緑茶の摂取頻度が高い高齢者はフレイルリスクが低いという関連が、日本人を対象とする研究から明らかになった。地域住民を対象に行われている疫学研究「亀岡スタディ」からの知見であり、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の南里妃名子氏らによる論文が「Nutrients」に掲載された。
緑茶に関してはこれまでに、抗肥満作用や抗癌作用、抗糖尿病作用、抗インフルエンザ作用など、さまざまな作用が報告されている。そして、緑茶によりリスクが抑制される可能性のある状態の一つとして、新たにフレイルが加わった。フレイルは種々のストレスへの耐性が低下した「要介護予備群」の状態のことで、意図しない体重減少などが生じ、死亡リスクの上昇とも関連することが報告されている。
緑茶のもつさまざまな疾患に対する保護作用の多くは、豊富に含まれているポリフェノールの一種であるカテキンやビタミンCなどの抗酸化物質が関与していると考えられている。一方、海外からは、抗酸化物質の豊富な果物などの摂取量が多いことを特徴とする地中海食の遵守スコアが高いことが、身体的フレイルのリスク低下と関連していると報告されており、緑茶の摂取量が多いこともフレイルリスクを下げる可能性がある。ただし、そのエビデンスはまだないことから、南里氏らは亀岡スタディのデータを用いた検証を行った。
亀岡スタディは、介護予防に関するエビデンスの収集を目的に、京都府亀岡市に居住する65歳以上の高齢者を対象として2011年から行われている前向きコホート研究であり、1万8,000人以上が参加している。今回の研究ではそのうち、要支援・介護認定を受けている人やフレイル評価が欠落していた人を除外し、5,668人(男性48.8%)を対象として、登録時のデータを横断的に解析した。
緑茶の摂取頻度については、食事摂取頻度調査票(Food Frequency Questionnaire;FFQ)の回答を基に、「ほとんど飲まない」、「1日1杯未満」、「1日1~2杯」、「1日3杯以上」に分類した。
緑茶の摂取頻度と他の生活習慣との関連をみると、男性では、緑茶摂取頻度が高いほど高齢で、摂取エネルギーと果物や野菜の摂取頻度が高く、コーヒーを1日1杯以上飲む人が多く、現喫煙者率は低いという関連があった(いずれも傾向性p<0.001)。BMIは緑茶摂取頻度と有意な関連がなく、習慣的飲酒者は緑茶摂取頻度が高い群で少ない傾向があったが有意ではなかった(傾向性p=0.054)。
女性では、緑茶摂取頻度が高いほうが若年という関連(傾向性p=0.006)がみられた点は男性と異なっていたが、他の生活習慣との関連については男性と同様だった。
フレイルについては、厚生労働省の基本チェックリストを用いて、25点中7点以上の場合にフレイルと定義した。研究登録時の基本チェックリストのスコアの平均は、男性5.0点、女性5.1点であり、フレイル(スコア7点以上)の割合は同順に29.3%、30.6%だった。
フレイルリスクに影響を与え得る因子(年齢、BMI、摂取エネルギー量、喫煙・飲酒習慣、コーヒー摂取量など)を調整後、以下のように男性・女性ともに緑茶摂取頻度が高いほどフレイル該当者が有意に少ないという関連が認められた。
女性では「ほとんど飲まない」群を基準として、緑茶の摂取頻度が1日1杯未満でOR0.67(95%CI;0.49~0.92)、1日1~2杯でOR0.51(同0.37~0.70)、1日3杯以上ではOR0.60(0.44~0.81)だった(傾向性p<0.01)。男性では、「ほとんど飲まない」群を基準として、1日3杯以上飲む群ではOR0.71(0.54~0.94)だった(傾向性p=0.02)。
次に、75歳未満/以上で層別化した解析を施行した結果、女性では前期/後期高齢者ともに緑茶摂取頻度とフレイルとの間に有意な負の関連が確認され、年齢と緑茶摂取との間に有意な交互作用は認められなかった(交互作用p=0.15)。それに対して男性では有意な交互作用が観察され(交互作用p=0.01)、75歳以上の後期高齢者でのみ緑茶摂取量との関連が有意だった。
このように、全体的に男性よりも女性において、緑茶摂取によるフレイルに対するより高い保護作用のある可能性が示された。このことに関して、著者らは、「女性は閉経後、女性ホルモンの分泌低下とともに全身の慢性炎症傾向が強まり、体蛋白の異化が亢進することが報告されている。抗酸化物質は、慢性炎症などの酸化ストレス関連の危険因子を持つ人はそうでない人に比べて生物学的利用能が高い可能性が報告されていることから、抗酸化物質を多く含む緑茶を習慣的に摂取することで、女性のフレイル発症を早い段階から予防できる可能性があるのではないか」との考察を加えている。
続いて、基本チェックリストの下位尺度(手段的日常生活動作〈IADL〉、身体機能、栄養・口腔機能状態、閉じこもり、認知機能、うつの7カテゴリー)別に緑茶摂取頻度との関連を検討。その結果、男性では、認知機能や口腔機能との負の関連が認められた(いずれも傾向性p=0.02)。女性では、認知機能と口腔機能に加えて、IADLも緑茶摂取頻度と負の関連が認められ(いずれも傾向性p<0.01)、さらに運動機能との有意な負の関連も認められた(傾向性p=0.01)。
これらの結果から著者らは、「緑茶の摂取頻度が高いほど、フレイル有病率が低くなる傾向があることが確認された」と結論付けたうえで、「縦断研究による因果関係の確認が求められる」とまとめている。
原題のタイトルは、「The Association between Habitual Green Tea Consumption and Comprehensive Frailty as Assessed by Kihon Checklist Indexes among an Older Japanese Population」。〔Nutrients. 2021 Nov 19;13(11):4149〕
原文はこちら(MDPI)
出典:スポーツ栄養Web
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