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将来へ「新しいこと挑戦」 筑波技術大で本年度81人入学 聴覚・視覚障害者、唯一の国立大

Apr 28, 2024
聴覚障害・視覚障害がある人のための唯一の国立大、筑波技術大(茨城県つくば市)に2024年度、大学院生を含めた計81人が新たに入学した。天久保キャンパス(同市天久保4)で5日に入学式が行われ、石原保志学長が手話と、唇の動きで言葉を読み取る口話で式辞を述べた。学生らはそれぞれの将来への希望を胸に、寄宿舎での大学生活をスタートさせた。(青木孝行)
 筑波技術大は4年制で、聴覚障害者が学ぶ産業技術学部(天久保キャンパス)と、視覚障害者向けの保健科学部(春日キャンパス=同市春日4)がある。現在の学生数は計321人(大学院19人)。学生は在学中、キャンパス内にある寄宿舎で暮らす。
 5日の入学式で、石原学長は「この大学に入ることを決めたのは誰ですか。皆さん自身が決めたんです」と語りかけた。「社会人になれば壁にぶつかる。壁を乗り越えるためには自分で決めたという意思が必要になってくる。大学にいる間は、その意思決定の気持ちを意識してください」とアドバイスした。
 大学では少人数教育を行っている。式辞で石原学長は続けて「全ての学生が成長できる環境が整備されている。教え方も障害に配慮している。必ず皆さんの能力は高まると思う」と激励。障害のある人同士、キャンパスでの交流にも期待した。
新入生を代表し、聴覚障害がある産業技術学部の仲田恭乃(よしの)さん(18)=笠間市=が「多様な考え方を育て、コミュニケーション能力を高めたい。共生社会が求められる今、私たちは新たなことに挑戦していく」と誓った。
視覚障害者で保健科学部代表の白浜琥太郎さん(同)=横浜市金沢区=は、人に何かを教えることが得意という。式のあいさつでは「中学生の頃から、数学教師になりたいと考えてきた。しかし筑波技術大の存在を知り、他の道もあるのではないか考えさせられている。この4年間で将来について決断したい」と語った。

◆手話と口話の学生生活 教える側も配慮、学業に専念

 筑波技術大では、誰でも手話と口話でコミュニケーションするのが当たり前だ。産業技術学部の若月大輔教授(48)=福祉情報工学=は「他大学では障害のある学生には介助者が必要。学生は『お荷物になっているのでは』と悩み、物事を頼みづらい気持ちになる」と話す。
 その点で、筑波技術大は学生が学業に専念できる環境といえる。若月さんは教える側の配慮として「聴覚障害のある学生が理解したふりをしないよう、顔を見て本当に理解したかを問い返すようにしている」という。
 視覚障害のある学生は学ぶうえで「触る」「聞く」を大事にしている。寄宿舎生活なので、まずは一人で買い物ができるよう、何がどこにあるか「脳内地図」に描くことから学生生活を始める。学業では大半で点字の教科書を使用する。
 来年11月に東京都内を中心に開催される聴覚障害者の国際スポーツ大会「デフリンピック」では、筑波技術大の学生のデザインが大会エンブレムに採用された。若月さんは「本学には切っても切れない大会。デフリンピックが社会に広く認知されるよう成功させたい」と期待した。(青木孝行)

<筑波技術大> 同大によると、前身は聴覚、視覚障害者のための高等教育機関として1987年に設立された3年制の短期大学。2005年10月に4年制大学となり、10年4月に大学院もできた。学部は学習内容や教え方により分かれる。産業技術学部は産業情報学科と総合デザイン学科があり、主な進路は製造や情報通信、建設、金融業など。保健科学部の保健学科では鍼灸(しんきゅう)学や理学療法を学ぶ。情報システム学科もあり、中学・高校の数学教諭1種免許が取得可能。

引用:東京新聞

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