デリケートゾーンを頻繁にチェックする人は、腟も年を取ることに気が付いているかもしれない。
「あなたの体は月日が経っていることを知りません」と話すのは、米マウントサイナイ医科大学の産婦人科学臨床助教授で婦人科医のアリッサ・ドウェック医学博士。でも、女性器は加齢と共に間違いなく変化するし、変化するのが当たり前。そして、仮に不快な変化があったとしても、コントロールがまったく効かないわけじゃない。
もちろん、腟の性格は人それぞれ。妊娠や閉経のタイミングも姉妹の間で違うけれど、一般的には各年代で以下のことが起こりうる。
ドウェック医師によると、30代(前後)で避妊ピルを使っている人は腟が少し乾くかも。これはおそらく、ピルで排卵が止まったことで、排卵期に分泌される潤滑液の量が減っているから。米メイヨークニックスの女性の健康部門長で、著書に『Mayo Clinic—The Menopause Solution』を持つテファニー・S・フォビオン医学博士によると、ピルが腟の乾燥をもたらす理由はもう1つあるけれど、そちらは少し複雑で、専門家の間でも意見が分かれる。「ピルはアンドロゲンという男性ホルモンをブロックしますが、外陰にはアンドロゲン受容体があるんです。だから一部の女性は外陰が乾くのかもしれません」。この影響を感じる女性と感じない女性がいるワケは、専門家にも分かっていない。
30代では、妊娠や出産に踏み切る女性も少なくない。妊娠と出産は外陰と腟に大きな影響を及ぼすけれど、ドウェック医師の話では、妊娠中の子宮の重みで陰部に静脈瘤(じょうみゃくりゅう)ができてしまう人もいる。タイミングとして多いのは、妊娠後期と出産直後。また、妊娠すると、妊娠ホルモンの影響で外陰の色が濃くなることもある。
でも、ドウェック医師いわく腟は、もともと“しなやか”。血液が豊富に送られる部位ということもあり、いろいろ問題が生じても産後まもなく元に戻るケースが多い。「この回復力には、いまでも驚かされますね」とドウェック医師。
ただ、フォビオン医師が言うように、妊娠中と出産時に骨盤底が圧迫されて、骨盤底の筋肉と神経が損傷することはある。そのため「産後は理学療法士の力を借りて、骨盤底のリハビリをしたほうがいいでしょう」。尿漏れを防ぎ、産後もセックスを楽しむためには、骨盤底のトレーニングも効果的。
ドウェック医師によると、40代はデリケートゾーンのワックスやシェービングを長年続けてきた人が色素沈着や皮膚の変化に気付く頃。加齢やエストロゲンの減少に伴って、デリケートゾーンの毛が細くなることもある。
エストロゲンの減少は、あなたが閉経周辺期にいることを示すサイン。ほとんどの女性は50~52歳で閉経を迎えるけれど、40代で腟の乾燥や弾力性の低下を感じる人も少なくない。
閉経は腟と外陰に明らかな変化をもたらすので、この時期には多くの女性が病院を訪れる。エストロゲンの減少で外陰と腟の組織が薄くなり、弾力性を失って乾くため、セックスに激痛や排尿感が伴うことも。
フォビオン医師によると、この状態は少し前まで“腟委縮”と呼ばれていた。最近は閉経関連泌尿性器症候群(GSM)と呼ばれることが多くなってきたけれど、“症候群”だからといって必ずしも深刻な症状が現れるわけじゃない。むしろGSMは、閉経には腟、外陰、泌尿器系の症状が伴うことや、それを治す方法があることを女性や医療関係者に周知させる目的で生み出された言葉と言える。
エストロゲンの量が減ると、脂肪とコラーゲンの量も減る。だから、50代では外陰が全体的に薄くなり、弾力性を失って、“縮んだ”ように見えることも。フォビオン医師いわく「外陰は、体の中で唯一シワが好まれる部位であり、更年期に唯一シワが消える部位」。
また、エストロゲンの量が減ると、腟に生息していた一部の細菌の数が減り、腟内の酸性度が高くなるため、感染症にかかりやすくなることがある。ドウェック医師の話では、腟の乾燥や弾力性の低下によって小さな傷ができやすくなることも、感染症の発症率が高くなる理由の1つ。
ホットフラッシュと寝汗は数年間続くことがあるけれど、いずれはよくなる。でも、腟の変化は悪化の一途をたどるだけ。フォビオン医師いわく女性の50~60%は腟の乾燥を訴える。この状態を放っておくと、負の循環に陥ってしまうので注意が必要。
「閉経後のセックスで、あなたが痛みを覚悟すると、体が勝手に拒否反応を起こします。骨盤底筋が収縮して、あなたを守ろうとするのです。あなたが『絶対痛い!』と思えば、ほぼ確実に痛いでしょう。信じ難いかもしれませんが、ケーゲル体操で骨盤底筋を鍛える必要がある人と同じくらい、理学療法で骨盤底筋を緩める必要がある人もいますからね」
ただし、骨盤底筋が弱い更年期の女性には、骨盤臓器脱のリスクがあるので要注意。骨盤臓器脱は、子宮、子宮頸部、さらには腸を支えている結合組織が緩んで、これらの臓器が落ちてきてしまうこと。自分では気づかないこともあるけれど、これらの臓器が腟から出てきて手術が必要になることも。
年齢に関わらず、不安な変化が見られたときや身体的につらいときは、恥ずかしがらずに産婦人科医に相談を。「女性には、もっと自分を主張してほしいです」とフォビオン医師。「その医師が話をしたがらないときや気まずそうなときは、別の医師を探しましょう」
セックス中の痛みがひどくない人は、潤滑ゼリーを使えばいい。フォビオン医師いわく温熱効果やウズウズ感をもたらすような潤滑ゼリーは、外陰にやけどを負わせる恐れがあるので絶対に避けること。潤滑“オイル”はコンドームと相性が悪く、シリコンベースの潤滑ゼリーはシリコンベースのバイブレーターを劣化させる可能性があることも覚えておいて。
ファビオン医師が“腟用のフェイスクリーム”と呼ぶ保湿液を使ってみるのも悪くない。「腟の中の細胞同士がくっついて水分が保持される分、腟が潤いますからね」。ただし、この細胞は2~3日おきに自然と剝がれ落ちるので、定期的に使う必要がある。
このような方法を試しても効かないときは、病院で腟用のエストロゲンをもらったほうがいいかもしれない。エストロゲンはクリーム、錠剤、リングの形で処方される。低用量でも腟と外陰に効果があるし、全身に作用するホルモン補充療法よりもリスクが低い。腟の痛みを軽減するだけでなく、感染症の予防にも「驚くほど効果的」であることから、フォビオン医師も勧めているそう。
※この記事は、アメリカ版『Prevention』から翻訳されました。
Text: Sarah Klein Translation: Ai Igamoto
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