皆さんは、自分自身のセクシュアリティについて知っているでしょうか?「性別とは何か?」「セクシュアリティとは何か?」考えたことがあるでしょうか?今まで考えたこともない人が多いかと思います。実は、私たちが知っている「性別」は性別のごく一部しか表していません。そこで、本記事では性別を捉えるうえで重要なセクシュアリティについて取り上げたいと思います。皆さん1人ひとりが自分自身のセクシュアリティを知るきっかけになっていただけたらと思います。
【本記事で伝えたいこと】
・セクシュアリティには5つの軸があること
・自分自身のセクシュアリティを知ることの大切さ
・自分や周りの人のセクシュアリティ(性のあり方)は大切に扱われるべきであること
セクシュアリティとは「性のあり方」ということもありますが、そのまま「セクシュアリティ」と表すこともあります。セクシュアリティは性に関する非常に広い概念です。
セクシュアリティには定義があり、セクシュアリティを構成する要素があります。その要素は、性的マイノリティだけのことではなく、全ての人が持っている要素です。つまり、セクシュアリティとは全ての人に関わりのあることなのです。
WHO(2000)はセクシュアリティを以下の様に定義しています。
“セクシュアリティは、身体、感情的な愛着と愛、セックス、ジェンダー、ジェンダーアイデンティティ、性的指向、性的親密さ、快楽と生殖についての理解と、これらの関係性を含む、人間であることの中核として理解される可能性がある。(中略)
セクシュアリティは複雑で、生涯にわたって進化する生物学的、社会的、心理的、精神的、宗教的、政治的、法的、歴史的、倫理的、文化的な側面が含まれる。“
引用)ユネスコ編(2020)『国際セクシュアリティ教育ガイダンス【改訂版】―科学的根拠に基づいたアプローチ』.p.32.明石書店
難しく定義されていますが、セクシュアリティには種々の視点があり、一人の一生の中でも進化・変化するとされていることがポイントだと考えます。
セクシュアリティの定義を示しましたが、以下の5つの軸で捉えるとセクシュアリティを構成する要素がわかりやすいかと思います。ぜひ、1つ1つ丁寧にご自身のセクシュアリティについて考えてみてください。書き方の例は後述していますので参考にしてみてください。ただし、あくまでも書き方は「例」であり正解はありません。読者が感じるままに書いたものが、その時のあなたにとってのセクシュアリティだと思います。
セクシュアリティは、非常に個人的なものであり大切に扱われるべきものです。そのため、読者が自身のセクシュアリティを書いたり周囲の人に書くことを薦めたりしても、セクシュアリティを誰にどの範囲話すか、公開するかはこの図を書いた本人のみが決めることです。決して誰かに公開することを強要することのない様にお願いします。
前置きが長くなりましたが、セクシュアリティの5軸について説明します。
筆者作成
自認する性(性自認)[Gender Identity]とは、自分自身の性別をどう感じているかということです。自認する性は男性の人も女性の人もどちらでもある人やどちらでもない人など様々です。
身体の性(生物学的性別)[Sex]とは、性染色体やホルモン、内性器・外性器などの身体のつくりのことです。
好きになる性(性的指向)[Sexual Orientation]とは、恋愛や性愛の対象となる性別のことです。性的指向は、RomanticとSexualにさらに分けることができます。Romanticは恋愛的な関心や欲求の対象となる性のこと、Sexualは性愛の関心や欲求の対象となる性のことです。恋愛対象となる性別と性愛の対象となる性別が一致している人も異なる人もいます。
表現する性[Gender Expression]とは、服装や言動、振る舞いなどの性のことです。
割り当てられた性・法律上の性[Assigned Gender]とは、戸籍や保険証などの公的書類に記載されている性別になります。割り当てられた性別とは、出生時に医師が外性器を見て男性か女性かを判断した性別です。割り当てられた性別はそのまま戸籍などに登録され、法律上の性別となります。
表現する性と割り当てられた性(法律上の性)は社会的な性(ジェンダー)と言われています。つまり、この2軸は社会的につくられた性であると言えます。
上記の軸で構成されているセクシュアリティことを考えると、セクシュアリティは性的マイノリティだけに関係のあることではなく、全ての人が持っていることだとわかるかと思います。ぜひ、上の図をもとに読者もご自身のセクシュアリティを1つずつ考えてみてください。の位置や大きさも人それぞれだと思います。また、〇が付かない軸があっても良いですし、枠線や塗りつぶしも好きな色や点線・破線など様々な書き方でご自身に合った書き方をしてみてください。
下に、架空のAさんとBさんのセクシュアリティを例に書き方を示します。
Aさんは、見た目はスーツを着ており男性ですが、自認する性は女性から中性よりのため、女性から真ん中の方に〇が楕円型に伸びています。身体的性は男性で、法律上の性・割り当てられた性は男性の様です。好きになる性は女性を好きになることも男性を好きになることもありますが女性の方が多いため、女性よりの楕円となっています。表現する性は、仕事ではスーツを着ており男性の服装をしていますが、プライベートでは中性や女性らしい服装を好み、化粧などもしているため男性から女性まで幅広く〇で囲んでいます。
Bさんのセクシュアリティは下の図の通りです。
性的マジョリティと呼ばれる人のセクシュアリティに近いのではないでしょうか。しかし、実は性的マジョリティと呼ばれる人にも様々なグラデーションがあるかと思います。Bさんの通りに書く必要はなく、ぜひご自身の感じ方のまま書いていただければと思います。
WHOがセクシュアリティについて定義している様に、セクシュアリティは一生涯の中でも変化します。自身のセクシュアリティの記載を経時的に追ってみても良いかもしれません。
また、対象者で自身のセクシュアリティについて悩んでいる方がいたら、上の図をプリントアウトしてセクシュアリティの5軸、書き方、正解はない事を伝えてあげるのも良いかもしれません。ただし、繰り返しにはなりますが図の開示を強要することのない様にお願いします。
セクシュアリティの定義とセクシュアリティを構成する性自認、生物学的性別、性的指向、性表現、割り当てられた性別の5軸について初めて聞いたという方も多いのではないでしょうか。この記事をきっかけにセクシュアリティについて知っていただき、自身だけでなく周囲の人のセクシュアリティを大切にしていただくきっかけになればと思います。
【参考文献】
1) ユネスコ編(2020)『国際セクシュアリティ教育ガイダンス【改訂版】―科学的根拠に基づいたアプローチ』.明石書店
2) 薬師実芳他3名(2019)『改訂新版LGBTってなんだろう?―自認する性・からだの性・好きになる性・表現する性』.合同出版
3) 「なくそう!SOGIハラ」実行委員会[編](2019).『はじめよう!SOGIハラのない学校・職場づくり‐性の多様性に関するいじめ・ハラスメントをなくすために‐』大月書店
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