長崎県西彼長与町に住む全盲の鈴木春夫さん(80)は、歩いて帰宅できなくなり「白杖(はくじょう)SOSシグナル」のポーズを取って、周囲にピンチを知らせた。救ったのは通りかかった中学生3人組。授業でその意味を教わったばかりだった。鈴木さんは「視覚障害者にとっては命を守るシグナル。本当にうれしかった」と感謝を述べた。
鈴木さんは全盲で難聴者。今月1日午後4時過ぎ、趣味のカラオケを終え、いつも通りタクシーで帰るつもりだった。しかし、タクシーが無線の故障で来なかったことから、自宅までの約500メートルを歩いて帰ることにした。だが、道路は行き交う車が多い上、以前事故に遭った記憶もよみがえってきた。不安が募る中、いつの間にかどこを歩いているのか分からなくなった。
「助けて」-。その場から動くことができなくなった鈴木さんは、わらにもすがる思いで白杖を頭上に掲げる「白杖SOSシグナル」をした。
そこに通りかかったのが長与町立長与中1年の若菜璃愛さん(13)、進藤朱亜さん(12)、葉山莉々愛さん(13)。下校中に、車道を挟んで白杖SOSシグナルを出す鈴木さんが見えた。3人はこの日の総合学習で「視覚障害者が困っている合図」と、このポーズを知ったばかりだった。
半信半疑だったが、鈴木さんの「助けてください」の声で確信に変わった。すぐに駆けつけ「どうしたんですか」と声をかけた。事情を聴き、自宅近くまで一緒に歩いた。
3人は「習ったことが生かせて良かった」「困っている人がいたら今後も助けたい」などと笑顔を見せた。鈴木さんは「シグナルの有無にかかわらず、困った様子の視覚障害者に気付いたら勇気を出して声をかけて。それが共生社会につながる」と話した。
引用:長崎新聞
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