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トランスジェンダーへの差別投稿、根拠がないのに広まる理由

Mar 24, 2022

出生時に割り当てられた性別と、自認する性が異なるトランスジェンダーを巡り、インターネット上で「性犯罪が増える」といった根拠のない差別投稿が相次いでいる。なぜヘイトスピーチをするのか。さまざまな背景が考えられるが、千葉県の由佳さん(36)=仮名=は新型コロナウイルス下の外出自粛でネットを見る時間が増え、差別に加担してしまったという。取材に「恐怖心から注意喚起をするつもりだった。今は後悔している」と話した。誤った情報やデマが広まりやすい現状に対し、正確な知識を発信する情報サイトも立ち上がった。(共同通信=石嶋大裕)

コロナで一変、社会問題追ううちに…

 由佳さんにとって、ネットは元々楽しい空間だった。好きな漫画や音楽ライブに関する情報を仲間と共有するためにツイッターを使っていた。コロナ禍でライブは相次いで中止になり、外出も減ると、ネットを見る時間が一気に増えた。目についたのは差別や女性の権利といった社会問題の投稿。あるとき、飛び込んできたのが「トランスジェンダーは性別適合手術を受けても女性への性犯罪欲求がある」というデマを含むツイートだった。

 だが、それがうそだとは思わなかった。感じたのは恐怖心。性暴力被害の経験があったからだ。「注意喚起しなければ」。その投稿を自身のアカウントでリツイート(転載)。その後も「トランスジェンダー女性の選手がいると(スポーツの)男女別の意味がなくなるのでは」といった、今思えば当事者が傷つくような言葉を何度か投稿した。

 

「もういやだ」。今は“味方”に

 2021年3月。韓国軍の兵士が性別適合手術を受けたことをきっかけに除隊となり、自殺したとみられることを伝えたニュースに触れた。「差別は人を殺すんだ」。そのとき、自分のしてきたことが加害行為だったことにふと気づいた。「これ以上、亡くなってほしくない。もういやだ」

 転載や投稿のほとんどを削除した。少しでも埋め合わせをしたいと、今は性的少数者の「アライ(味方)」として、正しい知識を積極的に発信するようになり、デマは正している。由佳さんは「私と同じように差別に加担していく人がいるかもしれない。流れてくる情報をうのみにせず、引き返せる人は引き返してほしい」と話した。

 

正しい知識で差別防げ

由佳さんのように、デマやヘイトに触れて差別意識を持つ人が増えることを防ごうと、ファクトチェック(事実確認)の結果や正しい知識を発信する情報サイトが昨年11月に立ち上がった。サイト名は「trans101.jp はじめてのトランスジェンダー」。性的少数者(LGBTQなど)の若者を支援する団体「にじーず」の遠藤まめた代表(35)がつくった。101は「基礎講座」を意味し、知識がない人にも分かりやすいようにとの思いが込められている。

サイトでは「トランスジェンダーはどれくらいの割合で存在しますか」との問いに0・5~0・7%との調査結果を紹介。「何歳ごろトランスジェンダーと気づくか」との疑問には、幼少期だけでなく思春期以降に性別違和を自覚する場合もあると回答した。Xジェンダーを「男女いずれの一方に限定されない性自認を持つ人」と説明するなど、基本用語集も用意した。

 ファクトチェックのコーナーでは、海外の有名作家の発信から広まった「性別変更を後悔する人が多い」という不正確な情報を、公的機関の報告書を用いて否定している。ほかにも「トランスジェンダー女性と主張すれば、痴漢目的で女性用トイレに入っても逮捕されない」という情報が誤っていることを、「性別にかかわりなく(罪に問われる痴漢行為は)成立する」と弁護士が打ち消している。

「ネット上には恐怖や不安をあおる誤った情報があふれているが、正しい知識を伝えるサイトは少なかった」と遠藤さん。「当事者が職場や医療で直面する問題も取り上げていきたい」と話している。 アドレスはhttps://trans101.jp/

出典:47NEWS

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