障害者や高齢者の楽しみや生きがいとしてのeスポーツ、ゲームの可能性を考えるビジネスフォーラム。ソーシャルイノベーションを中心とした団体である日本財団と日本のeスポーツを支えるJeSU(日本eスポーツ連合)による共催。
「eスポーツがもたらす新たな可能性」に登壇したのは、作業療法士で筋ジストロフィーなどの患者がゲームをプレーするための環境、機会作りに携わっている田中栄一氏、東京国際工科専門職大学で講師を務めるゲーム教育ジャーナリストである小野憲史氏、ライアットゲームズでMOBA ブランドマネージャーを担当する森下諒氏、JeSU広報 戸部浩史氏、進行性筋萎縮症を患いながらもeスポーツの発展に寄与しているユニバーサルeスポーツネットワークの吉成健太郎氏の5人(吉成氏のみオンライン)だ。 eスポーツは、老若男女、障害の有無などにとらわれず、一緒に遊んだり対戦したりすることができるのが特徴だ。ゲームのコントローラー自体は指先さえ動かされば使用することができ、それすら難しい場合でも、アイトラッキングによる目の動きだけで操作できるようになるコントローラーや顎で操作する特殊なコントローラーも存在する。これらはカスタムされたものだが、XboxのアダプティブコントローラーやNintendo SwitchのFlex Controller、PS5のAccessコントローラーなど市販品も対応しはじめている。 「当社がリリースするカードゲーム『レジェンド・オブ・ルーンテラ』のプレーヤーがアイトラッキングでプレーしています。そこでライアットゲームズは彼に障害者に対して何ができるかを聞いて、彼の意見をフィードバックし、新たなシステムを組み込みました」(森下氏)
高齢者向けとしても活躍するゲーム。熊本県美里町では認知症予防や若年層のICT教育、そして同じゲームをプレーする者同士として、若者と高齢者の交流にもひと役買っている。小野氏は高齢者施設でゲーム大会を開くことになったとき、新たな気づきがあったという。 「コロナ禍でレクリエーションができなくなったため、ゲームで大会を開くことを頼まれました。そこでゲーム機を持ち込んでプレーしてもらおうとしたんですが、高齢者の中には両手でコントローラーを持つことができない方がいたり、対戦前の準備でメニューの操作ができない方がいたりと、思った以上にゲームで遊ぶハードルが高い人がいました。そこで、(プログラミング言語の)Scratchを使って、ごくごくシンプルな4人対戦ゲームを作ってもっていったら、すごく喜ばれたんです。子供や学生が作ったゲームでもみんなで楽しめる。社会貢献や福祉の分野でもゲーム制作で貢献できるのではないかと」(小野氏) 筋力が徐々に衰えてしまう筋萎縮症を患っている吉成氏は、数あるアクティビティーの中でゲームの優位性を説いている。 「病気を患ってから日々、やれることが少なくなっていきました。ひとりで食事もとれなくなりました。ゲームは(操作)デバイスさえ工夫できれば、続けることができ、強くなる体験を得ることができました。日々できることが少なくなるなか、成長を感じられたのは、他のアクティビティにはないと思います。生きる目的を得たといえますし、救われました」(吉成氏) ジェンダー的にも能力の差は少ないと考えられる。ただ、ゲームをプレーする人口やプレーする土壌が育っておらず、まだ男性が活躍する場面が多くなっている。そこでライアットゲームズでは、まずは女性が輝ける場を提供することが重要と考え、女性限定の大会を開催した。 「スポットライトの当たりにくいポテンシャルのある女性プレーヤーに光を当てたいと考えました。男性と女性を区別するのではなく、いままで通り、通常の大会は男女関係なく出場できます。ただ、限定大会にすることでより多くの人に注目を集めてもらい、活躍してほしいと考えています」(森下氏) 最後にゲームは分断されたものをつなげる力があるとその可能性を示唆した。これまでスポーツの多くが人種や国など分断されたものをつなげてきた。ゲームもスポーツと同様に分断した世界をつなげられる可能性を大いに秘めている。 なお、日経クロストレンドでは「東京ゲームショウ2023特設サイト」を公開中です。ぜひ、ご覧ください。 ・日経クロストレンド「東京ゲームショウ2023特設サイト」 https://xtrend.nikkei.com/sp/tgs/ (文/岡安 学、写真/木村 輝)
引用:日経クロストレンド
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