体の性別が女性であることに違和感を持つ中高生のため、「胸を平たんに見せる下着」を1年半かけて製作した上田のぞみさん(東京・東京大学教育学部附属中等教育学校6年=高校3年)。下着に込めた思いや、完成に至るまでの努力を聞いた。(文・写真 黒澤真紀)
上田さんが開発した「胸を平たんに見せる下着」は、体の性別が女性であることに違和感を持つ中高生が胸のふくらみを平らに見せられる下着だ。
すでに胸を目立たなくさせるブラジャーは商品として売られているが、「圧迫感、蒸れ、息苦しさがある」「服の上から透けるのが嫌」など既製品を使ってみて感じる改善点を中高生に聞き、意見を取り入れ製作した。
胸の膨らみを目立たなくする「胸つぶし」とタンクトップがセットで、肩のラインで縫い合わされている。胸つぶしの上からタンクトップを重ね着するかたちだ。
小学6年のときにLGBTの意味を知り、関心を持った。中学1年生になり、学校の総合的な学習の時間でトランスジェンダーの人の講演を聞き、さらに詳しく知りたいと思ったという。
「生まれた時の性別と自分の認識する性別が異なっている人が、精神的な面や学校生活、就職活動など、さまざまな場面でつらい思いをしたと聞いて、私に何かできないかと考えるようになりました」。インターネットやX(旧Twitter)、漫画などで情報収集し、当事者が何に困っているのかを調べ始めた。
調べていくうちに、知り合いから「胸が膨らんでいるのに違和感を持ち、着けられる下着がなく困っている人がいる」と聞いた。胸の膨らみがあると、周りから「女性である」と思われ、自分の体を見てもつらくなる。この課題を解決したいと、同校で約2年間かけて取り組む「卒業研究」として「胸を平たんに見せる下着」の製作に取り組むことに決めた。
先行研究がなかったので、既存の商品で胸をつぶせる効果がありそうなものを10商品以上試着したり、下着店の店員に話を聞いたりして調べた。「下着メーカー8社にメールで協力依頼をしたところ、グンゼ株式会社さんが協力を申し出てくれました」
グンゼの担当者2人とオンラインでミーティングを重ね、サンプル作成を進めた。上田さんはものづくりが好きで、3歳から中学1年まで絵画教室に通い、絵を描くのも得意。伝えたいイメージをコメントつきのイラストにし、グンゼの担当者に見せながら説明した。衣服の知識はなかったものの、「全体に使う生地はメッシュタイプでストレッチ性のある『パワーネット』にして、胸は分厚く伸縮性がない不織布を使おう」などと教えてもらいながら話し合いを重ねた。
サンプルの試着には、トランスジェンダーの同級生と、性的マイノリティーの交流会で出会った中学生に協力してもらった。協力者探しには苦労したといい、「性自認のことはデリケートなこと」だと実感したという。
サンプル製作を3回行った。トランスジェンダーの同級生などに着用してもらい、納得のいく下着が完成。「着心地、洗濯のしやすさも含め、最高のものが出来ました」
こだわったのは「胸の段差をなくすこと」と「下着のホックが背後から見えないようにすること」の2点。背中のホックはタンクトップで隠れるつくりなのでホックが透けず、周囲の人が見て「女性用の下着を着けている」ことが分からないように工夫した。胸のトップとおなかの段差は、パットの効果で目立たないため、限りなく胸が目立たない。
見え方だけでなく着心地の良さも自慢だ。胸つぶしには通気性の良いメッシュ生地を採用し、パットも簡単に取り外して洗濯できる。ホックは3つ付いているため安定性があり、着ける人の体形に合わせて3段階に調整できる。
「胸をつぶせる下着」は、中高生を対象にした自由研究の全国大会「自由すぎる研究EXPO 2023」(トモノカイ主催)で、1469件の応募の中から金賞と特別賞に選ばれた。斬新な発想と、企業と協力して製作に挑戦した行動力が高く評価された。
「研究を通じて、アクションを起こすまでのハードルが低くなった。行動力がついたと思う」と自身の成長を感じている。「大学では社会福祉を学び、精神疾患を持つ人や高齢者の支援をしたい。精神保健福祉士の資格取得も目指している」と将来の夢を語った。
引用:高校生新聞
連載:編集部インタビュー
理学療法士・柔道整復師・鍼灸師のトリプルライセンス キャリアアップを考える
厚生労働省は2019年に「2040年には理学療法士と作業療法士は供給…
2024.11.15 UP
連載:編集部インタビュー
大量離職からのV字回復 「スタッフとその家族も守る」医師と理学療法士の兄弟が経営再建に挑む
介護スタッフの人材不足は深刻な社会問題となっており、介護事業者の倒産…
2024.10.23 UP
連載:国際福祉機器展2024
TOYOTAの電動車椅子がすごい!! 国際福祉機器展2024 取材レポートVol. 2
2024年10月2日〜4日に東京ビッグサイトで開催されました第51回…
2024.10.09 UP
連載:国際福祉機器展2024
リハビリ専門職は知ってなきゃダメ!? 介助犬って何? 国際福祉機器展2024 取材レポートVol. 1
2024年10月2日〜4日に東京ビッグサイトで開催され…
2024.10.09 UP
連載:編集部記事
理学療法士と作業療法士の違いとは?
理学療法士と作業療法士の法的な違いとは? 理学療法士と作業療法士の法…
2024.09.23 UP
連載:編集部インタビュー
LGBTQ+ 医療現場での対応を考える
ゲスト:中西 純(なかにし じゅん)さん 理学療法士。都内の総合病院…
2024.09.13 UP
連載:編集部インタビュー
理学療法士・柔道整復師・鍼灸師のトリプルライセンス キャ…
厚生労働省は2019年に「2040年には理学療法士と作業療法士は供給…
2024.11.15 UP
連載:編集部インタビュー
大量離職からのV字回復 「スタッフとその家族も守る」医師…
介護スタッフの人材不足は深刻な社会問題となっており、介護事業者の倒産…
2024.10.23 UP
連載:国際福祉機器展2024
TOYOTAの電動車椅子がすごい!! 国際福祉機器展20…
2024年10月2日〜4日に東京ビッグサイトで開催されました第51回…
2024.10.09 UP
連載:国際福祉機器展2024
リハビリ専門職は知ってなきゃダメ!? 介助犬って何? 国…
2024年10月2日〜4日に東京ビッグサイトで開催され…
2024.10.09 UP
連載:編集部記事
理学療法士と作業療法士の違いとは?
理学療法士と作業療法士の法的な違いとは? 理学療法士と作業療法士の法…
2024.09.23 UP
連載:編集部インタビュー
LGBTQ+ 医療現場での対応を考える
ゲスト:中西 純(なかにし じゅん)さん 理学療法士。都内の総合病院…
2024.09.13 UP
CのMEMBERになると、
オンラインコミュニティでの
MEMBER同士のおしゃべりや
限定コラムやメルマガを
読むことができます。
MEMBER限定のイベントに
参加も可能です!