や腱などの断裂のリスクが高まります。
首周りのストレッチとして、頭を後ろに倒して首の前を伸ばすことがあります。首は後屈には非常にデリケートにできていて、頚椎を必要以上に伸展させたり、猫背姿勢のまま頭だけ後ろに倒すようなやり方をすると、頚椎を痛めやすいので危険です。
ヨガで子どもがやってはいけないポーズがあることが、意外だったかもしれません。
まだ筋肉や骨や関節が未発達の子どもたちの身体の使い方には充分な注意が必要です。
ただ、これらのポーズを一切禁止すべきいうわけではありません。子ども対象のヨガクラスや、家でやるエクササイズとして少しなら取り入れても良いと思います。
しかしここで紹介したポーズを、回数をたくさん行わせたり、スピードを上げて反動で行わせると、間違いなく障害につながります。
正しいやり方や別のオススメのポーズは次回のコラムで説明しますが、強度をできるだけ下げて、そのポーズをコントロールしやすい方法で必ず行いましょう。保護者や部活の顧問やコーチ、子どもの運動指導者には、未来ある子どもたちのために、このことをぜひ知っておいていただきたいです。
出典:ヨガジャーナルオンライン
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