第169回芥川賞・直木賞の贈呈式が2023年8月25日、都内で開かれた。
重度障がい者の女性が主人公の小説『ハンチバック』で芥川賞を受賞した市川沙央(いちかわ・さおう)さんは、あいさつで、障がいの有無に関係なく読書ができる「読書バリアフリー」について「新ためて環境整備をお願いしたい」と訴えた。
その上で芥川賞受賞作について、「私の懇願の手紙をスルーした出版界」への怒りで書いた作品をだと述べ、「怒りの作家から愛の作家になれるように頑張りたい」とあいさつを締めくくった。
直木賞は垣根涼介さんの『極楽征夷大将軍』と、永井紗耶子さんの『木挽町のあだ討ち』が受賞した。
市川さんの贈呈式でのあいさつの全文(※適宜表現を替えた部分があり、一部、聞き取れなかった箇所があります)
私はしゃべると炎上するので、気をつけたいと思います。昨日も物議を醸していました。受賞会見で叩かれ、(注:NHKの番組)『バリバラ』に出ては叩かれ、まあ叩かれる叩かれる。
文学の普遍性を殺したとか、芥川賞を凌辱したとか、文学を名乗らないでほしい、とも言われました。
まあでも、昔、ナベツネ(注:渡辺恒雄・読売新聞グループ本社代表取締役主筆)は言ってました。悪名は無名に勝る。だからまあ、話題になるだけありがたいと思っております。
さて、読書バリアフリーを訴えております。そろそろできますか?
今日は出版界の皆様、勢ぞろいということで、新ためて環境整備をお願いしたいと思います。電子書籍を出さない作家にお手紙を出した事があるんですけど。お手紙したのは(直木賞選考委員の)宮部さんとか高村さんではないですが。
『ハンチバック』は、私が産んだ小説ですが、種付けをした父の存在が二方おります。ひと方は、私の懇願のお手紙をスルーなさった出版界。
もうひと方は、私のライトノベルを20年、落とし続けたライトノベル業界。この場を借りて、御礼申し上げたいと思います。その方々がいなければ、私は今、ここにはいません。
怒りだけで書きました。『ハンチバック』で復讐をするつもりでした。私に、怒りはらませてくれてどうもありがとう。
でもこうして今、皆様に囲まれていると、復讐は虚しいということもわかりました。私は愚かで、浅はかだったと思います。
怒りの作家から、愛の作家になれるように、これから頑張っていきたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。本日はありがとうございました。
市川沙央さんは1979年生まれ。文藝春秋9月号のインタビューなどによると、10歳の頃、乳幼児期から筋力低下がみられてその後も持続する難病、筋疾患の「先天性ミオパチー」の診断を受けた。14歳から仰向けになるときには人工呼吸器をつけていたという。
20歳の頃から主に女性向けライトノベルなどを書き、20年以上新人賞に応募してきたという。初の文芸作品となった『ハンチバック』で2023年、第128回文學界新人賞受賞し、その後、芥川賞に輝いた。
市川さんは30代になってから早稲田大学人間科学部(通信教育課程)に入学した。
読売新聞のインタビューでは「通信大学の資料を20歳代で取り寄せていましたが、スクーリング(編集部注:対面での講義)が必要でした。今はオンラインでも良くなったので。その情報を知るのが遅れて30歳代で知って入りました」としている。
7月に発表された芥川賞の受賞後の記者会見では、「重度障がい者の芥川賞受賞は初だと書かれると思う」と発言した上で、「どうしてそれが2023年にもなって初めてなのか。それをみんなに考えてもらいたいと思っております」とのべた。
障害の有無に関わらずに読書が「読書バリアフリー」の必要性を強調し、紙の本だけでなく、電子書籍や録音図書などを充実させる必要性を訴えている。
編集部より:初出時、「発明は無名に勝るま」としていましたが、正しくは「発明」ではなく「悪名」でした。お詫びして訂正します。2023年8月26日7:10
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