65歳以上の100人に1人がかかるというパーキンソン病。記憶力の低下を主症状とする認知症と違い、体の運動障害が中心となる同疾患は、リハビリでいかに進行を遅らせるかがカギだ。近年、こうした特定疾患に対応した高齢者住宅の供給が各地で進んでいる。昨年12月に南千里に開所した「オリーブ・南千里」もその一つだ。関西企業唯一の専門施設として、100平方㍍ものリハビリルームや24時間のサポート体制に加え、高級ホテル並みの設備充実を謳(うた)う同施設を取材した。(西山美沙希)
高齢化が進む日本国内で、急増しているパーキンソン病。脳が出す指令がうまく伝わらず、思うように動けなくなり、手足の震えや筋肉のこわばりなどが見られる進行性の神経疾患の一種だ。65歳以上の100人に1人が発症すると言われている。 寝たきりなど生活に支障が出るというイメージがあるが、治療技術の発達で今では早期発見・早期治療介入で進行を遅らせることができ、「天寿を全うできる病気」と言えるようになった。 「当施設は『入院では受け入れてもらえない』といった悩みや、『生活が不自由なのに、自宅で安全に暮らせるのか』などの不安を抱えている神経難病の方にとって必要な施設として開設された。また、普段から献身的に看病する入居者家族の負担を軽減し、守る意味もある」と施設長の上野誠司さん。 また、定期的な自宅復帰を目指し、リハビリや治療への意欲を高められることも大きな特徴だ。 上野さんは「パーキンソン病はリハビリや医療面での丁寧なサポートによって、長く元気で過ごすことが可能な病気。普段は施設で過ごし、定期的に2、3日自宅に帰るという生活を送る人もいる。自宅で家族と過ごすことが張り合いになり、リハビリにも良い作用をもたらしていると感じる」と続ける。
同施設が最も力を入れているのがリハビリだ。100平方㍍以上の広いリハビリルームには、入居者の要介護度に応じて最適なものが選べるように、さまざまな機器を導入。天井から体を支えて体重の負荷を軽減し、歩行の練習ができるレール式の免荷装置などを設けている。 また、階段や砂利道などを設置したガーデンリハビリもある。実際の暮らしの中で遭遇する環境を設け、館外でもしっかりと歩けるようにするためだ。 リハビリは常勤の理学療法士や作業療法士がサポート。各自に最適なプログラムを用意し、マンツーマンで指導する。食事については摂食・嚥下リハビリテーション学会に所属するリハビリスタッフが専門的な視点から支援する。
館内には、看護師や介護士が24時間常駐。建物内に訪問看護ステーションを併設しており、健康管理と日常生活のサポートを行う。介護が必要な人は、別途介護保険サービスを利用することで支援してもらえる。 また、提携医療機関の神経内科医や内科医、歯科医による訪問診療も。訪問には薬剤師も同行し、パーキンソン病にとって重要な服薬管理や投薬調整などを医師や看護師と連携して行う。暮らしの困りごとなどには館内のコンシェルジュが対応する。 これらの介護・看護サービスも含め、月20万円前後というリーズナブルな入居費も大きな魅力だ。
同施設はホテルが運営母体ということもあり、介護の現場にもホテル事業で培ったホスピタリティを取り入れた。パーキンソン病は進行性の病気だからこそ、介護の現場では日々の変化への適応が重要になる。病症や本人固有の特徴をよく理解し、適切な対応を心得たスタッフが在籍し、日々の小さな変化を見逃さない。 また、共用施設として天然温泉の浴場や機械浴室も完備。イオン水や光触媒式空気清浄装置を採用し、居室の天井には調湿効果のある珪藻土を使用するなど、快適で健康的な環境へも配慮している。 毎日の食事も米からこだわり、施設内調理で栄養管理も徹底。月に一度のごちそう選択食(別途追加500円)でうなぎや大きなエビフライが食べられることも入居者にとって楽しみの一つだ。
施設長の上野さんは「入居者は同じ病気で似た境遇の人たち。分かり合える仲間という感覚で、お互いに打ち解けた話ができるのも特徴」と語る。 以前、見学に来たという進行性核上性麻痺の人は「当施設には同じ疾患を持つ入居者が4人いる。同じ悩みの仲間と話せることがどんなに心強いかと入居を決められた」と上野さん。難病の場合、同じ境遇の人は周囲に少ない。「悩みを共有できることは大きな心の支えになるように感じている」と続ける。入居者同士が共感し合い落ち着ける環境もポイントといえよう。 見学は要事前予約で随時。リハビリ体験付き見学も募集している(※要事前電話予約)。
問い合わせはフリーダイヤル(0120)784850、スーパー・コート介護相談室へ(午前9時~午後5時45分、無休)。
引用:大阪日日新聞
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