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ダイハツはなぜ女性に選ばれるのか? ユーザー率なんと7割、「かわいい」だけじゃない車づくりの本質とは

Mar 25, 2023

軽自動車販売トップのダイハツ工業(大阪府池田市)は現在、顧客の約7割を女性が占めている。いったいなぜか。

 

さまざまな年代に愛されるロングセラー車「タント」(画像:ダイハツ工業)

軽自動車販売トップのダイハツ工業(大阪府池田市)は現在、顧客の約7割を女性が占めている。

 その理由のひとつは、豊富なラインアップだ。2016年に発売された「ムーヴキャンバス」は、個性的な外観と収納能力の高さを持つ内装で瞬く間に注目を集めた。累計販売台数は約38万台で、購入ユーザーの約9割が女性だった。ほかにも「ムーヴ」「タント」も長い間売れている。見た目や機能の異なる車種のラインアップが、多様な女性層から受けている。

同社は2005(平成17)年、「ダイハツ カフェプロジェクト」をスタート。店内にカフェ要素を設け、温かみがある空間づくりをPRした。来店客の7割が女性であったため、女性が定期点検やメンテナンスなどで何度来店しても心地よい感じられる店舗を目指した。また、コーヒーや全国各地のスイーツも用意した。

プロジェクトを始めた翌2006年には、前年と比べて顧客満足度が上昇。全国軽自動車協会連合会の「2006年度 新車販売台数 軽四輪車総台数 占拠率」で、それまでトップだったスズキ自動車を超えた。

自動車サブスクサービス「定額カルモくん」を運営するナイル(東京都品川区)が行ったアンケート調査(10~60代女性が対象)によると、車を購入する決め手は

・価格
・見た目

が上位を占めた。

ダイハツはメインの女性ターゲット層に向けた、かわいらしいモデルを続々と発売。前述のムーブ キャンバスもそのひとつである。2022年にフルモデルチェンジを行った際も、先代で好評だったかわいらしいデザインと個性的なカラーリングを継承した。

初代のカラーラインアップは、優しげな色合いを2色組み合わせた「ツートーン」のみだった。母親と車を共用する20代の女性をターゲットに設定し、「母と娘で車を共有すること」というコンセプトで発売した。しかし実際は「父親や息子も使用することがある」ということから、幅広いユーザーが使えるように全体をワントーンで仕上げた単色仕様「セオリー」も発売されることになった。

もちろん女性受けがよいパステル系のボディカラーも用意。先代と同じく「かわいらしい」と口コミが広がり、発売後1か月で2万6000台を達成している。

ムーヴキャンバスの購入ユーザーは約9割が女性、そのうち約35%が若年層という統計があった。ただもちろん1割のユーザーにも配慮した、老若男女にとって乗りやすい設計であることが求められる。

 そこでダイハツはユーザーに安心感を与えられるように、さまざまな試みを実施した。数あるモデルのなかでタントに焦点を当てて紹介したい。

タントで注目すべきものは「ミラクルオープンドア」だ。これは、2007(平成19)年発売の2代目タントで初めて採用された。助手席側のフロントドアとリアドアの間にある柱(ピラー)を撤去したことで、乗員の乗降がスムーズになるだけでなく、チャイルドシートへ座らせたり、子どもの着替えを行ったりなど、スペースを幅広く使えるようになった。

タントのこだわりはそれだけではない。一般的な標準仕様とは異なる、乗り降りしやすい手すりやステップなど、高齢者が楽に利用できる福祉車両を別途用意している。

ダイハツは幅広いニーズに応えるべく、計画初期段階において運動学を研究する大学や病院の理学療法士、さらには開発地の地元に住む高齢者とも共同で開発。初期段階から標準車/福祉車両での一体開発をおこなっているのだ。そのため手すりやステップなどの高齢者向けオプションを豊富に用意し、低価格で提供できる。

このように、子ども連れの親からお年寄りまで、誰でも快適で使える仕様の開発に努めている。

2020年に発売された「ミラ トコット」。同車の開発は20~30代の女性社員を中心に進められた。初めて車を購入する若い女性をメインターゲットにし、ただかわいいデザインにするのではなく、運転のしやすさや安全装置にも注力した。

 例えば、運転する際の死角を極力減らし、車幅感覚がつかみやすいスクエア状のボディデザインに。さらに安全装備においても、衝突回避支援システム「スマートアシストIII」を搭載。

極めつけは発売当時、エントリーモデルが107万4600円、最上級グレードでも142万5600円というお手頃価格を実現したことだ。現在はエントリーのL「SA III」が116万円台と価格が異なっているものの、初めて車を買う人にとっては手を出しやすい価格帯だ。

同車の商品企画を担当したダイハツ工業の西山枝里氏は披露発表会において、従来の女性向け商品にありがちなかわいさや格好良さの要素を盛るという発想から変えたと話している。ユニークなのは、盛るのではなくシンプルにしていくという視点だろう。

女性がかわいいと思える商品は日々変わっている。ダイハツは女性の感性がかわいいに引かれるだけでないことに着目し、プロジェクトに取り掛かったのではないか。

ミラ・トコットのシンプルなパッケージングは話題を呼び、発売開始から1か月で約9000台の受注を達成。購入層においても子離れした親やシニアなど、幅広い年齢層にわたる。またほぼすべての購入層が「スマートアシストIII」搭載グレードを選ぶなど、ユーザーが安全性能にもこだわっていることがわかった。

ミラ・トコットの発表会で、開発責任者の中島雅之チーフエンジニアは開発時のエピソードを明かしている。パワーステアリングの感触が軽すぎると驚いたものの、女性社員にはとても運転しやすいと好評価だったことを受けて「男性目線だけではだめだ」と感じたそうだ。餅は餅屋ではないが、やはりターゲットの感性を一番理解しているのはターゲットということだろう。

女性ユーザーを魅了するのは技術の先進性ではなく、顧客への理解と寄り添いだ。ダイハツの次の展開にも期待が集まる。

引用:Merkmal

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