3.AI

そしてこうして収集されたビッグデータの解析に、最も効果を発揮することを期待されているのがAIの力です。収集されたデータを機械学習、深層学習(ディープラーニング)という統計的モデリングを行うことで、予測モデルを構築し、シミュレーションすることが可能となります。

 

例えば、「高齢者見守り」のケースを考えてみましょう。カメラやセンサーで遠隔地にいる高齢者の状態をモニターするのが、今までの一般的な見守りパターンですが、こうしたケースの場合、実際に高齢者が転倒する事態が発生して初めて異常を検知する、いわゆる事後の気付きが中心となります。これに対して、AIを活用した見守りでは、あらかじめ高齢者の日常行動の様子を一定期間カメラやセンサーで捉え、これを高齢者の日常生活パターンとしてAIに機械学習させます。そしてその後、もし高齢者が日常の行動と異なる不審な動きを行った場合(例えば、認知症による徘徊や頻回なトイレなど)、従来の生活パターンから逸脱する行動が伺える場合には、あらかじめ関係者に警告するなど、事前の対応が可能となります。

健康寿命を伸ばしていくために、現在注目されているのは、慢性疾患の重篤化予防、介護予防など、予防文脈での健康維持ですが、AIはそうした分野でも大いに力を発揮してくれることが期待されています。

 

4.VR(バーチャル・リアリティ)

VRもエイジテックの中で重要な役割を果たす技術と言えます。理学的リハビリテーションは一般に理学療法士や作業療法士のもとで行われますが、VRを活用したリハビリでは、こうした人的労力を一定程度低減させる効果が期待されています。またゲーミフィケーションの活用などにより、肉体的に辛いリハビリを少しでも楽しいものに変換させていく効果や、データ取得を通じたエビデンスの検証なども期待されるところです。

 

5.ロボット技術

ロボットもエイジテックで期待される技術です。ロボットの活用可能性はいくつかの分野に分かれますが、高齢者の孤独を解消するコミュニケーションロボットという方向性、介護や労働の分野での人的サポートなどが考えられます。ロボットはAIやセンサーなどの発達により、よりセンシティブな技術として育っていくことが期待されています。

 

以上、連載第1回目は、エイジテックの全体概要について述べてみました。次回は、エイジテックの国別動向に触れることにいたします。

 

【エイジテック革命】第2回 海外のエイジテック事情 ーアメリカとイスラエルのエイジテック に続く