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“生きた証を残すため”理学療法士が描いた絵本 電子書籍でベストセラーに

Aug 11, 2022

書籍販売サイトの売れ筋ランキングで1位となった1冊の絵本。作者は静岡県伊豆の国市の病院に勤める理学療法士の男性で、リハビリを通して出会った患者の思いを温かく包み込むような視点で描いているのが特徴だ。男性が絵本を書いた理由とは。

◆電子書籍が海外で人気に

「ひかりを灯すしま」より
~N字に続く道の先に、ひかりを灯すしまがある。N字の道はここにたどり着く人の人生そのもの。人びとは、この島に失いかけている光を求めてやってくる。~

絵本「ひかりを灯すしま」の冒頭の文章だ。曲がりくねった坂道がずっと先まで続いている絵で始まるこの絵本は、2022年3月に出版された。

絵本の出版前に発売された電子書籍では、アメリカやイギリス、インドの書籍販売サイトで売れ筋ランキング1位に輝いた。

◆絵本作家は理学療法士

絵本をかいたのは、富士宮市在住の河原一剛さん(40)。

河原さん:
自分の思いが本当にこもっているものです。受け取り方は人それぞれ違うと思います。それでいいと思っています

河原さんが「自分の思いを詰め込んだ一冊」と話す絵本。

「ひかりを灯すしまへ」より
~このしまは、灯(ともしび)が弱くなった人々が光を求めてやってくる。灯を大きくして帰っていく人もいれば、灯がここで終わってしまう人もいる。~

「しま」と「ひかり」。この2つの言葉が物語を構成していくキーワードだ。

河原さん:
僕の仕事は理学療法士がメインです

河原さんは、伊豆の国市の順天堂大学医学部附属静岡病院に勤務する理学療法士だ。がんなど病気の治療を続ける患者のリハビリを担当し、日々 命と向き合っている。

◆絵本で残す“生きた証”

河原さん:
命のひかりというのもありますし、「ひかりを灯すしま」はまさしく伊豆半島を表しています

リハビリを通して、患者と長い時間接する理学療法士。患者の死と直面する中で、「患者の生きた証を残したい」と思ったことが、絵を描き始めたきっかけだった。

河原さん:
患者さんの話を聞いている中で、メモを絵で書いていたのがきっかけです。たまたま患者さんが見て「なにこれ?」と言われ、メモの絵を差し上げたらものすごく喜んでもらえました

河原さんが絵本の構想をめぐらすのは、車での通勤時間だ。表現するのは、リハビリ中の患者から聞いた人生のエピソードや病気と向き合う思い、それに将来への夢や望み。

河原さん:
自分だけ光ろうとすると、波風が絶対に起きてしまう。これは患者さんからいただいた言葉です。みんなの意見、ひとりひとりの意見、仲間を大切にすることで、仲間が僕をどんどん上にあげてくれる

◆絵本がやさしく包む“家族の心”

7月10日。沼津市の商業施設で、絵本販売の記念トークイベントが開かれた。

河原さん:
絵本を出すまでに、ものすごい壁があったりお金がかかったりと、絵本を出すこと自体が大変で、ここに至るまでのすべてが僕の挑戦でもありました。人間の体自体はなくなってしまうんだけど、心の中では絶対に死なせないという思いがこの本を書くきっかけにもなりました

絵本に興味をもった幼い子供やその親が足を止め、河原さんの理学療法士としての経験と絵本を出版した思いに耳を傾けていた。

イベント参加者:
子供たちが曽祖父の死に最近向き合っているけど、その経験があっても心の中で曽祖父が生きているということが大切なんだよって。それをこの先生はこの絵本の中で、伝えているんだよという話を子供たちにしたところです。子供がこの本が欲しいと言ったので、この本から感じ取ってくれたらいいなと思っています

今は亡き母親が、河原さんのリハビリを受けていたという女性。目に涙を浮かべながら、絵本の感想を河原さんに伝えていた。

母親が河原さんのリハビリを受けた女性:
病気を治して帰りたいという思いをずっと持っていた母なので、思い出しました。うちの母のこともメモには書いていたという話をしてくれて、誰かの気持ちの中で生きてくれているということがうれしかったです

絵本の中に記された患者の生きた証が、家族の心を温かく包み込んでいた。

河原さんと同じ病院で看護師として働き、出版の後押しをした中村さんは、河原さんの思いがともに命と向き合う多くの医療従事者にも届いてほしいと話す。

緩和認定看護師・中村佳代子さん:
病気で闘っている患者さんの背景を大事にしたケアを考えていく中で、河原くんがずっと言っているつながりを重要視して日々活動しているので、この絵本を通して彼が伝えたいことがもっと医療者に伝わればいいなと日々思っています

河原さん:
リハビリを担当する理学療法士は、患者さんとかかわる時間が長いので、その時間を思いにしてほかのスタッフに伝えていくかが大事だと思います

◆病と闘うだれかの“ひかり”に

病と闘う、だれかの“ひかり”に。河原さんはこれからも、命と、患者と向き合いながらその生きた証を描き続ける。

絵本はこう締めくくられている。

~僕は僕のできることを皆と助け合いながら、一歩ずつ前に進んでいこうと思っています。ひかりを灯す病院のあるしまをしまだけの宝物でなく、静岡県の、日本の、世界の宝物となるように。~

引用:テレビ静岡

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