「コロナフレイル」で高齢者が陥りやすい活動量や足の筋力、食事量の減少――。ちょっとした工夫で防ぎましょう

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「コロナフレイル」で高齢者が陥りやすい活動量や足の筋力、食事量の減少――。ちょっとした工夫で防ぎましょう

Feb 25, 2022

ヨミドクター読者のみなさま、ご無沙汰しております。昨年8月までコラムを連載していた「在宅訪問管理栄養士しおじゅん」こと塩野崎淳子です。

 昨年の夏は、各地でワクチン接種が進んでいた季節。「来年になれば感染拡大も少しずつ落ち着いていくのだろう」と淡い期待を持っていましたが、甘かったです。新たな変異株の登場により、終わりが見えない不安な気持ちを抱えている方も多いのではないでしょうか。リモートワークやリモート会議が当たり前になり、娘の学校では1人1台のノートパソコンが配布され、非常に便利な社会になったと思いますが、そろそろ人と人とのふれあいが恋しくなってきました。大人数が集まって、マスクなしで会話ができるのはいつになることでしょうか。

 一時期、「コロナ太り」が話題となりましたが、高齢者医療の現場では、最近「コロナフレイル」という新たな問題を耳にするようになりました。フレイルとは加齢によって心身の機能が低下し、社会とのつながりも減少して「衰弱」した状態を指します。フレイル状態をそのままにしておくと、「心身の機能低下が進んで要介護状態に至る」と言われています。長い自粛生活によって、高齢者の健康が脅かされています。

生活不活発病」がフレイルのきっかけに

年齢にかかわらず、毎日毎日じっと家にいるだけでは、当然、活動量が低下します。活動量が低下しても食欲が衰えない方は、いわゆる「コロナ太り」に陥りますが、高齢者の場合は「おなかがすかない」という方も少なくありません。「動いていないし、別に食べなくてもいいか」と1日2食になり、そのうちの1食はカップラーメンや菓子パンだけになるなど、栄養のバランスが悪い状態が続くと、知らず知らずのうちに必要な栄養量が確保できなくなることもあります。

2020年5月、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、全国的に外出自粛が呼びかけられる中、生活習慣の変化とフレイルの関係を明らかにするために、群馬県高崎市で高齢者を対象にアンケート調査が行われました。その研究によると、心身のフレイル状態がみられた高齢者は、フレイル状態ではない高齢者と比較して、身体活動量や足の筋力、食事量が減少していることが明らかになりました。 1)

特に激しい運動をしていなくても、日々の買い物や友人とのお茶飲み、趣味のサロンや町内会の活動などへ足を運ぶことが、高齢者にとっては「ほどよい運動」となり、動くことで空腹になり、しっかり食べ、生活リズムを維持していたのでしょう。

 新型コロナウイルスからは身を守りたい。しかし、自粛で活動が減少し、人とのコミュニケーションも失ってしまう。

 現在のような社会状況が続くと、数年後には要介護状態の方が増えるかもしれません。高齢者の介護予防の現場では、大きなジレンマを抱えたまま、2年が経過してしまいました。

 

カップラーメンもちょっと工夫をするだけで

 自粛生活でも必要な食事を取るためにはどうしたらよいのでしょうか。外食に頼り切っていた方の中には、飲食店の休業期間が長期にわたり、自炊をせざるを得なくなった方もいるでしょう。買い物にも頻繁には行けないため、新鮮な野菜を手に入れるのも難しい。そんなとき、活用したいのは冷凍野菜や缶詰などです。

このたび、料理が苦手な方でもバランスよく食事を取るヒントを詰め込んだ本を出版することになりました。『70歳からは超シンプル調理で「栄養がとれる」食事に変える!』(すばる舎)です。

 この本では、たんぱく源の食品+野菜+主食を合わせることで、完璧でなくても栄養バランスのよい食事を目指すためのノウハウをお示ししました。カップラーメンにゆで卵を添え、一緒にミニトマトを5、6個食べるだけでも、ラーメン単品よりグッと栄養価は良くなります。

「限られた時間や予算の中で、手抜きをしながらもいかに栄養バランスよく、おいしく食べるかということこそ、『賢く食べる生活の知恵』だと思います。『いかに安い服でおしゃれに見せるか』というのと同じですね」(本文より)

 

とはいえ、「低栄養を防ぐために食事をしよう」「健康のために運動をしよう」と思っても、なかなかできないものです。「おいしい炊き込みご飯を炊いてみよう」「少し遠いけど、あの団子屋さんまで歩いていってみよう」といった「モチベーションが上がるきっかけ」が必要です。日々の食事は、「栄養のため」だけではなく「空腹も心も満たす食事」であってほしいものです。

また、これからの時代は、しっかりと感染対策を行いながら、少しずつ活動を始めていくことが大切です。自治体によっては、地域の高齢者に呼びかけて、地域の小学校で花壇を整えるボランティアなど、屋外での活動を始めているところもあるそうです。土を耕すのは全身を使う作業ですから、活動のあとはきっとおいしくご飯を食べられることでしょう。

そういえば、私のコラムのテーマがまさに「ゆるっと楽しむ健康食生活」でしたね。まずは食生活を楽しむこと、その延長線上に健康が作られるのが理想的ですね。(在宅訪問管理栄養士 塩野崎淳子)

 

参考文献

1)Association between frailty and changes in lifestyle and physical or psychological conditions among older adults affected by the coronavirus disease 2019 countermeasures in Japan (Original article)
Geriatr Gerontol Int. 2021 Jan;21(1):39-42. doi: 10.1111/ggi.14092. Epub 2020 Nov 17.
Shinohara T, Saida K, Tanaka S, Murayama A.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/pdf/10.1111/ggi.14092

「COVID-19 による地域在住高齢者へのフレイル化の関連論文』 日本老年医学会・新型コロナウイルス対策チーム作成
https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/coronavirus/pdf/covid_search.pdf

 

出典:ヨミドクター

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