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オンラインで認知症の予防情報を発信 既存の対策とどう違う?

Mar 1, 2023

WHOが発表する12項目の認知症予防をもとにしたプログラムを実践する場として、東京・四谷に「健脳カフェ」を開設したのは2021年。運動、栄養、社会交流、ゲームなどを行うとともに、生活改善のアドバイスや認知症に関する相談など、幅広い予防活動を行っています。

これを四谷の場所だけで終わらせず、ネットでつないで全国に予防活動を広げたい。本屋でもデパートでも、店舗を設けお客さんに出向いてもらい販売する時代は終わり、今やネットで多様性のあるサービスを行う時代ですからね。認知症の予防活動だって同じなわけです。

そこで22年11月に、健脳カフェのオンライン版を開設。認知症にならない・進ませないための情報やプログラムを配信しています。

実は、認知症予防や早期発見を掲げ、さまざまな取り組みを行っている自治体は、すでにいくつかあります。国立長寿医療研究センターの「自治体における認知症の『予防』に資する取組事例集」では、そんな自治体を紹介しています。

 

例えば、北海道函館市。人口25万2647人のこの市は、高齢化率が35.7%。「高齢者が何歳になっても元気で活動的な生活を送ること」を支援するため、民間のフィットネス事業者や音楽教室などに委託し、介護予防教室を開いています。場所は、市内のフィットネスクラブや公共施設などで、住民の参加状況は、1回当たり10~30人程度。

高齢化率38.1%の鳥取県伯耆町では、町内の医療機関に所属する作業療法士が「とっとり方式認知症予防プログラム」の教室を開いています。

このプログラムは、鳥取大学、伯耆町、鳥取県が連携し、鳥取大学医学部の浦上克哉教授が中心となって、県独自の認知症予防プログラムとして開発したもの。週1回程度の実施で、1回当たり12人ほどが参加。

「事例集」では、ほかにも東京都足立区、大分県竹田市などが紹介されています。

 

■好きな時に好きな場所で

ただ、忌憚なく言わせてもらうと、評価すべき点はあるものの、まだまだ……。「事例集」によれば、これらの取り組みの参加者は1回10~30人。函館市では実人数777人と報告されていますが、市の人口約25万人中の777人ですから、0.31%。せっかくの取り組みが、わずかな人にしか届いていない。これでは、実質的な予防効果はほとんど期待できないでしょう。

国がとりまとめる「認知症施策推進大綱」には、認知症の人が認知症とともによりよく生きていけるための施策が挙げられています。

具体的には「認知症に関する理解促進」「認知症予防に関する可能性のある活動の推進」「早期発見・早期対応、医療体制の整備」「認知症の人の介護者の負担軽減の推進」など。

オンライン健脳カフェでは、これらのほとんどを配信中の番組でカバーしています。

 

一方、認知症予防対策を先行する自治体で行っている内容は、運動(全体の90.2%)、社会交流(同64.2%)、食事・栄養(同46.2%)が主。領域が限られており、本当の意味での認知症予防とはなりづらい。オンライン健脳カフェは、ネットを開く習慣さえつくってもらえれば、いつでも予防のための活動ができる。

「遠方に住んでいる」「コロナが怖い」「家を空けられない事情がある」といった理由からカフェに来られない個人の方はもちろん、自治体や企業、デイサービスともつながり、オンライン健脳カフェを今後どんどん広げていきたいと考えています。

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

引用:日刊ゲンダイ

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