「車椅子はエレベーターしか手段ない。歩ける人は階段もエレベーターも手段としてある。そっち使ってほしいなぁ。って言うのはわがままなのかな?」。10月下旬、一人の車いす利用者の投稿がネット上で大きな話題を呼んだ。投稿者の渋谷真子さんは事故による脊髄損傷で車いす生活となって以来、車いすでの排せつや性事情なども赤裸々に発信する、登録者数10万人の“車いすYouTuber”だ。なぜ自ら繊細なテーマの発信を続けるのか、YouTube配信に込めた思いを渋谷さんに聞いた。
「車椅子はエレベーターしか手段ない。歩ける人は階段もエレベーターも手段としてある。そっち使ってほしいなぁ。って言うのはわがままなのかな?」。10月下旬、一人の車いす利用者の投稿がネット上で大きな話題を呼んだ。投稿者の渋谷真子さんは事故による脊髄損傷で車いす生活となって以来、車いすでの排せつや性事情なども赤裸々に発信する、登録者数10万人の“車いすYouTuber”だ。なぜ自ら繊細なテーマの発信を続けるのか、YouTube配信に込めた思いを渋谷さんに聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)
渋谷さんが脊髄損傷の大けがを負う事故に遭ったのは2018年、26歳のときのこと。その年の2月まで会社員だった渋谷さんは、山形で昔ながらの家屋を直すかやぶき屋根職人の父を跡を継ぐことを決意し、父のもとに弟子入りする。事故が起こったのは見習いを始めてわずか3か月後の7月。足場の上を尻ばいで後方に下がっていた渋谷さんは、足場が途切れていることに気づかず、そのまま3メートルほどの高さから地上に落下、突然車いす生活を余儀なくされた。
「落ちた瞬間から意識はあって、漠然と『これは歩けなくなるやつだな……』とは思いました。それでも、今の時代車いすで生活している人もたくさんいる、そんなに心配することはないんじゃないか、もしかしたらそのうち医学の進歩でまた歩ける日が来るんじゃないかと、そんなに悲観的にはならなかったですね。また歩けるようになるかどうかはどんなに悩んでも答えは出ないこと。それなら今は今で、車いす生活を楽しもうと」
事故から約1年後、YouTubeチャンネルを開設。発信内容は、車いすになって初めて気づいたことや、車いすでの日常、再生医療の現在、時には車いす生活者の排せつや性事情など、当事者でしか分からない赤裸々な発信を続ける。
「私自身、車いすになって、車いすで生活するうえでの情報が欲しかったんですが、ネットで調べても出てくるのは論文ばかり。車いす生活者の実際の生活はなかなか見えてこなかったり、あってもネガティブな声ばかりでした。日本でも年間5000人が後天的に障がいを負うという統計もあって、私の後にも車いすになった人は大勢いて、同じように当事者の生の声を求めているはず。自分自身の体験を発信することが当事者のためになるのではと思ったんです」
裏表のないありのままの発信はときに批判的な声にさらされることもあったが、チャンネル登録者は3年間で10万人にまで急増した。
「最初にバズったのが排せつの動画ですね。正直、歩けなくなったことより人前で漏らしてしまうことのほうがずっとつらいです。それでも、障がいを理解している人から見られるのと、理解のない人から見られるのとではだいぶ違う。例えば、看護師さんや介護士さんの前で漏らしても比較的ショックが少ないのは、障がいがあって漏らすのが仕方ないことだと分かってもらっているから。より多くの人に障がいの現実を知ってもらい、街中で失敗してしまっても気にならないような社会になればいいなと」
もう一つ、渋谷さんが発信を続ける理由に、インフルエンサーとしての自身の振る舞いが、障がい者自立のロールモデルになればとの思いもある。
「私は今、自分の生活費や治療費をまかなえるくらいにはYouTubeの収益がありますが、障がい者はつつましく生きるべきだという価値観も根強く、ときに『成金障がい者』と揶揄されることもあります。日本は福祉が行き届いている反面、障がいをビジネスと結びつけることをタブーとする風潮がある。障がい者を使ってお金もうけをするのは悪いことだという考えは、むしろ障がいがあっても働ける人から活躍の場を奪うことにつながるのではないでしょうか」
事故や病気などで、ある日突然誰もがなりうる障がい者という立場。もし自らの身に起こったとき、そこから見える景色はどういったものなのか。他人事ではなく、想像力を持った支援の在り方が必要とされている。
引用:ENCOUNT
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