高齢ドライバーの事故報道を耳にすると、「うちの親は、大丈夫だろうか……」と、1人でモヤっている人は、実は多いのではないでしょうか? そこで、介護ジャーナリストの小山朝子さんにお話を伺いました。
イラスト:平松昭子
小山さんは、介護の専門家として、多数のメディアで発言しています。20年以上、介護の現場を取材し、自らも約10年にわたり祖母を在宅で介護しました。現在は、「 免許返納サポーター 」というWebサイトも運営し、「親の運転が心配だ」「そろそろ免許返納をしてほしいけれど、親に言いづらい」という方の相談に応じています。
――なぜ、高齢ドライバーのご家族をサポートする活動を始められたのですか?
小山: 高齢者のご自宅を訪問する中で、夫の運転を不安に思う妻やその子供などから、悩みの声を聞く機会がありました。コロナ禍で、そうした悩みを直接伺うことができなくなり、オンラインを活用しご家族へのサポートができるといいなと感じました。
介護にもいえることですが、「誰か1人が抱え込む」より、家族や友人、介護専門職などの力を借りることで問題が解決へ向かうことがあるのです。
――相談は、どんな感じなのでしょう?
小山: 解決すべき課題はそれぞれ異なります。100人いれば100通りの回答があると言っても過言ではありません。
免許返納に成功する決め手のひとつに「お金の話から切り出す」ということがあります。高齢の父親の運転に不安を抱いていた、ある家族の例を紹介します。
――お金のこと、ですか?
小山: 年金生活における費用対効果を訴えたのです。車を所有していることでかかる費用は、たくさんあります。(下の表参照)。まず、これらの具体的な数字を調べて、明らかにしました。車を所有している限り、これらのコストはかかります。
●車を所有することでかかるコスト例イメージ図
(小山さんの話をもとに筆者作成)
小山: お父様が所有している車が古かったことも、大きな要因となりました。新車登録から13年以上が経過した車(ガソリン車)は、自動車税が割り増しされています。2015年4月以降は、その割り増しの率がこれまでの10%から15%へ上がっています。
こんなふうに古い車を所有し続けるデメリットを強調する一方で、運転免許の自主返納の特典についても伝えました。
――自主返納をするとどのような特典があるのでしょう?
小山: 警視庁の 高齢者運転免許自主返納サポート協議会加盟企業・団体の特典一覧 では、その一例が紹介されています。
――リストを見て、「こんなにあるの!」と、正直、驚きました。
小山: 免許の自主返納の特典に関しては、全国各地で、趣向をこらしたユニークな内容が用意されています。高齢の親の運転が不安になり始めたら、自主返納の特典を何げなく話題にし、その反応をうかがって対策を練るのも一案です。
ユニークな自主返納特典
(高齢運転者支援サイトより筆者抜粋)
――高齢の親に免許の返納を促したい場合、伝え方にコツはあるのでしょうか。
小山: 最も避けたいのは、頭ごなしに「もう年なのだから」と免許の返納を迫ることです。本人のプライドを傷つけるばかりか、怒りから、さらに聞く耳を持たなくなる可能性があります。過去には、免許返納を巡り家族と口論になり、放火事件を起こした男性の事例もありました。
――それは避けたい……。
小山: ポイントは「無理強いせずに納得してもらうこと」です。例えば、「視力が低下してきたから」など生理的な要因を具体的に指摘する。その際、主語を自分にして、「私が心配だからやめてほしい」と言うのもコツです。
「免許返納はしない」という結論に至った場合でも、「制限運転」(運転時間や場所などを選択して運転する)を提案するなど、家族が折に触れて伝えていくことも大事だと思います。
多くの人が頭を悩ませているであろう、高齢の親に対する免許返納の切り出し方。相手が受け入れやすい伝え方や、きっかけの話題づくりなど、選択肢をいくつか持っているだけでも違いますね! (楢戸ひかる マネーライター)
出典:yomiDr.
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