女性がかかるがんの中で最も患者が多いのが乳がんです。1年間に新たに9万人超が乳がんと診断されています。乳がんの発症リスクを下げるには、どうしたらよいか。東京大の研究チームが、45歳未満の女性で肥満傾向の人は、数年以内に、乳がんになるリスクが低いとする研究成果をまとめました。ただ、肥満は閉経後、乳がんを発症させるリスクとなるほか、乳がんと診断されたときに肥満である人は、再発や死亡のリスクが高いと言われています。乳がんになるリスクを減らすには、どのようなことが必要なのでしょうか。
乳がんは、乳腺の組織にできるがんで、多くは母乳の通り道の「乳管」にできます。発症には、女性ホルモンの「エストロゲン」が深く関わっていると考えられています。このほか、出産や授乳をした経験がない、閉経したときに肥満である、喫煙や飲酒の習慣があるといったことも発症の要因になると言われています。ただ、いずれもはっきりしたことは分かっていません。
欧米では、肥満である人の方が、閉経前に乳がんになるリスクが低いとされています。研究チームは、東アジアの人たちにも同じことが言えるのか、日本の健診などのデータを使って調べることにしました。
研究は、2005年1月から20年4月までに、健診で体格指数のBMI(体重〈キログラム〉を身長〈メートル〉の2乗で割った数値)を測定した45歳未満の女性78万5703人を対象に実施。約3年の間に、5597人が乳がんを発症しました。喫煙や飲酒など、BMI以外でがん発症と関わるような要因を統計上取り除いて解析したところ、BMIが標準とされる「22」より数値が高くなるほど乳がんの発症リスクは下がり、統計学的に意味のある差(有意差)が出ました。
一方、数値が低い場合、発症リスクが上がるかどうかについては、明確には言えませんでした。今回の研究では、閉経前の女性の場合、乳がんと体格の関係は、欧米の人たちと同じ傾向が示されました。
今回の結果は、どのように受け止めたらよいのでしょうか。
研究に関わった東京大乳腺・内分泌外科医師の小西孝明さんは「やせていれば病気になるリスクが低いと思われがちですが、研究結果を見る限りでは、乳がんの場合、そうとは言い切れないかもしれません」と指摘します。
では、たくさん食べて、BMIの数値を高めていく必要はあるのでしょうか。小西さんは、「閉経前にやせていたとしても、体重を増やそうとする必要は全くありません」と強調します。
その理由として、(1)BMIが低い場合の発症リスクについては、明確には分からなかった(2)肥満は閉経後、乳がんの確実なリスクとなり、乳がんの再発や死亡のリスクも高まると言われている――ことを挙げています。
乳がん対策で大切なのは、乳がん検診を受けることと言います。国の指針では、40歳以上の人は2年に1度、マンモグラフィー(乳房エックス線撮影)による検査を受けることになっています。定期的に検診を受けることにより、がんを早期に見つけられる可能性が高くなります。
食生活は、乳がんの発症と関係があるのでしょうか。
がん研有明病院乳腺内科部長の高野利実さんは「閉経前の乳がんと体重の関係については、今回とは反対の結果が出た研究もあります。食事が、がん発症に及ぼす影響は、あったとしてもわずかで、目の前にある食べ物を見ておいしそうと感じたら、それをがんと結びつけたりせず、純粋に食事を楽しめばよいと思います」と説明します。
そもそも、がんは複数の要因が重なって発症します。一般的には加齢とともに発症しやすくなり、がんの種類によっては遺伝的に発症しやすいということもあります。
乳がんと診断された女性にとって、肥満は再発や死亡のリスクを高めると言われています。ただ、どのような運動を、どの程度すればよいか、分からないという人も多いのではないでしょうか。
乳腺専門クリニック「マンマリアツキジ」(東京都中央区)では、乳がん患者に対して運動指導を行っています。担当する健康運動指導士の奥松功基さんは「胸やおなか、太ももといった大きな筋肉を鍛えると、効率よく筋肉を増やすことができ、基礎代謝も上がります」と説明します。腹筋やスクワット、腕立て伏せを1セット10回とし、1週間でそれぞれ5セット程度実施すれば、筋力アップの効果が期待できるといいます。
ただ、日常生活を送りながら、筋トレを続けることは容易ではありません。奥松さんは「例えば、腕立て伏せは、キッチンのカウンターにつかまって行う。スクワットの代わりとして、いすを用意し、腰掛ける手前の、おしりを少し浮かせた姿勢で何秒か止まってみるといったことをするだけでもかまいません」とアドバイスします。
適度に体を動かせば、気分がすっきりし、ストレス解消にもつながります。奥松さんは、「『1週間に5セット』が難しければ、1セットでも大丈夫。自分ができる範囲で続けることが大切です。決して無理をすることなく、心地よいと感じる程度に体を動かしましょう」と話しています。(利根川昌紀)
引用:yomi Dr.
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