女性にAED ためらわないで

C magazine for the PT OT ST

女性にAED ためらわないで

Mar 4, 2022

(2019.5.31 取材:松岡康子)

心停止となった人の心臓の動きを正常に戻す医療機器、AED。
救急車が到着する前に、心臓マッサージ(=胸骨圧迫)とともに使えば、何もしない場合よりも救命率が4倍上がるとされています。
救命に欠かせないAEDですが、「倒れた人が女性だった」ことを理由に使われない、という事態が起きています。

スポーツ大会で、突然倒れた

西日本に暮らす44歳の女性は、6年前、あるスポーツ大会に参加しました。知り合いからの声援に、笑顔で手を振る女性。この写真が撮影されたあと、突然倒れました。

近くにいた人が、意識がない女性を見てすぐに心臓マッサージを開始。そして救護車に乗って駆けつけた大会関係者が、大会本部に119番を依頼。救護車にはいざという時のためにAEDが積まれていて、大会関係者はAEDを車から降ろしました。

しかし、AEDが使われることはありませんでした。

119番を要請して5分後、救急車が到着し、救急隊はAEDが必要だと判断してすぐに女性にパッドを装着。到着から2分後、電気ショックが行われました。

しかし、脳に酸素が不足する状態が長く続いたことから、女性には重い意識障害が残りました。今も、寝たきりの生活が続いています。

「女性だから」AEDが使われなかった

なぜ救護車に積まれていたAEDが、使われなかったのか。
疑問を投げかけた女性の夫に対し、大会の主催者は「倒れていたのが女性で、駆けつけたのが男性だったから使われなかった」と説明したということです。

夫は「救急車が到着する前にAEDを使ってくれていれば、後遺症がなかった可能性は十分あると思う。責めるつもりはないが、とても悔やまれます」と話していました。

倒れた人が女性だと、男性よりもAEDが使われにくい。そんな調査結果を、最近京都大学などの研究グループがまとめました。

全国の学校の構内で心停止となった子ども232人について、救急隊が到着する前にAEDのパッドが装着されたかどうかを調べたのです。

学校にはAEDの設置が進んでいて、もしもの時にはすぐに使える状態の場合がほとんどです。しかし小学生と中学生では男女に有意な差はありませんでしたが、高校生になると大きな男女差が出ていました。

男子生徒は83.2%なのに対し、女子生徒は55.6%と、その差は30ポイント近くありました。

AEDのパッドは2枚あり、右胸の上と左のわき腹に、直接装着します。
「倒れた人が女性の場合、素肌を出してAEDを使うことに一定の抵抗感があるのではないか」研究チームはそう分析しています。

セクハラ?「ありえません」

このニュースが報道された後、ネット上でも「どうせ助けてもセクハラとか言って訴えられる」「社会的地位を失う可能性のデメリットの方がデカイ」など、トラブルをおそれてしまうといった声があがりました。

女性にAEDを使うことで、責任を問われることはあるのでしょうか。

「まず、ありえません」

そう答えてくれたのは、日本AED財団の顧問を務める、武蔵野大学法学部特任教授の樋口範雄さんです。

「善意で人を助けるという救命処置の場合は、対象者を害するという悪意などがないかぎり、民事責任は問われることはありませんし、罪になることもありません。」(樋口さん)

AEDは服をめくったり、開いたりして素肌に直接パッドを貼ります。命を救う目的であれば、責任を問われることはないという見解です。

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