より良い社会を探す、見つける、伝える新時代のWEBメディア

C magazine for the PT OT ST

運動障害だけじゃない パーキンソン病、40歳前発症も

Mar 14, 2022

手足がふるえ、姿勢が保てないといった運動機能への影響に加え、うつや便秘など様々な症状が出るパーキンソン病。高齢者に多いが、40歳前に発症する例もある。早いうちに見つけ、治療に結び付けるのが大切だ。

人間の体は脳からの指令が全身の筋肉に伝わって動いている。この指令を調整する役割を果たす神経伝達物質のひとつに「ドーパミン」がある。体を円滑に動かすには欠かせない物質だ。ただ年齢を重ねると徐々に減っていく。

パーキンソン病では脳内でドーパミンをつくる神経細胞が減ってしまい、通常よりも早くこの物質が不足するようになる。原因など明らかでない部分は多く、国の指定難病のひとつだ。40歳前に発症することもある。

体の動きに関わる症状(運動症状)では手足がふるえる、動きがゆっくりになる(動作緩慢)、筋肉がこわばる(筋強剛)、姿勢が保てない(姿勢保持障害)などがある。初期には体の片側にふるえなどが出てきて、細かい動作が難しくなる。

筋肉のこわばりは本人が自覚しにくい。他人が手や足の関節を動かそうとしたとき、カクカクと抵抗を感じる。姿勢保持障害は発症後に遅れて出てきて、転倒の原因になる。表情が乏しい「仮面様顔貌」、声が小さくて単調なしゃべり方になるのも特徴だ。

病気の進行度や重症度はこうした運動症状から判断することになる。分類として代表的なのは「ホーン・ヤールの重症度分類」や厚生労働省の「生活機能障害度分類」だ。

運動機能障害にとどまらず、他にも様々な症状がみられる(非運動症状)。便秘や頻尿、睡眠障害、嗅覚の低下に加え、立ちくらみ、疲れやすさ、体の痛み、うつ、不安、幻覚、意欲の減退、認知機能の低下などが知られている。

岡山脳神経内科クリニック(岡山市)の柏原健一院長は「症状の表れ方や程度は人それぞれ違う。骨や筋肉の病気やうつ病だと思い込んで整形外科や精神科を受診し、発見が遅れることもある。パーキンソン病が疑われるような症状があれば脳神経内科を一度受診してほしい」と訴える。

今のところ完治は難しいとされ、治療は運動症状をはじめとする症状の改善に向けた薬物療法やリハビリテーションが中心になる。薬物療法ではドーパミンを補充したり、その働きを助けたりする薬などがある。ただ薬の効果や副作用の出方には個人差があるという。医師は患者の症状や年齢、生活の実態を見極めつつ、複数の薬を組み合わせて使うのが一般的だ。

熊本再春医療センター(熊本県合志市)の栗崎玲一・脳神経内科医長は「服薬を急にやめると、症状が悪化したり、命に関わる強い副作用が出たりすることがある。自己判断でやめないでほしい」と語る。他の病気で別の診療科から出された薬が症状に影響する可能性もある。薬についてはパーキンソン病でかかっている医師に相談しよう。

薬で症状が安定しない場合、運動機能に関係する脳の奥の部位に電極を埋め込み、電流を流して運動機能の改善を図る「脳深部刺激療法(DBS)」が選択肢に入る。腹部に小さな穴をあけてチューブを挿入し、腸に直接、薬を持続的に注入するケースもある。薬の効き目を安定させるのが狙いだという。

かつては発症から10年で寝たきりになるなどと言われていた。ただ近年は治療法が進歩。早い段階から取り組むことで、通常とそれほど変わらない生活を長期間送れるようになってきた。柏原院長は「医師やリハビリの専門家と相談し、前向きな気持ちで適切に治療に取り組んでいけば、うまく付き合っていける病気だ」と話す。

(ライター 坂井 恵)

出典:NIKKEI プラス1

Cでの広告掲載、
求人情報や研修会情報の掲載をお考えの方はこちらから
LATEST
MORE
FRIENDS

CのMEMBERに
なってくれませんか??

CのMEMBERになると、
オンラインコミュニティでの
MEMBER同士のおしゃべりや
限定コラムやメルマガを
読むことができます。
MEMBER限定のイベントに
参加も可能です!