より良い社会を探す、見つける、伝える新時代のWEBメディア

C magazine for the PT OT ST

急な予定変更が苦手な人の気持ちを軽くする方法 仕事上の「めんどくさい」なくすにはどうする?

Sep 3, 2022
だれしも、仕事、家事、運動など、日常生活で「めんどくさい」と感じる場面があるのではないでしょうか。なかなかやる気が出ずに、仕事が進まない、家が片付かない、運動が続かない……など、「めんどくさい」によってだらだらしてしまう人は多いでしょう。しかし、作業療法士の菅原洋平氏は「めんどくさい」は消せると言います。
「めんどくさい」が消える脳の使い方』では、医療現場で実証された、科学的に「めんどくさい」を消すコツを紹介しています。本稿では同書より一部を抜粋し、仕事上での「めんどくさい」の対処法をご紹介します。

 

予定を急に変えられるのが嫌な人へ

まわりの都合によって予定が変わりやすいなら「予定の終わり”に焦点を当てる」

予定を急に変えられるのは、わずらわしいことですよね。予定が変わりやすい環境にいる方は、「予定は変わる」ことを前提にしつつ、どう終えるかに注目してみましょう。

習慣のような予定通りの行動では大脳基底核が、突発的なことには小脳が対応しています。大脳基底核によってつくられた習慣が乱されると小脳がその修正を行い、そのときにエネルギーが消費されますが、乱されることが前提になっていると、大脳基底核から小脳へのスイッチが速やかになり、エネルギーの消費を抑えることができます。

予定変更が「めんどくさい」のは、自分が最もパフォーマンスを発揮できる、「パーソナルテンポ」が乱されるからです。テンポを乱されたときは、「終わり」を意識することで脳を省エネしましょう。

脳が課題を遂行するときの特徴を調べた実験があります。画面のどこかにシグナルが出て、制限時間内に目標の数をタッチする課題です。実験参加者は、課題の前半では、まず「正確性」を重視します。中盤になると、「正確性」に合わせて「速さ」が重視されます。

表示されるシグナルの位置は、一定のパターンがありますが、途中でそのパターンは変更されます。表示される位置が変更されると、一旦「速さ」が遅くなり、徐々に回復します。終盤になると、どのくらいの速さで動けばいいのかという「配分」が重視されます。

この「正確性」「速さ」「配分」を調整しているのは、大脳基底核と小脳です。「速さ」が求められると、次の標的を予測する小脳が働きます。課題終盤になると、タイミングがずらされることが小脳によって学習されているので、ずれに対する準備がされていて極端に遅くならず、作業がうまく配分されます。

タイミングが外されることが前提になっていれば、小脳の機能はより働きやすくなり、疲労度も低下します。

●キーワード パーソナルテンポ

 

インプットがめんどうの原因は?

すぐ忘れてしまうのに勉強しなければいけないなら「獲得した語彙をアウトプットする」

業務上、セミナーに参加したり、専門書を読んだりする必要がある方もいるでしょう。インプットがめんどうになってしまう原因は、その行為が身になっている実感を持てないからかもしれません。

このようなときには、ただ「勉強しなきゃ」と詰め込むのではなく、「新たな語彙を取得して使用する」という目的を追加してみましょう。

脳内の記憶を再生するには、その記憶に該当する言語が必要です。語彙が増えれば、再生できる記憶を増やすことができます。

英語や日本語の辞書には、50万語程度の単語が収録されています。そのうち、私たち成人が学習するのは5万語程度、日常的に自由に使いこなせるのは、1万語程度だと言われています。自分が使う言葉が限られるのは、自動化で脳の省エネを図っているからですが、語彙が限られると、アクセスできる記憶も限られてしまいます。

脳内の記憶をもっと有意義に使用していくためには、新しい記憶にアクセスして、普段から使用している記憶との新しい結びつきをつくっていく必要があります。そのためには、語彙を増やすことが有効で、最も簡単にできる方法は、人の真似をすることです。

人の話を聞いているときに、その単語や文の意味をすべて理解していたら、それだけでたくさんのエネルギーが消費されます。脳は、この消費を抑えるために、脳内にある「似た言い回し」に変換して理解しています。脳内にストックした言い回しのパターンが増えるほど、人の話を理解する力が高まります。

そして、その言い回しをアウトプットすることで、自分なりの言い回しに加えることができます。これで、言い回しの丸暗記ではなく、使える言語パターンができ、アクセスできる記憶も増えます。パターンが多ければ、他人の話を変換するためのエネルギーを減らすことができます。

初対面の人と話をするときは「ビジネス会話のチャンク(塊)をつくっておく」

チャンクとは塊のこと。脳には、一度に覚えられることが4つという容量の限界がありますが、複数の情報をチャンクとしてまとめてしまうことで、限られた容量の中でもたくさんの情報を覚えることができます。

