Mar 19, 2022
松下友貴
「バリアフリー住宅は、高齢者や障害者のためだけのものではありません」。そう語るのは、自身もバリアフリー住宅に暮らす、理学療法士の松下友貴さん。同居する高齢者はいませんでしたが、家族が長く暮らすために、あえてバリアフリーの家づくりをしました。出産を機に、バリアフリーが子育てにもメリットがたくさんあることを改めて実感。とくによかった3つの点について語ります。
車イス用のスロープをつくったことで、ベビーカーでの外出がとてもラクに
ポイント1:車イス用のスロープは、ベビーカーにも優しい!
筆者宅は、玄関までのアプローチとして車イス用のスロープを設置しています。スロープは、車イスが通れる幅を確保し、安全な1/12勾配(高さ1mを12mかけて上る勾配)に。
この車イス用のスロープが、子どもの散歩にベビーカーを使用する際にも役立っています。もしもスロープがなかったら、外出の場合は「階段下にベビーカーを置く→ 子どもを抱き上げて玄関の鍵を閉める」ことになります。
わが家は、スロープがあることで、玄関の土間で子どもをベビーカーに乗せてから移動することが可能に。玄関の鍵の開け閉めも、ラクに行えます。
また、屋内で乗せたまま外出できるので、屋内でベビーカーの日よけもセットできて便利。子どもを強い日差しにさらすこともありません。
帰宅したときも、玄関土間までスロープで上がれるので、ベビーカーの片づけがスムーズ。車イスの幅よりもベビーカーの幅の方が狭いため、ゆとりのある操作が可能です。スロープの袖壁にプランター植物を育てていますが、問題なくベビーカーの使用ができています。
ポイント2:リビング隣の段差のない和室は、ベビーベッドの置き場所に最適
高齢になり1階のみで生活する将来を想定し、リビング隣に4.5畳の和室を設置しています。
出産前は客間として使用していましたが、今はベビーベッドの置き場所として重宝しています。バリアフリーを意識し、段差のない続き間にしたことで、部屋をまたいでベビーベッドを置くことができるからです。
この場所に設置することで、日中はリビングから、夜間はふとんを敷いて寝ている和室から、子どもの様子を見ることができます。
和室には押し入れがあり、現在はベビー用品を収納する場所に。また、子どもの着替えやオモチャなどの収納にも役立っています。わざわざベビーたんすといった収納家具を用意せずに、部屋を広いまま利用できていることも、うれしいポイントです。
ベビーベッドを卒業したら、和室にふとんを敷く予定です。ベビーベッドからふとんに変更しても、和室に家具を置かない状態をキープできそう。子どもの安全面から考えても、また、部屋が4.5畳しかなくても広く使えるのは、大きなメリットです。
ポイント3:車イス用トイレにしたことで、オムツ用ゴミ箱を置くことが可能に
子どもが産まれてから紙オムツを使用しています。紙オムツを捨てる場所は、どの家庭も悩みどころ。オムツ交換の頻度が高いため、便利な場所に設置したいところですが、においも気になります。
そこで、筆者宅では、オムツ用ゴミ箱をトイレに置いています。これは、車イスのまま使用できるトイレにしたため可能となりました。
通常のトイレでは、このサイズのゴミ箱を置くと、狭い印象を受けると思いますが、まったく問題なし。においが漏れないゴミ箱を使用しているものの、換気扇が使用できるこのスペースに設置できたことは、とてもよかったと感じています。
ゴミ箱から紙オムツを捨てる際も、部屋ではなく、廊下で行うことができるので、部屋へにおいが漏れる心配もありません。手洗い動線のことを考えると、必ずしもベビーベッドの隣に設置する必要はないため、トイレに設置していても不自由さも感じず生活しています。
バリアフリーは高齢者や障害者向けだと思われがちですが、高齢者や障害者がいない一般家庭にもメリットがあることを子育てから学びました。「若いからバリアフリー住宅でなくてもいいや」という考えではなく、家族全員が安全で快適に暮らせるように、バリアフリーの観点も取り入れてはいかがでしょうか。
出典:ESSEonline