より良い社会を探す、見つける、伝える新時代のWEBメディア

C magazine for the PT OT ST

障害者の可能性広げるハンズフリーマウス発表 メガネに装着し頭の動きだけでPCを操作

Mar 12, 2025
眼鏡に装着したPCを操作する小型デバイス「JINS ASSIST」(筆者撮影)

手や腕に障害のある人々のデジタルデバイド(情報格差)解消に向けた新たな選択肢が生まれた。眼鏡ブランド「JINS」を展開するジンズは2月26日、眼鏡に装着することで頭の動きだけでパソコンを操作できる小型デバイス「JINS ASSIST(ジンズアシスト)」を発表した。価格は1万5000円と、類似製品と比べて大幅に抑えられており、多くの人が手に取りやすい設計となっている。(編集部・池田美樹)

デジタルデバイドの現実と新たな解決策

厚生労働省の調査によると、日本には約1165万人の障害者がおり、これは人口の約10人に1人に相当する。そのうち上肢(手や腕)に障害のある人は約59万人で、鳥取県の人口を上回るという。

日本のインターネット利用率は13歳から69歳までの各階層で9割を超える一方、身体が不自由な人の利用率は3割以下にとどまっている。ITの進化によってデジタルツールは生活の一部となっているが、それを利用できる人とできない人の間には大きな格差が生じている。

ジンズの持ち株会社ジンズホールディングの田中仁・代表取締役CEOは「JINS ASSISTは、デジタル庁の掲げる『誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化』の実現に向けて開発された」と説明する。

「単なるマウス操作の代替ではなく、できることが増えることに価値がある。メールを送る、文章を書く、インターネットで検索するといった当たり前のことが、ある人にとってはできなかった。諦めていた可能性をもう一度広げるきっかけを提供したい」という。

使いやすさを追求した製品設計

JINS ASSISTは、眼鏡のテンプル(つる)の部分に装着する小型デバイスで、親指大のデバイス部分とケーブルからなる軽量設計が特徴だ。本体重量はわずか4g、ケーブルを含めても約13gという軽さで、眼鏡にも身体にも負担がかかりにくい。対応OSはWindows10以降、macOS13以降で、USB-Cポートで接続する。

眼鏡に装着してパソコンに接続すると、USBマウスとして機能する。最大の特徴は、頭の小さな動きだけでカーソル操作から左右クリック、ドラッグアンドドロップまで、パソコン操作に必要なほとんどの動作が可能な点だ。

開発は4年の期間をかけ、3回にわたるユーザーテストを実施した。当初は頭の動きでカーソルを動かし、瞬きでクリックする仕様だったが、「瞬きの操作に疲労感が強く現れた」という課題を克服するため、わずかな頭の動きだけで操作ができるよう改良が重ねられた。

プロジェクトマネージャーの菰田泰生氏によると、何度も一から作り直しを行い、試行錯誤の末に現在の形にたどり着いたという

「使い続ける上での煩わしさが少ないこと、ユーザーごとにカスタマイズできて長時間でも使える操作性を備えていること、ユーザーのニーズを反映し続けて完成したこと」という3つの特徴が開発の柱となった。

また、無線式ではなくUSB接続による有線式を採用したのは、使いやすさと価格のバランスを考慮した結果だという。無線化すれば重量が10g以上に増し、定期的な充電も必要になることから、シンプルで扱いやすい設計を優先したとのことだ。

障害者だからできることを作り出す

記者発表会には、障害者向けデジタル支援サービス「ミライロID」を提供するミライロ代表取締役社長の垣内俊哉氏も登壇し、「障害者でもできることを探すのではなく、障害者だからできることをこれから探していく、作り出していくことができる」と述べた。

垣内氏によれば、世界の障害者人口は16億人を超え、その周囲も含めたマーケットは18兆ドルにも及ぶという。しかし、障害者雇用に熱心だったり、障害者が使いやすい商品を展開したりしている企業は、全企業のうちわずか5%に過ぎないのが現実だと指摘する。

「この市場に先陣を切って取り組むジンズの姿勢は、日本全体に、また世界に新たなインパクトを与える」と垣内氏は期待を寄せる。

デジタル環境のバリアフリー化へ

様々なステークホルダーと連携し、「この製品を本当に必要な人に届けていきたい」とジンズは意気込む。

同社はこの日、創業の地である前橋市と包括連携協定を締結。協定には「高齢者や障害がある方などの支援に関すること」も含まれており、製品の普及促進に向けた連携を深めていく。前橋市の職員とともに、この製品を使ったeスポーツ大会をすでに実施したという。

価格は1万5000円。類似製品が5万円から20万円するなか、大幅に低価格化を実現した。これは「必要な人にどう届けるか」を重視し、必要最低限の機能に絞った結果だという。

「1人でも多くの人が自由にデジタルとつながり、できることが増える世界を目指している」と田中氏は力を込める。

日本は駅のバリアフリー化など物理的な環境整備では世界トップレベルだが、デジタル環境のバリアフリー化はまだ道半ばだ。わずか4グラムのこの小さなデバイスが、見えない壁を取り払い、新たな可能性を切り開く転換点となるかもしれない。

 

池田美樹 ( いけだ ・みき )
朝日新聞SDGs ACTION! 契約編集者。株式会社マガジンハウスで『Olive』『Hanako』『anan』『クロワッサン』などの雑誌編集者、米国テック会社のニュース編集者を経てフリーランスに。ウェルビーイング、テクノロジー、女性の働き方、旅などを主な取材テーマとする。

引用:朝日新聞SDGs ACTION!

Cでの広告掲載、
求人情報や研修会情報の掲載をお考えの方はこちらから
LATEST
MORE
FRIENDS

CのMEMBERに
なってくれませんか??

CのMEMBERになると、
オンラインコミュニティでの
MEMBER同士のおしゃべりや
限定コラムやメルマガを
読むことができます。
MEMBER限定のイベントに
参加も可能です!