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子どもから大人まで夢中になるオンラインゲーム。依存性や心身に与える影響などネガティブな側面が取り上げられがちだが、他者と交流するきっかけにもなる。信州大病院（松本市）では、自閉スペクトラム症など発達障害の子どもの集団作業療法として、画面上の仮想世界で建築や街づくりを楽しむ「マインクラフト」（マイクラ）を使った臨床研究を始めた。被験者となる中高生約20人にプログラムを提供。効果を検証して学会や論文で発表する。

分かりやすい枠組み作り 自信に繋げる

　「みんなで協力して街をつくる。基本的には何をつくってもOK」「人のつくった物は壊さない。手を挙げて発言し、他の人の話を聞く」。4月中旬、同病院内の1室で、子どものこころ診療部の精神科医、白石健さん（36）が10代の男性3人に呼びかけた。スウェーデン発のゲームで、日本でも人気のマイクラ。3人とも何年も親しんでいる。 　この研究のプログラムは中高生が対象。数人でつくるグループごとに、週1回、計4回行う。この日は被験者3人の他に作業療法士、他の医師もテーブルを囲み、1時間ほど各自がタブレットを操作しながらホールや研究所などを建てた。途中で談笑したり、他のメンバーに「手伝って」と協力を求めたりする場面もあった。 　自閉スペクトラム症や注意欠如・多動症（ADHD）の子どもは、学校などの集団生活になじめず、社会参加が難しい場合がある。こうして各自が得意で、共通して興味を向けられるゲームを介して交流する機会なら最初から参加しやすく、他者と関わりやすい。白石医師によると、オンラインゲームを治療に生かした試みは珍しいといい、活用を決めた理由について「街をつくるという分かりやすい枠組みで、意思疎通の練習ができ、モチベーション、自信になる」と説明。「余暇活動を支援し、社会参加や自立的な行動につなげたい」とする。 　発達障害があり、同診療部に小学校高学年から通っている松本市内の男子高校生（15）は、「友達や同じ年ではない人たちと、自分の思う通りにつくり、発表し合う。そういう交流ができるのはうれしい」。同市内の男子高校生（18）も、普段は1人でゲームをし、複数人で同時に遊ぶことはなかったと言い、建築というテーマで関わるのは「楽しい」と話した。 　プログラムを通して被験者の脈拍や睡眠状況など健康状態の変化を調べる。これまで中信や東信から6人が参加しており、年内で20人の参加を目標に臨床研究を続ける。効果を検証しながら、将来は大人も含めたケアに生かしたい考えだ。 　問い合わせや臨床研究への参加希望は、信州大医学部子どものこころの発達医学教室のホームページか、電話（電話0263・37・3060）で受け付けている。