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記者が見た刑務所の今 受刑者の高齢化で「機能向上作業」の試行広がる 尾道刑務支所

Mar 27, 2024

受刑者の高齢化が進む刑務所。身体や認知機能の低下が見られる人も少なくない中、「機能向上作業」と呼ばれる取り組みが各地で試行されている。指先の動きを鍛えたり「脳トレ」に励んだりして、社会復帰に不可欠な機能の維持、改善を図る。尾道刑務支所(広島県尾道市)で公開された様子を取材し、刑事施設の今に触れた。 関連のグラフなど

2月末、尾道刑務支所の実習室。約30人が包装紙の厚紙折りなどに励む横で、70代の男性が新聞紙を丸めた棒を手に体を左右に曲げたり、棒を投げ上げたりしていた。棒をつかめず床に落としてしまい「難しい」とこぼす男性。担当の作業療法士は「一緒にゆっくりやってみましょう」と声をかけた。

 

中国地方の他の施設に先駆け、2022年8月から実践する機能向上作業。丸いシールを枠内に貼る、折り紙を見本通りに折るといった内容もある。日付や季節が時々分からなくなるという男性は「手先の動きが良くなり、次はこうしようと手順が考えられるようになった。癒やしの時間でもある」と話した。

 

日本社会の急速な高齢化の波は刑務所も無縁ではない。法務省の犯罪白書によると、刑務所などの刑事施設に新たに入所する受刑者数の減少が続く中、65歳以上の割合は上昇。22年は14・0%で20年前の3・6%から大幅に拡大した。介護施設と同様に生活の支援が必要な人も増えている。

 

現状を踏まえ同省矯正局は20年7月、府中刑務所(東京)で機能向上作業の試行を始めた。受刑者に義務付けられる「刑務作業」と位置付け、現在は同支所を含む全国11カ所を指定。4月から広島刑務所(広島市中区)も対象となる。

 

高齢受刑者のトレーニング自体は珍しくなく、同支所でもこれまで月1回の1時間、数十人単位でリズム体操などに取り組んできた。これに対し機能向上作業は作業療法士が聞き取りを経て対象者を特定。週1回の6時間を費やし、個人の課題に応じた集中的なプログラムを実践するという。

 

25年6月には、刑罰の懲役と禁錮を一本化して「拘禁刑」を創設する改正刑法が施行される。刑務作業が義務ではなくなり、受刑者の年齢や特性に合わせた柔軟な処遇が可能になる。機能向上作業は法改正を見据えた対応だ。

 

ただ、改善更生は容易ではない。犯罪白書によると、21年に出所した高齢者のうち、22年末までの2年以内に罪を犯して再び刑務所に入った割合(再入率)は19・7%に上る。  刑務所での勤務経験があり、再犯防止の研究を進める龍谷大法学部の浜井浩一教授(犯罪学)は「受刑者の自信につながり、社会復帰の準備ができる」と機能向上作業を評価する。

 

一方で「社会にあって刑務所にないものは孤立。刑務所と社会の生活が近いものでないと、刑務所に戻った方がいいと思ってしまう」と強調。いかに社会での孤立を防ぐかが、再犯防止の鍵を握ると指摘する。

 

引用:中国新聞

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