これは、会話のような複雑な対応が迫られる場面での省エネ戦略に使えます。チャンキングは、無意識のうちに行われる脳の活動ですが、これを意識的につくることで、「わからない」状況を減らすと、初対面の人との会話もめんどくさくなくなります。

ビジネス上の会話は、7つのチャンク、塊で構成されています。

① 挨拶(contacts):「初めまして○○です」
② 雑談(small talk):「今年も暑くなりそうですね……」
③ 本題(presentation):「さて、先日お送りした資料をもとに、今日は3つのことを……」
④ 競合(competition):「最近話題になっている○○はどうでしょうか」
⑤ 発展(expansion):「この仕組みは、○○にも応用できそうですね」
⑥ 約束(appointments):「では、来週までに○○して連絡いたします」
⑦ 締めくくり(closing):「それでは引き続き、よろしくお願いいたします」

自分も相手もこのようなチャンクの中で会話をしているので、それぞれのチャンクが長引いたとしても、内容を忘れてしまうとか、疲労することが防がれています。

 

チャンキングには2つの種類

チャンキングには、2つの種類があります。チャンクをつくって反復して塊を強くするボトムアップ式チャンキングと、そのチャンクがどこで使えるかを把握するトップダウン式チャンキングです。トップダウン式を使って、自分がめんどくさいと感じる場面にチャンクを用意し、ボトムアップ式で定番化する。この過程を意識的に行ってみましょう。

●キーワード チャンク

だらだら要領を得ない話を聞かないといけないときは「相手の話にチャンクを見つける」

自分が用意したチャンクに相手の話が当てはまらないときには、脳内がエラー信号のたらいまわし状態になり、無駄にエネルギーを消費します。そこで、相手の話を章立てするようにチャンキングして、使う容量をセーブしましょう。

自分のチャンクに無理に当てはめようとして相手の話を先読みしたり、話を遮ったりするのは避けましょう。遮られた相手の脳が「わからない」状態になると、もう一度説明されてしまいます。あえて相手の順番でチャンキングしたほうが、さらなるめんどくささが生じるのを防げます。

脳は、予測と結果のギャップをできるだけ少なくすることを目指すので、予測から外れる信号に対して注意が高まる仕組みになっています。自分のチャンクにはまらない会話が気になるのは、エラー信号に注意が高まっているという現象です。

この注意の高まりには、ドーパミンという物質が関係しています。ドーパミンは、増えたきっかけとなった刺激を得る行動を強化させるので、さらにその話に注目してしまいます。

これはドーパミンアディクションという依存反応で、相手の嫌な行動に対する注目が高まり、それを追求する負のスパイラルを生み出してしまいます。

相手の話が自分のチャンクと異なったことが、このめんどくささの原因なので、相手の話をチャンキングしながら聞いてみましょう。

●キーワード ドーパミン

 

営業や接客で何度も同じことを説明する人へ

同じ内容を、個別に何度も説明するなら「アウトプットの必勝パターンを作り出す 」

営業や接客をされている方などは、同じことを何度も説明することに、飽きたり疲れたりするかもしれません。しかし、人に説明をする機会ほど、アウトプットの精度を上げるのに都合のよいことはありません。説明能力の向上に利用しましょう。

同じ説明を何度も繰り返せば、小脳のフィードフォワード運動制御によって自然に上手になっていきます。ここでさらに、「脳に何を学習させたいか」という目的を持って説明の仕方を変えてみると、自分に役立つ説明の練習に使えます。

『「めんどくさい」が消える脳の使い方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。
相手の話を聞くとき、私たちはそれを自分の脳内にある文法に当てはめて理解しています。この作業は無意識で行われています。自分の脳内につくられる基準となる文法は、メンタル文法と呼ばれます。メンタル文法は、脳が省エネをするためにつくられますが、これを意識的に利用することができます。

同じ内容を、複数の人に違う文法で説明してみると、メンタル文法のパターンを増やすことができます。これは、説明のバリエーションが増えるだけでなく、相手の話を当てはめる文法が増えることにもなるので、理解力や読解力を高めるのに役立ちます。

また、普段から使える文法を増やすことは、そのまま情報チャンキングのトレーニングになります。チャンキング能力が高まると、情報を関連づけて、少ない容量で多くの情報を覚えておくことができます。

さらに、相手に合わせて説明をしていると、脳内にある様々な記憶にアクセスすることができるようになるので、物事を多角的な視点でとらえ直したり、相手の立場に立って心情を想像する能力を高めたりできます。

●キーワード メンタル文法

引用:東洋経済オンライン

Cでの広告掲載、
求人情報や研修会情報の掲載をお考えの方はこちらから
LATEST
MORE
FRIENDS

CのMEMBERに
なってくれませんか??

CのMEMBERになると、
オンラインコミュニティでの
MEMBER同士のおしゃべりや
限定コラムやメルマガを
読むことができます。
MEMBER限定のイベントに
参加も可能です!