バドミントンの潮田玲子さんら元オリンピック選手3人が今年3月、女性アスリート特有の体の変化や生理などについて指導者らに理解を深めてもらおうと沖縄県内で講演しました。女性が安心して競技を続けるために求められる意識の変化とはー
【写真を見る】「パフォーマンスのため 月経周期を無視していた」潮田玲子さんら元トップアスリート 女性アスリートを守り育てるため体の変化への理解を「やる気ないなら帰れって言わないで!」
バドミントン元日本代表・潮田玲子さん
「ものすごく大事な世界選手権、オリンピックに向けて私たちは、体のピークを合わせる。コンディションやパフォーマンスのピークを合わせる努力はものすごくやってきたんですけど、本当に月経周期というものを無視してしまっていたんです」 沖縄・うるま市で行われた講演会に登壇した元オリンピック選手の3人。バドミントンの潮田玲子さん、飛び込みの中川真依さん、バレーボールの狩野舞子さんは女性特有の体の変化や生理などの課題に向き合う団体 「Woman”s ways(潮田玲子代表)」を創設し、発信を続けています。きっかけは選手時代の“苦い経験”でした。
潮田玲子さん
「本当に我慢一択だったんですよ、つらいということを言えなかったですし、不調やつらさを言うと弱音を吐いていると受け止められる気がしていたというのもあったりとか。なかなか女性特有の月経とコンディションにしっかり向き合って指導してますって団体だったり指導者って少なかったりするんですよね」 講演会を主催したうるま市教育委員会にもこんな声が寄せられていました。 うるま市教育委員会 嘉手苅弘美教育長 「子どもたちは中学生になると思春期になって生理が始まったりする。体の変化があったときに、どう向き合えばいいのか。指導している方たちが悩んでいるという話を聞いたんです」
生理周期と競技パフォーマンスには関係があると認識している人は多くても、その管理を積極的に行っている人は多くありません。3人は自身を経験を交えその必要性を解説しました。 バレーボール元日本代表 狩野舞子さん 「やっぱり生理前って、気持ちも落ち込むし、やる気もでなかったりとか。結構食欲が増進して食べちゃうというのがあって、その体重管理は考えさせられることが多かったです」 生理中に起こる「生理痛」とともに、心身ともに女性を悩ませるのが「生理前」の心身の不調です。生理が始まる3日から10日前に起こる心身の不調は「PMS:月経前症候群」と呼ばれます。胸が張る、体重が増える、手足がむくむなどの体の不調のほかに、イライラしたり、落ち込みやすくなります。
潮田玲子さん
「アスリートにとってこれってめちゃくちゃ厄介なんですよ。練習したい気持ちはあるけど、やる気がでない、そこで「やる気ないなら帰れ!」って言わないで!!みたいなことがめちゃくちゃ大事なんですよ」
飛び込み元日本代表 中川真依さん
「PMS(月経前症候群)の時期と生理中は、私の中では絶対試合にかぶってほしくない時期っていうのはすごくありましたね」 中川真依さん元飛び込みの日本代表で、2度のオリンピック出場を誇る中川真依さんは、自身の経験をこう振り返りました。 飛び込み元日本代表 中川真依さん 「私たちは水着1枚なので、ちょっと太ったとかお腹が出ちゃうとか、それくらいでもコーチに暴言を吐かれていた時代」
狩野舞子さん
「当時はありましたね」
飛び込み元日本代表 中川真依さん
「ただ耐えるしかないと思って、毎回なるべく食事も気を付けようと思うけど、気を付けることがストレスになって、悪循環だったとすごく感じます」 着水時に水しぶきを上げないため、“体のライン”も重要となる飛び込み競技。生理周期によって変化する、心身のコンディション調整に苦しんだ経験からこう訴えました。
飛び込み元日本代表 中川真依さん
「生理?って聞かれるのはちょっと抵抗があるんですけど、指導者がわかった上で、「あ、そうだな」って考えてくれて、それが優しさにつながってくれたら、選手はすごく楽な気持ちになる」 講演司会・RBC下地麗子キャスター 「(会場の方で)自分が教えている女子選手が、あの時PMS(月経前症候群)だったのかもと頭に浮かんでいる方って・・・?(多く人が挙手)おおーー、すごい…」
潮田玲子さん
「やっぱりそれを知るというのはすごく大事で、あと選手に知ってほしいことは、これは自分が決して悪いことではない」 生理周期は、排卵を境に卵胞期と黄体期に分かれ特に黄体期に増える女性ホルモン「プロゲステロン」が、体調不良の原因となります。アスリートの多くもプロゲステロンが増える生理前に不調を感じ生理が終わるとともにコンディションが良くなる傾向にあります。 ただ、その体の変化には個人差があるため、自身の生理周期とコンディションの関係を把握することが重要です。
潮田玲子さん
「生理って個人差もありますし、あとは”個の差”、私の中での差もあるんですよ。今月はすごく不調、だけど先月は生理でも何の影響もなかったというのは、今でもあるんですね。言いやすい環境を作って選手も自分のことだからしっかりと伝える、遠回しに言わずにしっかりと伝えてコミュニケーションを取っていくのが大事なのかなと思います」 参加した中学校教諭(女性) 「みんな気にしているんですけど、みんな気にしてみんなどうにかしたいのにどうしていいか分からない。特に男性は。オープンに、フランクにできることが一番いいんですけどね」 女性特有の体の変化は、特に男性がすべてを理解することは難しい。それでも社会の変化を感じるという潮田さんは、今後の展望をこう語りました。
潮田玲子さん
「この団体(Woman”s ways)を立ち上げて、生理の特集など、メディアを通して話す機会がものすごく増えている。「女性の体を理解しよう」みたいな流れが結構高まっていると思うんです。性教育がもっとオープンになって、お互い男女の体を理解すると、考え方もきっと変わってくるので、そうやって今私たちが伝えていくことがスタンダードになったら、この活動が終わってもいいのかなと思っていますけどね、細々とかんばります(笑顔)」
********************* 取材後記(RBCスポーツキャスター 下地麗子) 講演会では、生理痛をおさえたり生理周期を調整できたりする低用量ピルの紹介も行われました。※ピルの使用を希望する際は、婦人科を受診し医師に相談してください。 生理周期が自分の体調やパフォーマンスにどんな影響を与えているか、「自分を知ること」は、競技を安心して続けるためにも大切です。 自分の体の変化を、生理周期を管理するアプリなども活用して把握することができれば、強度の高い練習をいつ組み込むか…など、練習スケジュールの作成にも役立ちます。それでも、指導者に自分が生理だと口頭で伝えるのは、ハードルが高いもの。 講演会では、日ごろ付けている練習ノートなどを活用し、自身の体のコンディションを5段階や10段階で表記していく方法が提案されました。口では言いにくいことも、紙に書くことで、指導者に伝えやすくなるかもしれません。 今回は10代の選手や指導者を対象にした講演会でしたが、「女性の体を理解する」ことは、学校を卒業してからも求められる意識だと感じます。例えば企業では、どんな環境が整えば女性が「生理休暇」をより取得しやすくなるか、模索が続いています。10代の選手たちが部活動の現場で、生理についてよりオープンに話せるようになれば、彼女たちが社会人になったとき、「生理休暇」の議論はより話しやすいものになるかもしれません。その意味でも、潮田さん・中川さん・狩野さん が発信するメッセージはより良い社会づくりにつながっていると思いました。
引用:琉球放送
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