暴力を受けて“加害者”に「なる人」と「ならない人」 “刑務所”取材続けた映画監督が問う受刑者の更生のあり方

C magazine for the PT OT ST

暴力を受けて“加害者”に「なる人」と「ならない人」 “刑務所”取材続けた映画監督が問う受刑者の更生のあり方

Dec 12, 2023

「被害者」の行きつく先

 

 

 

「犯罪をしなくなる」は更生の一要素

■日本では近年、少年法改正(有期刑の上限が懲役15年から大人と同じ30年に引き上げ)など刑事事件における罪の厳罰化が進んでいます。加害者の更生について、どのようにお考えですか? 坂上:一般に更生・矯正は、刑務所に来た人が犯罪をしないで生きていけるようにするというのが目的だと思うんです。だけど、私が取材しているアメリカのTCでは、犯罪をしなくなるのは、更生のひとつの要素でしかありません。 TCは犯罪をしない人間にするのではなく、人間として成長し続けるのを目的としていて、更生ではなく「ハビリテーション」と呼ばれています。リハビリテーション(再び適した状態になること)の「リ(Re/再び)」を取って「ハビリテーション」。犯罪など間違った生き方を選んでいた状態に戻すのではなくて、今までの生き方を見直して、新たに作り直さなくちゃいけない。更生は刑務所で終わるわけじゃなくて、ずっと続いていくわけです。その人が生きていく限り。

 

■TCでは具体的にどのように「ハビリテーション」をするのか、『プリズン・サークル』でも描かれていますが、改めて教えてください。 坂上:対話を通して、ハビリテーションをしていくという感じですね。 TCを取材していると、「語る」ということは人間を豊かにすることだと感じます。犯罪をした人だけじゃなくて、人間がつながり合うためには、語り合うこと、対話が基本だと思うんです。でも相手を信頼しないと大切なことって話せないじゃないですか。なので、TCでは対話をするために、「サンクチュアリ」と呼ばれる、安全な場を用意する。と言っても、「人の話をばかにしない」などの約束があるだけで、誰かが語ったことに対して、なんでもOKと肯定するわけではありません。 アルコール依存症などの自助グループでは、誰かが語ったことにコメントしちゃいけないという非介入の原則がありますが、TCではみんなコメントします。もちろん首を傾げたくなるコメントもありますよ。特に最初の頃は、説教くさいコメントもあったりします。説教とか批判にしか慣れてないから、そうなっちゃうんでしょうね。でも、いろんな人の語りを聞き、自分の語りが誰かに受け止められる経験を重ねるうちに、「そういう風に受け止めるんだ」と他の人の受け止め方も学ぶ。最低6か月、長い人で2年ぐらい、そうやって良い人間関係を築く方法を学びます。

 

■日本の刑務所でTCが行われているのは現在『プリズン・サークル』の舞台となった1か所だけですね。すぐに多くの施設にTCを導入するのは難しいと思いますが、坂上さんが刑務所や少年院に求めていることはありますか? 坂上:まず、施設の中をもっと社会に近い形にしてほしいです。 私は少年院でワークショップをしているのですが、彼らは話す時、教官に対して「先生、しゃべってもいいですか?」と全部許可をとるんです。少年院ではプライバシーの保護とかいう理由で、年齢も学年も、出身地も、家族のことも、犯した非行も少年同士でしゃべっちゃいけないから。 でも、外の社会で話す時にいちいち許可を取っていたら、普通に生きていけないじゃないですか。社会ではいろんなことがあって、だまそうとする人や厳しい人だっている。外ではそれに対応しなきゃいけないんです。刑務所や少年院の中でこそ、彼らは語り、人間関係の築き方を学ぶべきだと思います。刑務所の中では号令かけて沈黙させておいて、外に出たら自立して、まともに生きなさいという今の対応は矛盾しているし、逆効果だと思います。

被害者支援「伝達制度」への“不安”

 

 

 

 

引用:弁護士JP

Cでの広告掲載、
求人情報や研修会情報の掲載をお考えの方はこちらから
LATEST
MORE
FRIENDS

CのMEMBERに
なってくれませんか??

CのMEMBERになると、
オンラインコミュニティでの
MEMBER同士のおしゃべりや
限定コラムやメルマガを
読むことができます。
MEMBER限定のイベントに
参加も可能です!