家族の世話や家事の過大な責任を負う子ども「ヤングケアラー」が抱える課題が徐々に明らかになり、国も支援体制の構築など、4月から対応を本格化させる方針だ。ただ、円滑に支援を進めるためには、当事者の意向を支援者が理解し共有することが必要だ。最適な支援の形を模索する有志の動きが広がっている。(阿部明霞)
「大切なのは、支援者がヤングケアラーの置かれている現実を知り、SOSを受け止めて支援につなげることだ」。栃木県の医療機関で働く作業療法士の仲田海人さん(28)は、そう訴える。
統合失調症の姉(31)の世話に小学生の時から関わってきた。姉は包丁を持って暴れたり、夜中に話し相手を求めてきたりして、家庭では落ち着いて過ごせなかった。
ヤングケアラーの抱える問題の多くは、家庭で起こるため、外からは見えづらい。複雑な事情を周囲が理解できなかったり、適切な情報をもった相談相手を見つけられなかったりして、支援も届きにくい。仲田さんも、「地域内に居住支援系の福祉サービスが充実していて、それを支援者が紹介してくれていれば、状況は変わっていたのではないか」との思いがあるという。
そこで仲田さんは、地元自治体や福祉の専門職らと連携し「那須塩原市ヤングケアラー協議会」を設立し、支援のあり方を話し合う場を作った。当事者発信の機会や居場所作りも進めていくという。
さらに障害のある家族を世話する18歳以上のケアラー当事者による少人数制の集いも運営している。「まずは子どもが何げなく立ち寄れる場と、そこで見守る存在がいることが重要だ」と話す。
自分たちのケアラーとしての経験がまとまった本を手にする女性たち(京都市の立命館大学で)
京都市ユースサービス協会などは今年、「子ども・若者ケアラーの声からはじまる ヤングケアラー支援の課題」と題した本を出版した。約5年間にわたり、ケアラーたちから聞いた生の事例や支援の議論をまとめたものだ。
支援の対象から外れやすい18歳以上のケアラーは、就職や進学などの重要な時期に直面し、行き詰まる事例が少なくない。また、ケアから解放された後の支援も重要だ。人生を立て直すための就労や教育などの切れ目ない支援を必要としている実態を紹介したかったという。当事者として執筆した大学院生の河西優さん(24)は、「個別のニーズの把握が不十分なまま『ヤングケアラー』という言葉が広がっている」と述べ、ブームにとどまるのではと感じているという。
河西さんは、他の当事者らと昨年からケアラーの生の声を支援者らに届ける活動を始めた。「子どもだから」「保護されるべき存在だから」という紋切り型のイメージではなく、当事者がどうしたいかを支援者に伝える活動だ。
ただ「ケアの渦中にあって声を上げられない人がいることを忘れてはならない」と河西さんは話す。声なき声をどう拾い上げ、支援につなげていくかが今後の課題となっている。
国は支援体制の構築のために自治体と関係機関、民間団体などをつなぐ「ヤングケアラー・コーディネーター」の配置や実態調査、支援に関わる専門職らに研修を行う際の助成をするなど、4月以降、支援を本格化させる。また、来年度からの3年間を「集中取組期間」として、ヤングケアラーの社会的認知度の向上を目指して啓発活動も行う。
自治体でも、2020年に埼玉県が「ケアラーが孤立することのないよう社会全体で支える」ことなどを目指し、全国初の「ケアラー支援条例」を施行した。神戸市では、20代を含めたケアラーを支援する全国初の相談窓口を設置するなど、支援にも進展がみられる。
一方で、実態把握の調査や支援者育成は現状では不十分だとの指摘もある。立命館大の斎藤真緒教授(家族社会学)は、「子どもにケアをさせないのではなく、負担があっても乗り越えられる支援が重要だ。そのために家族の状況を整理して、支援や福祉サービスにつなげていく包括的な仕組みが必要だ」と説明する。
出典:yomiDr.
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