あるデイサービスに、ケアマネジャーから一本の電話が入りました。生活相談員が電話を取ると、ケアマネジャーは恐縮そうに「あのう、利用者様の受け入れ可能ですか? ちょっと緊急なんですけど……」と言いました。
デイサービスの生活相談員Sさん(男性)は、「困難事例(介護サービスの提供が困難なケース)の紹介だ」とピンときました。そして、受け入れてほしいという利用者の年齢や性別、介護状態などを尋ねました。
すると、「実は……。今通っているデイサービスの女性職員に、何度も痴漢行為をして、今週いっぱいで利用を断られてしまった男性です。もう痴漢行為はしないと反省しているので、受け入れてもらえませんか?」と申し訳なさそうに頼んできたのです。
電話を受けたSさん自身は男性。「自分が痴漢をされることはないだろうけれど、受け入れはどうしたものか……」と、大いに悩みました。介護にあたるスタッフは男性ばかりではありません。女性の職員さんに嫌な思いをさせるかもしれない、という不安がよぎりました。
しかし、もう痴漢行為はしないと本人が反省しているため、無下に断ることはできません。また基本的に介護事業者は、正当な理由なく要介護者の受け入れを拒否できないというルールがあります。
売上を一定以上キープするのも生活相談員の仕事の一つ。それには、利用者の数を増やさなければなりません。不安はあったものの、管理者に相談をしてこの高齢者を受け入れることを決めたのでした。
翌日、朝の申し送り(ミーティング)で、管理者がスタッフ全体に引き継ぎをします。
「実は、今日から受け入れする新規の男性利用者様は、前のデイサービスで痴漢行為があった方です。でも、ご本人ももうしないと反省しているし、また同じことをしたら、もうデイサービスを紹介できないとケアマネジャーからきつく注意されています」と伝えました。
続けて、「だから、もう大丈夫だと思けど……。女性のスタッフさんは気をつけて下さい。なるべく、男性スタッフさんが介助に入ってね」と言いました。
こうしたケース、実は介護施設ではよくあること。痴漢行為だけでなく、認知症の高齢者が職員を叩くなどの行為や、着替えやオムツを替えさせてくれないなどの介護拒否も含めて様々です。
「痴漢や暴力をふるっても、高齢者なら仕方がないのでは? 認知症ならなおさら……」とお思いでしょうか? しかし、職員もプロとはいえ一人の人間です。何をしても許されるわけではありません。
皆さんは、介護施設のこうした事情をご存じでしたでしょうか。
ちなみにこの男性利用者、しばらくは何事もなかったのですが、数ヶ月経った頃から女性職員へのボディータッチが見られるようになりました。厳重注意を繰り返しても改善がなかったため、ご家族にも了承を得て利用中止としたのでした。
こういう場合、受け入れてくれるところがなくなるまで介護施設を転々とすることになります。困るのは、ご本人よりもご家族ということになりますが……。
近年は、「ケアマネジャーを替えてほしい」「あのデイサービスには行きたくない」など、利用側者の要望も多く聞かれるようになりました。ひと昔前より、利用者が苦情や希望を申し出やすくなったのはとても良いことです。
このため、ケアマネジャーも利用者からクレームの少ない、より満足度の高い介護事業者を探し、顧客満足度の向上に努めています。介護事業者が生き残るためには、「利用者にいかに選ばれるか」にかかっていると言っても過言ではありません。
しかし、だからといって、高齢者なら何をしてもいいということはありません。レストランで大きな声で騒げば注意も受けるし、エスカレートすれば出入り禁止にもなりますよね。
それは介護も同じ。介護事業も福祉とはいえ「サービス業」なのです。
引用:現代ビジネス
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