世界最大のエレクトロニクスショー「CES」には毎回1400社を超えるスタートアップの出展がある。近年はその多くがメインフロアのひとつであるベネチアン・エキスポに集結する。今年のCESでもまた日本のスタートアップが来場者の関心を強く引きつけていた。
ベネチアン・エキスポは、CESが開催される米ラスベガス市内のリゾートホテルにあるコンベンションホールだ。全体で225万平米を超す展示エリアの内、およそ半分を占める1階のスペースがEureka Park(エウレカパーク)と名づけられ、世界各国からのスタートアップが軒を連ねる。
2025年は英国のスタートアップが抜け、フランス貿易投資庁ビジネスフランスが主催するフレンチテックの規模がやや縮小していたが、代わりにモロッコやウクライナからのスタートアップが増えた。韓国や台湾から多く集まったスタートアップの熱気もEureka Parkを包んだ。
広大なEureka Parkの会場内で最も強く存在感を放っていたのは日本のスタートアップだった。とりわけジェトロ(JETRO、日本貿易振興機構)が主催するJapanパビリオンには、毎年CESの中から優秀な企業の出展に贈られる「イノベーションアワード」に輝いた企業7社を含む、全31社の多種多様なスタートアップが参加した。
BionicM(バイオニックエム)は、モーターを内蔵する動力アシスト機能付きパワード義足「Bio Leg」を出展した。今年のCESで見事にベスト・オブ・イノベーションアワードを受賞している。東京大学からのスピンオフとして2018年に起業したファウンダー兼CEOの孫小軍氏は、日常から自身が義足を使っている。Bio Legはヒューマノイドロボティクスの技術を応用して人間の筋肉を再現しながら、滑らかな歩行動作をサポートする。
孫氏は約2年をかけて開発してきたBio Legを、まずは義肢装具研究の先進国であり、市場規模は43億ドル(約6800億円)以上におよぶとされる米国から展開する。2024年5月には米国の医療保険適用承認も取得した。
孫氏は自然な外観と歩行動作を実現するBio Legを、ユーザーの身体的な負担を軽くするだけでなく、自ら身体を動かしたくなるようなモチベーションの向上にも役立ててほしいと語る。
Jizai(ジザイ)はメルカリで生成AI担当役員を務めた石川佑樹氏が2024年に設立した、汎用型AIロボットの開発プラットフォームを提供するスタートアップだ。CESの会場では6本の脚を備える自走式AIロボット「Mi-Mo」(ミーモ)を披露した。ミーモは搭載するカメラで人間を認識して会話も交わせる。
同社の事業目的はAIとロボットのテクノロジーをつなぐ架け橋になり、AIロボットの社会実装を推進することにある。ミーモは2025年内にエンジニア向けの開発キットとして提供開始を予定している。AIモデルとロボットのハードウェアはどちらも自由にカスタマイズができる。同社テックリードの大嶋悠司氏は「AIの知見、ロボットの知見を持つ専門のエンジニアが個個のアイデアからAIロボットをより簡単に開発にできるプラットフォームを提供したい」のだとミーモを世に送り出す狙いを説いている。
Magic Shield(マジックシールド)は、元はヤマハ発動機でレーシング用バイクの開発に携わってきた、代表取締役CEOの下村明司氏が静岡県浜松市に立ち上げたスタートアップ。バイクレーサーを転倒時の衝撃から守るために開発した衝撃吸収素材を応用して、高齢者を転倒による怪我や骨折から守る床材「ころやわ」を開発した。日本では先に商品として展開されており、2024年の5月時点は600以上の医療機関・福祉施設が採用している。
下村氏が忍者道具の水蜘蛛から「ころやわ」のアイデアを得たことから、海外向けには「SHINOBI FLOOR」というキャッチーな名称にした。これから米国をはじめ7カ国に本格進出を目指す。最初は好奇心からブースに足を止めた来場者が、「ころやわ」の画期的な発想と高い技術力に触れた途端に表情を変えて真剣に下村氏の説明に耳を傾けていた様子が印象的だった。現在、同社は「ころやわ」にセンサーを内蔵して、転倒通知機能を持たせた新商品の開発を進めている。
大阪大学などで電子材料と半導体デバイスの研究開発に従事してきたCEOの李蕣里氏が2019年に立ち上げたElcyo(エルシオ)は、液晶レンズに基づく特殊なオートフォーカス方式のレンズを開発するスタートアップだ。
透明な基板の中に多数の液晶分子を封入した液晶レンズに、電圧変化を加えるとフォーカスが変わる。従来、液晶レンズはぶ厚くて視野が狭くなる課題を持っていた。エルシオは独自の技術で薄く口径の大きな液晶レンズに、球面レンズや非球面レンズを同心円状に分割して厚みを減らすフレネルレンズの原理を応用して薄型化を図った。
レンズは装着者の目の動きに合わせてフォーカスを自動で変えられることから、いわゆる老眼をサポートする遠近両用メガネのレンズに革新をもたらす可能性がある。同社はまず2025年末から来年頃に、XR/ARスマートグラスの視力補正用レンズアタッチメントの製品化を目指している。
CES 2025のJapanパビリオンに出展した各社は、経済産業省が推進する国内スタートアップ企業の育成プログラム「J-Startup」に参加しながら、世界で活躍するために力を付けてきた。ジェトロのイノベーション部次長である樽谷範哉氏は、2018年のCESに初めてJapanパビリオンを出展して以来、多くのスタートアップに近く寄り添いながら支援をしてきた。
023年からJapanパビリオンのデザインをスタイリッシュに一新して、中央に設けたステージでは3日間に渡って、出展31社のイントロダクションとピッチセッションを精力的に開催した。31社の全ブースに掲げられたバナー(看板)には、出展する企業が何を得意とする会社なのか、立ち寄った来場者がひと目見てわかるようにキャッチコピーを入れた。
昨今ではAIに新素材、生物学や宇宙科学などの深い知見に基づき社会的課題の解決を図るディープテックに多くの関心が向けられている。元は日本の企業や研究開発機関が得意とする領域でもあることから、樽谷氏によると日本のディープテック系のスタートアップにいま米国の投資家たちが熱い視線を注いでいるという。
さらに日本で実力をつけてから海外を目指すスタートアップだけでなく、最初から世界市場に打って出るスタートアップも増えたそうだ。特にコロナ禍以降は人材の流動性が高まり、優秀な人材が大企業だけでなくスタートアップでも実力を発揮している。そしてビデオ会議ツールの普及により、海外にいる人々と頻繁にコミュニケーションが取れるようになったことも世界進出を目指す起業家の背中を押しているのではないかと樽谷氏は語る。
Japanパビリオンは2025年もCESに出展する。次回以降はブースに足を運ぶ来場者に、出展するスタートアップが現在いるステージをひと目でわかりやすく見せて、効率よくマッチングを促すことも検討しているそうだ。製品やサービスのプロトタイピング、あるいはローンチ後のステージでは必要なコミュニケーションの内容が異なるからだ。
CESを主催するCTA(全米民生技術協会)が設ける規定により、ひとつのスタートアップがEureka Parkに出展できる機会は2年・2回までに限られている。この場所から巣立って、実力を付けて大きくなってから、ベネチアン・エキスポに単独で大きなブースを構える企業もある。Japanパビリオンから世界に羽ばたく企業が生まれることを期待したい。
引用:Forbes JAPAN
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