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福岡を拠点に活動する女子硬式野球のクラブチームがある。名前は九州ハニーズ。メンバーの多くは働きながらプレーしており、選手16人の職種や肩書は多種多様だ。病院勤務の柔道整復師や理学療法士のほか、土木会社や健康食品通信販売会社の社員、はたまた太宰府天満宮の録事（ろくじ）なる立場で働く選手も。経済的に決して恵まれない環境下で懸命に働き、野球に打ち込むのは、九州の女子野球を盛り上げたいという強い思いがあるからだ。 【写真はこちら】9選手が職場で働く様子をズラリ公開

■あふれる野球愛

　九州ハニーズがユーチューブにアップしたチーム紹介動画を見ると、彼女たちがいかに野球を愛しているかが伝わる。映像はグラウンドで白球を追う選手たちの機敏なプレー集で始まり、主力2選手がチーム結成に動いた思いを掛け合いのようにして語るインタビューに切り替わる。 　川端友紀内野手（34）「女子野球を発展させていくために、私たちに何ができるのか考えたときに…」 　楢岡美和外野手（28）「チームを作りたいというのが（川端さんの）一つの夢というか、目標でもあったみたいなので…」 　川端「チームを立ち上げることになりました」 　楢岡「一緒にやろうっていう風になりました」 　2人はともに日本代表。川端はヤクルト川端慎吾選手の妹で、女子野球ワールドカップ（W杯）に4度出場。女子プロ野球リーグでMVP、首位打者、ベストナインなど数々のタイトルに輝いた女子野球界のレジェンドだ。 　そんな2人が昨春、宮地克彦監督とともに地縁のない九州でチームを立ち上げた。関東や関西に比べて後れを取る九州の女子野球の底上げを図るという高い理想があった。 　「野球熱の高い九州で応援され、愛されるチームを築き、女子野球を盛り上げる」 　「本気で野球に打ち込める環境をつくる」 　「引退後も指導者として活躍できる人材を育てる」 　チームはこんな目標を掲げる。

■職場では別の顔

　とはいえ、課題は山積している。何より野球に打ち込むための経済的な基盤づくりが急務だ。 　川端、楢岡は野球に特化したスポーツジム「KOBES」（福岡市博多区麦野）でコーチとして勤務。 　他の選手は、地元のさまざまな協力企業で働きながらプレーしている。勤務は原則的には平日3.5日間。残りは練習や試合、休暇に充てる。高い給料はもらえていないが、勤務先の理解なしには活動は成り立たないのが現状だ。 　川端は言う。「楢岡選手と宮地監督と話し合い、今の形にした。野球をするだけでお金をもらえるのは理想だが、今の女子野球でそれは難しい。選手としても引退した後にパソコンも触れない、社会人として必要な受け答えもできないでは本人も困る。今は野球も仕事も頑張り、人として成長することを目指している」 　「筑紫ガス」「太宰府天満宮」「ダスキンふくはく」。選手のユニホームの脇腹には、各自の勤務先のロゴマークを表示している。選手の勤務先が全て異なるのは、一つの企業がチームを持ち、全選手を雇用するのは難しいから。 　宮地監督は「野球を続けるためには、いろいろな人に支えてもらわなくてはいけない。ちゃんと会社の戦力になります、そしてちゃんと野球もやりますという姿勢を見せ続けていかないといけない」と話す。 　九州ハニーズは福岡県大野城市と連携協定を結んでいる。川端らは香港から帰国後も市内の少年野球教室で指導に当たるなど地域貢献活動にも汗を流す。 　小島也弥内野手（27）は太宰府天満宮で白衣はかまに身を包み、録事（ろくじ）と呼ばれる事務職に就いている。7月1、2日に福岡県営春日公園野球場で戦う女子硬式野球・九州リーグに向けて、こう意気込む。「スポンサー企業で働く同僚たちに自分たちの試合を見てもらえるいい機会。普段の働く姿と違う部分を見せられたら、もっと応援してもらえるかな」

引用：OTTO