認知症の人と「ともに生きる拠点づくり」を進める100BLGは、同じ思いを持つ全国各地の事業所とともに「学び合いのプラットフォーム」となるネットワークをつくっています。各事業所は、それぞれの土地柄や文化に合わせたかたちで運営されています。今回は、静岡県焼津市にあるBLGやいづ(デイサービスごんべえ)からの報告です。 【本編】画像を見る 畑で夏野菜の植えつけ「無人販売で売りたいね」と今からワクワク
2023年4月より100BLGの仲間に加わりました、BLGやいづ管理者の山田です。 静岡県中部の焼津市にある定員30名、通常規模型のデイサービスです。法人理念の「あきらめない」の精神で10年以上、デイサービスを運営してきました。初めての投稿となりますので、まずは100BLGへの加入までの思いなどを語らせていただけたらと思います。 2010年7月に焼津市で「デイサービスごんべえ」として定員20名、民家型のデイサービスという形でオープンしました。定員20名で和気あいあいと自由な活動やサービスを提供してきて2014年には引っ越し・定員拡張し、現在の30名定員となりました。 引っ越しをしてからさらなるサービスの充実を、と人員の補強をおこない、クラブ活動、理学療法士監修の体操の実践などをおこなってきました。しかし、定員の増加に伴い民家型のときのような自由な活動などは難しくなり、少し寂しさも感じていました。 そのような中でも「ご利用者様が満足できるサービスの提供を!」と職員一丸となり頑張っておりましたが、新規でご利用を開始したご利用者様からは「一日座っているだけで何もしなかった」との声が聞かれることが増えてきました。こんなに色んなことをしているのに、楽しそうにレクリエーションに参加されていたのに、なんで一日の感想が「座っているだけ」になってしまうんだ。これ以上なにができるんだ。と、悔しい思いとともに、自分たちの力のなさに思い悩んでいました。 そんな折、100BLGの活動を知り、話を伺う機会を持たせてもらうこととなりました。ご利用者が外で働き報酬を得ている、毎日外食やお弁当など自分で選んでいる、そして何より通われている方々がすごく笑顔で会話しており、「楽しい」「いいところ」だとおっしゃっていることに「自分のデイサービスとは違う、こんなデイサービスこそご利用者様の求めている場所ではないか」と思いました。「自分たちもこのような活動をしていけば本当の満足できるデイサービスになるのではないか」、と100BLGへの加入を決意しました。 100BLGではご利用者様のことを「メンバー」と呼んでいます。最初はどこか不思議な感じがしていましたが、実際にBLGのデイサービスでの体験研修を経るとその呼び方がしっくりくるようになりました。同じ場所で同じような状況の方たちが同じ時間を共有し、サービスを提供する側(事業所、職員)と利用する側(利用者)ではなく、同じ活動をおこなう「メンバー」である、ということ。 今までの自分たちのサービスでは、ご利用者様は大事なお客様であり、体操やレクリエーション、行事、入浴サービスなどを提供してそこで満足いただくことが重要だと考えていました。洗濯や掃除、洗い物は職員がやることであり、お客様にやらせるわけにはいかない、と。今までも職員に気を使って「手伝うよ」とおっしゃってくれるご利用者様もいましたが、「大丈夫ですよ」と断っていました。しかし、それこそがご利用者様のできることを奪っていたのだと気づかされました。 できていたことができなくなった、家でもやらせてもらえなくなった、役割がなくなり人生に希望を持てなくなった……。そんな風に思われる方たちに、皆と同じ体操やレクリエーションを提供しても満足はできないですよね。今までやってきたこと、固定概念によって、そこまでご利用者様の気持ちを考えることができていませんでした。 100BLGの研修を受け、以前「手伝うよ」と声をかけてくれた「メンバーさん」にコップの洗い物を頼みました。「お安い御用よ」とテキパキと済ましてくれました。昼食時のお茶入れも頼んでみました。「いいよ」と快諾。配膳を頼んでみました、下膳を、食器の整理を、洗濯干しを、お風呂掃除を……。「じっとしているのは苦痛だよ、喜んでもらえるならありがたいよ」と笑顔でおっしゃってくれました。そんなメンバーさんを見て、他のメンバーさんも「私も手伝うよ」という方が続き、今では5~6人くらいの方でおこなっています。 その他にもほとんど手付かずだった敷地内の畑を、元農家の方や土いじりが好きな方で耕し、夏野菜を植えました。たくさん実がなったら「無人販売で売りたいね」とワクワクしています。 少しずつですが、メンバーさんは以前より生き生きしてきたように感じます。同じ場所で同じ時間を共有し、お互いが認め合うメンバーでの活動を通して、本当の満足ができるデイサービスを目指していきます。
引用:なかまぁる
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